由起、美夏、美優 褒め合いっこ?
海の見える露天風呂で身も心も開放的になった三人の心が更に打ち解けていく。
脱衣所まできゃきゃあと歓声を上げながら向かう美夏、美優、由起の3人。
由起の方が年が上とはいえ年代的にはそう離れてもおらず一旦打ち解けてしまえばもうほとんど年など関係なくなる。
「由起ちゃん…胸デッカ」
美夏がしげしげと由起を見ながら言う。
「ちょっと美夏ちゃん恥ずかしいって!」
衣類を脱ぐ由起が身をよじって美夏の視線から逃れようとするがその先には美優がいる。
「ほんとだ…由起ちゃんおっきい~」
今度は美優の目に晒される。
「ちょっと美優ちゃんまで~」
由起が照れたように視線で咎めるが、当然双子姉妹に対してそんな軟な抵抗など効果はない。
「由起ちゃん…Dカップくらい…?」
「美夏、たぶんEくらいあるんじゃない」
双子姉妹が由起の胸の前に近づき鑑定する。
「ちょっと、二人とも何やってるの~」
美夏と美優の目をふさぐように手のひらを持っていく由起。
が双子姉妹の興味は尽きない。
今度は逆に由起が双子の身体をしげしげと観る。
「美夏ちゃん美優ちゃんすごくスタイル良い…それにそのお腹…」
由起は双子の身体を見ながらため息が出るような表情をする。
双子の白い痩身には余分な贅肉は全くなくすらっと伸びた長い手足にはしっかりと筋肉がついている。
そして由起が驚愕したのはその愛らしい顔に似つかわしくない腹筋であった。
白磁の様な白い腹筋はうっすらと割れ少しのぜい肉も見受けられない。
「美夏ちゃん美優ちゃんってすごくきれいだし…かっこいいね…。なんだか由起恥ずかしくなってきちゃうよ」
そう言いながら由起は自分の腹部辺りをそっと隠す。
「ってそんなことないじゃん! 由起ちゃん十分スリムだし! ねっ美夏?」
「そうだよ由起ちゃん! あたし達の腹筋が異常なの! 冬威に鍛えさせられてさ!」
「それより胸だよ胸っ。由起ちゃんおっきくて良いな…」
美優が指をくわえて言う。
「美夏? 心配ないって奈々だって由起ちゃんくらいあるからあたし達だってそのうちおっきくなるって!」
美夏が美優を笑い飛ばす。
「美夏ちゃん美優ちゃん? 大きさだけじゃないと思うよ? ふたりともすっごいきれいな胸…形もいいしむしろ由起はふたりがうらやましいよ~」
今度は由起が指をくわえて言う。
「でもやっぱ気になるよね美優?」
「うん! 気になるよね美夏?」
双子が顔を合わせて言う。
「ん? なあにふたりとも?」
そんな双子を訝しがる由起。
「由起ちゃん何カップ~?」
双子が声を合わせて言う。
「もうっDだよ! Dカップ!」
「おぉ~D!」
双子が声を合わせて言う。
「あのね美夏ちゃん美優ちゃん? あなた達男の子じゃないんだから!」
「う~ん、D! 冬威の奴めHだな!」
「なんでお兄ちゃんがHなの美夏? お兄ちゃんはHじゃないよ? 美優は昨日もチェックしたけどベッドの下にHな本も無かったし…」
美優が美夏の言葉に反応する。
「美優ちゃんそうだよね! 冬威君はHじゃないよね。でも…聞いて! 冬威君が由起の部屋に来た時由起のベッドの下を見てHな本が無いか探したんだよ? 信じられる~女の子の部屋にそんなのある訳無いって!」
「あはは、冬威らしいや。あいつバカだから~」
無邪気に笑う美夏とは逆に美優が表情を変える。
「お兄ちゃん由起ちゃんの部屋に行ったの?」
嫌な雰囲気にならないようぎりぎりまでセーブして美優が聞く。
由起はそれを敏感に察知し迂闊なことを言った自分を咎める。
