美優、美夏、由起 緊急撮影会!
入浴するために訪れたドライブインかなやで写真好きな美優の提案で撮影会? が始まった!
程なく海岸沿いに建つドライブインかなやに到着する冬威達。
平日の午後にもかかわらずかなり車が停まっている。
「わぁ〜潮の香りがする」
車から降りた由起が伸びをしながらそう言う。
冬威と双子姉妹がそんな由起を見て微笑んでいる。
しばらく海を眺める4人。
「埼玉は海がないから、いつも海が見える環境羨ましいな」
「でも台風の時とか強風吹くとすぐ電車止まっちゃうしね、美優」
「そうそう! 風が強かった日の翌日は窓とか塩でべったりだし」
美優がべったりを強調して言う。
「エアコンの室外機とか車の下見とか塩害で錆びちゃうし」
冬威も海辺の街の苦労話をする。
「え〜そうなんだ?やっぱりきれいなだけじゃなくて大変なこともあるんだね〜。住んでる人に聞かなきゃ由起なんか全然知らなかったよ〜。ほんとに巨大タコとイカが決闘すると思ってビックリしちゃったし」
そう言って笑う由起。
「ごめんごめん〜由起ちゃん〜」
美夏が由起の腕に巻きついて謝る。
「冗談よ美夏ちゃん〜。でも由起本気にした」
一瞬真顔で怖かったことを表現した後にすぐに声を出して笑う由起。
そんな由起を見て双子姉妹もまた声を出して笑う。
「由起ちゃん写真撮ろ! お兄ちゃん3人で撮って!」
美優が携帯を冬威に渡す。
「え? 今から撮るの?」
「そうだけど、何か?」
美優が冬威に言い返す。
「だって美優写真撮り出すと長いし、注文うるさいし〜」
「お兄ちゃん? なんかもんくある? こんなに可愛くて美しい女の子を写真に撮れるんだから光栄だと思って! あとでお兄ちゃんにもラインで送ってあげるから!」
冬威が渋々カメラマンの役を引き受ける。
もうそれからは美優の独壇場。
何度も場所や並び順、表情を変えての撮影会。
美少女双子姉妹と由起の取り合わせでの撮影は、かなり目立ち、観光客もアイドルかなんかの撮影会? と言った顔をしながら立ち止まって周囲を見渡してロケバスを探したりするのであった。
「美優? もう良いだろ?」
「う〜ん、もうちょっと撮りたいとこだけど今日はこの辺で勘弁してあげる〜」
美優が悪戯っぽく笑い冬威から携帯を受け取る。
「じゃあ4人で一枚ね」
そう言うと美優がポケットをまさぐる。
「ジャーン! 自撮り棒〜」
「ドラえもんかよ美優は? まだ撮る気?」
冬威が呆れて言うが美優は全く気にしない。
「さぁ並んで並んで〜」
そう言うと冬威と由起を挟む形で双子が並ぷ。
「ラストはお兄ちゃんと由起ちゃんのツーショットね!」
美優がふたりを写す。
「あ〜楽しかった」
由起が満面の笑みを浮かべる。
「由起ちゃんライン交換しよ? 今の写真送るね」
「ありがとう美優ちゃん。冬威君と写真撮ったことなかったから嬉しい。ほんとにありがとう」
「そうなの! 信じられない! 全くお兄ちゃんは気が利かないんだから! ねぇ由起ちゃん」
「でも奈々は男はそのくらいで丁度良いって言ってるよ〜。マサくらいが丁度良いって。あんまり気が利く男は返って気が気じゃないよって」
美夏が奈々の言葉をつたえる。
「なんだか由起それ良くわかる〜。いろんな女の子におんなじ様に調子良くっみたいな!」
「わかる〜浮気性な男とかあり得ないよね〜」
双子が声を合わせる。
3人の女の子が楽しそうに笑い、なんとなくバツ悪そうにその側に立つ冬威。
美優、美夏とライン交換を済ませた由起にたった今撮影した画像が送られる。
「お兄ちゃんにも送ったからね〜」
「冬威〜家宝にしなよ! 美少女3人の貴重なオフショット!」
「な〜にがオフショットだ!」
冬威が呆れる。
そんな姿を見てまた女の子達が笑う。
ひとしきり写真を撮り、満足した一行は店内に入ってエレベーターで2階に上がる。
2階に到着するや否や。
「冬威〜100円100円〜」
美夏が手を出して冬威に言う。
靴をしまうロッカーの代金をせがんでいるのだ。
「あとで100円返金されたらもらっちゃお〜っと」
「ずるい美夏! 美優がもらうの!」
「おいおいちゃんと返せって」
冬威が双子に言うと、
「べ〜っだ冬威のケチ!」
双子が声を合わせて冬威に舌を出す。
そんな姿を見て由起が笑う。
「大人4枚っと。ん? 美夏、美優は子供でもいっか?」
双子を見ながらからかう冬威。
「ふ〜んあたし達をお子ちゃま扱いするんだね冬威? そう言うことなら冬威と一緒に男風呂入るけど? 良い?」
「お兄ちゃ〜ん? あたし達をお子ちゃま扱いしたね? あとで由起ちゃんに聞くが良いわ、あたし達のナイスバディに、つ・い・て!」
美優がことさら艶っぽい顔で冬威に言う。
「冬威お兄さん? 困りますね〜。いくら兄妹とはいえ、今のは、由々しきセクハラですよ!」
由起が厳しい顔を作って冬威に言う。
「誠に申し訳ありませんでした‥」
3人の女の子に責められた冬威が深々と頭を下げる。
その姿を見た3人の黄色歓声と笑い声がフロントに響く。
「じゃああとでね! ゆっくりで良いから。俺が先に出るだろうけどここで待ってるからさ」
「お兄ちゃん烏の行水だもんね」
「あたし達は由起ちゃんとゆっくり夕陽と夜景見るから」
そう言うと女風呂に消えて行く3人。
冬威も男風呂に一人向かう。
脱衣所で腕時計を見る冬威。
『17時55分か。随分長く写真撮ったな。日の入りまであと一時間くらいか。美夏、美優なら一時間くらい平気で風呂入ってるけど‥由起大丈夫かな?』
そんなことを考えながら衣類を脱ぐ。
しかし冬威は防水機能が付いている腕時計は体から離さず身につけたまま浴室に向かった。
浴室を通り、外の露天になっている箇所に進む。
東京湾岸が一望できるロケーションは最高に開放的だ。
洗い場で体を流すと冬威は浴槽に身を沈めた。
駐車場には車が沢山停まっていたが、お土産を買うか食事を楽しんでいるのか浴室には人もまばらでゆっくりとできそうであった。
目の前の東京湾を大きな船が悠々と航行している。
冬威は、風呂に浸かりながら東京湾を航行している様な気分になるのだった。