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冬威? 逆になんで今ここで今更そんなこと言うわけ?

由起の部屋に一緒に行く冬威だが…

由起の思惑通りにはなかなか行かず…

由起に手を引かれ学生街を歩く冬威。

中高大一貫の大学とはいえ中高は埼玉県、大学は千葉にあるため学校の規模としては比較的こじんまりしている。


基本文系の学校でありまた学部も特殊なため男女比が3:7とも2:8とも言われている。

つまり女子学生の方が圧倒的に多いのである。

北海道から沖縄まで全国から生徒は集まって来ており独り暮らしをする学生も多かったが、関東圏出身の学生は自宅から通学する者も多かった。


毎日片道2時間半から3時間かけて茨城県や神奈川県から通学する者も少なくない。

最寄りの駅であるJR京葉線蘇我駅からは徒歩20分とそれほど近くはなかったが内房線、外房線が乗り入れ千葉駅からも二駅しか離れていないこともあり東京からの通学もそれほど苦にならない位置にあった。

そんなこともあり関東近県、特に内部生は自宅から通学する者が多かった。


埼玉県出身の由起も少し無理をすれば通学することも可能ではあるが敢えて独り暮らしを選択した。同じゼミの埼玉出身の女子学生もやはり独り暮らしであると言う。


冬威は自宅から通学している。

蘇我駅から電車で1時間20分くらい。

そこから歩いて20分。

乗換えや接続の悪さにイラつくこともあるが、全く通える範囲である。

しかし仮にこれがもう少し遠くであっても冬威は自宅通学を選択したであろう。


独り暮らしの自由よりも、自炊や掃除等々…わずらわしい、面倒くさいことを避けたからである。

だがこれ以外にも冬威が自宅から通うことを選択した要因がありそうではある。


「冬威! 着いた! ここが由起のウチだからね! ちゃんと覚えてよね?」

そう言って由起が指示したのは5階建ての学生マンションであった。

「サンハイツ大巌寺…なんかすごい名前だね…」

「でしょ? なんか…凄そうでしょ。大きく、厳しい、寺っ」


「うん…無茶苦茶厳しそう…」

「って、んなわけないでしょ! 別にそんなに厳しい規則なんてないって」


「ほんとに…? なんか入るのにものすごいチェックとかあるんじゃないの?」

「ないない」

由起が大げさにかぶりを振る。


「由起の部屋は3階、さっ行こう」

「あ、うん…ちょっと待って…」

そう言うと冬威は学生マンションの周辺を歩く。

由起も怪訝な顔で冬威について歩いて行く。


「どうしたの冬威?」

「ん? なんでもない。回りがどんな風なのかなって」

そう言うと上を見上げる冬威。


「由起ちゃんの部屋って3階のどの辺り?」

「向かって左側の一番端。角部屋ってやつ?」


「ふ~ん…角部屋ね…」

「なんなの冬威? さっ中に入ろう」

そう言うと由起は再び冬威の手を取り歩き出す。


「ここにカードキーを入れると自動ドアが開くの。冬威が由起の部屋に来る時はこのインターフォンで呼んでね。そしたら由起が電話に出て電話機の#ボタンを押すと自動ドアが開くからね! 冬威も覚えておいてね」


「俺が覚える必要ないでしょ? 由起ちゃんが居る時しか来ないんだからさ?」

「由起がいない時に冬威が居るってこともあるかもしれないでしょ?」


「それってないだろ?」

「なんでよ?」


「なんでよって…わかんないけど?」

「もうっ! あるかもしれないでしょ! だから覚えておいてね?」

「ってもう忘れた、ははっ」


「じゃ、もう一回教えるからね?」

「え~もういいよ? そんな根気よくやらなくても~」


「と・う・い・がちゃんと覚えてくれればいいんでしょ! もうっ!」

「ハイハイ…もうもうもうもうマザー牧場の牛じゃないんだからさ…」

「なんか言った冬威?」

そう言うと由起はもう一度冬威に手順を教える。


「わかった由起ちゃん俺覚えたから!」

「本当に大丈夫?」


「大丈夫大丈夫!」

「じゃっ入るよ?」


ふたりはマンションに入りエレベーターに乗り込む。

冬威は周囲をうかがい非常階段と自動ドアの位置関係を確認していた。


「ここここ! 3階の301号室が由起の部屋だからね? 冬威?」

「わかったけど…あんま女の子の部屋とかって入っちゃまずいんじゃないの?」


「マジメかっ!」

「マジメだっ!」


「だってさ、由起ちゃんのパパとかきっとヤダと思うぜ? 娘の部屋に男が入ったら」

「そう言うこと言うの止めてくれる…別にやましいところないんだからさ…」

由起がふてくされて言う。


「冬威が変な人じゃないって信じてるから連れて来たんでしょ?」

「ってなんでそんなこと言えるわけ? 由起ちゃん油断したらダメだよ? だいたい男なんて絶対信じちゃダメだから」


「冬威? 逆になんで今ここで今更そんなこと言うわけ? ん~わかった…わかった冬威! ここで騒いだら他の人の迷惑だからさ、ゆっくり冬威の話を聴くから、ひとまず由起の言うこと聞いて? ね? そしたらその後冬威の話しちゃんと聞くから? いい?」

由起が冬威を懐柔する。

「ん~近所迷惑…わかった…」

しぶしぶ返事をする冬威。


「そしたら…このカードキーをここに入れてそれからドアノブをこっちに回すと鍵が解除されるから。鍵をかける時は逆の動作ね? わかった?」

「わかった…って俺が覚えてどうすんの?」


「まぁまぁここで騒いだら近所迷惑だから、冬威の話しはお部屋でゆっくり聞くから! ね?」

「なんか引っ掛かるな…」

そう言うと由起に押し込まれる形で部屋に入る。

由起の部屋のドアがガチャリと閉まり由起と冬威のふたりだけの空間を作りだした。










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