「美優ちゃんごめんね、でもレポート見てもらっただけで、ほんとに何もないから…。って由起の押しかけでお弁当だって由起が勝手に作って行ってるだけだし…」
と、今度は由起が切なそうな顔を作る。
「由起ちゃん、違うのごめんね美優そんなつもりで言ったんじゃないから気にしないでね?」
美優が由起に弁解する。
複雑な心境の美優ではあったが由起との関係にもヒビは入れたくないと思い始めていた。
「っていつまでも脱衣所に居ないでお風呂行こっ」
美優と由起の微妙な空気を察した美夏がふたりの背中を押して浴槽へ誘う。
「お風呂であったまりながら女同士裸のつき合いで話せばいいじゃん~美優~。由起ちゃんこっちこっち! 露天に行こう」
美夏が露天風呂に由起を引っ張っていく。
「わぁ~目の前すぐに海! すっごい開放感~」
「でしょでしょ~美夏も美優もお気に入り、ねっ美優!」
「由起ちゃん美優はここから見える夕陽と富士山と夜景が好きだよ、きれいなんだから~」
しばしきゃあきゃあ言いながら行きかう船や対岸の景色を眺める3人。
由起を真ん中にして双子姉妹が二手に分かれて座っている。
「由起ちゃんさっき、由起の押しかけだからっとか言ってたけどあれどういう事?」
美夏が美優の気持を察して由起に聞く。
この辺りの心の移ろいはまるでテレパシーでもあるかの如く双子の間で伝播し、自然にお互いの想いを補足し合う。
「うん…由起が一方的に冬威君…ねぇ? 美夏ちゃんと美優ちゃんの前では普段通りお兄さんのこと呼んでもいい?」
由起が双子姉妹に気遣う。
「もちろんだよ由起ちゃん」
双子が声を合わせて言う。
この辺りの気持に美夏も美優にも嘘はない様だ。
「ありがとう、由起、冬威のことは入学してからずっと気になってて…。だって冬威ってみんなと仲がいいのに変に媚びないって言うかつるまないって言うか、講義はいつも一番前の席で独りで受けるしゼミの女の子や他のゼミの女の子から誘われてもうま~く交わしてたりとか…。ごめんうまく言えないけどとにかく今まで由起の周りにはいない感じの人だったからすごく気になってたの…」
由起がうまく伝えられないもどかしさを視線で二人に訴える。
「冬威は変な奴だからな~」
「お兄ちゃん学校でそんな感じなんだ…」
ここで双子の捉え方に微妙に変化が現れる。
「由起ちゃん学校でのお兄ちゃんの様子が知れて美優うれしい」
今度は掛け値なく素直な気持ちを表現する美優。
「それで? なんで押しかけとか言うの?」
美夏が話を急かす。
これも美優の気持ちを察しての双子ならではの気遣いに感じられる由起だった。
「うん…由起が冬威のそばに居て冬威がどんな人なのかもっと知りたいから…冬威に憑りつくって宣言したって言うか…」
由起がもじもじ言う。
「憑りつくって! 由起ちゃんお化けじゃないんだから~」
多文語にもかかわらず双子はまるでセリフの様に同じことを言う。
「あはは…まさにそんな感じ」
由起が自嘲的に笑いそのあと少しさみしそうな顔をする。
「なんかさ、由起ちゃん美夏達にもっといろいろ気持ちを聞かせてよ?」
「そうだよ由起ちゃん、美優達ともっと話そう!」
双子が由起の背中を押すように言う。
海の見える露天風呂で開放的な気分になる3人。
由起の目には段々と沈んでいく太陽が周囲の空とその向こうに見える富士山を赤らめはじめていのが見えた。
目の前で繰り広げられる自然のパノラマショーにまるで自分自身も自然に溶け込んでいくような錯覚を覚える由起。
「ありがとう美夏ちゃん美優ちゃん…」
素直な気持ちが口をついて出る。
海の見える露天ぶろにつかりながら心を寄せ合い始める3人を夕日が赤く染めだしていた。