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冬威のバカっ! そこじゃないでしょ? ここでしょここっ!

いつも読んで下さりありがとうございます^_^

どんな方が読んで下さっているのかドキドキしています。感想いただけたら最高に嬉しいです^_^


葵衣の死因について冬威が探る。

本質的な解決を取らなければ時間を司る意思に元の潮流に修正収束されてしまう。

冬威は葵衣を救えるのか、そして由起を、自らの未来を!

「過去を変えたとしてもその根源的な要素に変化がなければ最終的に変更前の状況に収束して来てしまう気がするんだ…。だから葵衣ちゃんを助け出すのは事前に事態を回避すると言う形ではなくて事後に救い出す対応にする」

冬威と由起はソファーに横並びになって座っている。


葵衣を助け出す算段を打ち合わせているのだ。


「ところで冬威? 葵衣ちゃんはどんな風に亡くなったの? ひどい亡くなり方だったの?」

「噂では服薬自殺ってことになっていたよ。睡眠薬を多量に飲んでとか。どうやら失恋の後不眠状態になって睡眠導入剤が処方されていたらしいよ」

「そうなんだ…由起、葵衣ちゃんがそんなに悩んでるなんてちっとも知らなかった…」

悲しげな顔をする由起。


「俺も知らなかった…。葵衣ちゃんが亡くなった日、校門の大きな木の下で葵衣ちゃんと話をしたんだ。俺はその時葵衣ちゃんが失恋していたなんて全然知らなかったし葵衣ちゃん、少し元気がないかな? くらいにしか感じてなかった。もしあの時もう少しちゃんと話が出来たらあんな結果にはならなかったんじゃないかって随分後悔した…」

冬威が力なく言う。


「冬威のせいじゃないよ。それに女の子たちもそこまで葵衣ちゃんが落ち込んでるなんて思ってなかったし…」

「いや、そうなんだよ。きっと葵衣ちゃんは死ぬほど落ち込んだりはしていなかったんだと思う。不眠で心療内科にかかってたって言う事実はあったとしても。だから俺はこう思っているんだ、葵衣ちゃんは確かに失恋をして落ち込み眠れなくて医者にかかって薬は処方されていた。だけど亡くなったのは自殺じゃなくて不慮の事故なんだって…」


「でもお薬飲んで亡くなったんでしょ?」

「そうなんだ…でも状況から判断して周囲は自殺って思い込んでいただけだと思うんだよね。恐らく親族は自殺だなんて公言していないだろうし、不審死となれば検死が入るだろうから検死の結果としては自死ではなく他の死因が絶対出でていると思うんだ。それを受けて親族は不慮の事故とわかっていた。だけど第三者たちはそれを親族から直接聞いたとしても『故人、ましてや娘の尊厳を守るために自死とは言わないんだろう。だけど状況から見てどうしたって自殺だよ』ってね」


「う~ん…お父さんお母さんの気持はわかる気がするけど…。冬威はどうして確信的に言えるの?」

「検死の結果は病死だったと思う、もしくは事故死にもあたるのかな?」

「もう! だ・か・ら・どうして?」

由起がせっついたように言う。


「医者が不眠で処方した入眠剤、例えばそれがマイスリーって言う睡眠導入剤だとして致死量は3000錠~4000錠だよ? そんなにたくさん飲めるわけないし例えばチャレンジしたとしても途中で吐いちゃうって」

「でも実際亡くなっちゃんたんでしょ? 病死か事故死か自死かは判然としないにしても」

判然としない顔をする由起。


「由起? 葵衣ちゃんとゼミの飲み会とかで一緒になったことある?」

「そりゃあるよ、誰かさんはつき合い悪くてちっとも顔出さないけどね!」


「あはは、だね。由起に聞きたいのはさ葵衣ちゃんって結構お酒飲む方?」

「う~ん葵衣は結構飲むよ! 強いし! それに家で独りでも飲むって言ってた気がする。お酒が好きだって言ってた。冬威? 由起はね、ちょっとしか飲めないよ? そんなにお酒好きでもないし…。なんかこうお酒の雰囲気を楽しむって言うか~。すぐ顔が赤くなっちゃうし、ちょっとしか飲めないし~」

なぜかあざとく可愛らしい顔をして言い訳がましく言う由起。


「そうなんだ。でもお酒の雰囲気って良いよね、なんか開放的になってさ! 俺も好きだよそう言うの。でも由起? 油断しちゃダメだよ? 俺も飲むのは嫌いじゃないけどさ、酒を飲まなければしない失敗って結構あるからね? それに開放的になった分…よからぬことも起こるからね~心配だな~ゼミの飲み会やら合コンやらで盛り上がる由起が…若い子は無理し張りますからな~」

冬威が半分本気、半分は茶化すように由起に言う。


「なんで急に関西のお方になっちゃってるの? わかってます~由起はそんなに羽目を外しません~。ってそんなに心配ならこれから飲み会の時には由起のそばにいてしっかり守ってよね?」

今度はふてぶてしい顔を作る由起。

「あは、じゃそうするかな」


「その方が良いよ~由起が変な男に誘惑されないようにしっかりガードしてね?」

「ふ~ん由起ってそう言うアバンチュール願望があるんだ~。」

「なにそれオヤジ臭い言い方! そんなのないけど冬威がボーっとしてたら由起が誘惑されちゃうかもってこと!」 


「どうせオヤジですよ…」

いじけた様に言う冬威。

「そこ? ってどんだけ未来から来てるっての? そこじゃなくて由起が誘惑されちゃうかもってとこ! 冬威はいいの? 由起が他の男に誘惑されても!」

こだわる由起。


「そらあきまへんな~」

「だ・か・ら・どうして関西弁なの? そんな風にふざけてて由起が誰かに奪われて泣いたって遅いんだからね!」

「おや? 由起はそう言う願望があるのか? 大人だね…」

意味深な顔で含み笑いをする冬威。


「ふ~ん冬威? そうやって由起のことを子供扱いしてると痛い目に合うんだからね!」

そう言うと油断している冬威のわき腹を掴んでひねり上げる由起。


「イテテテテッ、由起暴力反対!」

「じゃあ由起を子供扱いしないでちゃんとナイトの様に由起を護って!」

「わかってるわかってるって! その為に時空を超えて姫に逢いに来たんだろ?」

「姫?」

由起のつねり攻撃の手が緩む。


「そっ由起姫をお護りするために時空を超えて参上したナイト冬威です姫様…」

そう言うと恭しく由起の手を取りその甲にそっと口づける。

「あっ」

由起が小さく呟く。


「姫様? お許しいただけますか?」

「許す…苦しゅうないもっと近こう寄れ」

頬を赤らめながらも姫らしく気高く言う。


「ってそれじゃあ、お姫様じゃなくてお殿様だって」

「姫様でも殿様でもなんでも良いから…もっとち近こう…」

そう言いながら冬威の両頬に軽く手をあて目を閉じながら顎を上げる。

美しいその表情に魅入り一瞬時が止まったかの様な錯覚を起こす冬威。


冬威はそんな由起に近づき今度はその額に軽く口づける。

「もうっ冬威っ! なんでおでこなの! 冬威のバカっ! そこじゃないでしょ? ここでしょここっ!」

冬威の両頬を引っ張りながら艶やかな唇を突きだして怒る由起。

拗ねた様に唇を突きだす由起のなんと愛らしいことか。

成熟したとまでは言わないまでも充分に魅力的な女性の子供っぽい仕草に大概の男はノックアウトされる。

「そこはさ…今の俺のために取っておくよ」

かろうじで理性を保つ冬威だった。


「どっちだって由起にとってはおんなじ冬威なのに…」

拗ねた様に言い機嫌を直さない由起。

「あはは、そうだねどっちにしても同じ俺だね! 由起、忘れないでちゃんと覚えておいて! どっちの俺も由起のことが大切で大好きで一番愛している冬威だってね」

「なにそれ、なんか冬威に誤魔化されてるみたい…」

そう言いながらも冬威の言葉に満足気な顔をする由起。


「話がだいぶ反れちゃったね。そっか葵衣ちゃんは結構日頃からお酒飲むんだね。だとすれば俺の考えはだいたい正解かな」

冬威もまた満足気な顔をする。


「どういう事冬威?」

「それはね…」

冬威と由起の距離がどんどん縮まる。

向き合って膝を突き合わせていたふたりがどんどんとその重なり合せを増していく。


葵衣を死の淵から救い出し未来への潮流に戻そうと画策する冬威と由起。

ふたりをやわらかで優しい光がそっと包んでいた。





    



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