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ドライブインかなや 女同士裸のつき合いに行くよっ!

リビングで打ち解けた3人の女の子。

奈々の提案で食事前に入浴施設に行くこととなる。

冬威の運転でドライブインかなやに向かう4人。

リビングで談笑する5人。

美優、由起、美夏の距離がぐんと近くなりそれに伴い心理的な距離感も縮まったように思えた。

何気ない会話が繰り広げられ時折黄色い歓声や笑い声がリビングに響く。

そんな3人の女の子の姿を微笑ましく見守る奈々。


「あら、もうこんな時間…。冬威、『かなや』に行ってお風呂入っておいで。この時間から行けば夕日もきれいだし今日は天気良いから富士山とか夜景も良いわね」

「え、あ、うん」

冬威が生返事をする。


かなやとは国道127号線沿いにあるドライブインでいわゆる入浴施設も併設している。

海岸沿いに建っているため東京湾が眺望できる。

晴れた日の夕方には夕日が美しく、空気が澄んでいれば赤く染まった富士山も見ることが出来る。

そして陽が沈んだ後は東京ベイエリア、横浜方面の夜景が美しく映えるのである。


「冬威~あたし達も行く~」

気を許し始めた美夏が思わずいつもの調子で冬威に言う。

「みんなで行っておいで。その間に夕食の支度しておくから。冬威、ほらっ」

奈々はキッチンのカウンターテーブルまで行くと車のキーを手に取り冬威に軽く放る。


「おっと」

冬威がキーをキャッチする

「可愛い女の子3人も乗せるんだか事故しない様に気を付けるのよ」

「わかってるよ母さん」


「じゃあ美夏と美優はお風呂の支度して来るね~」

「お兄ちゃん置いて行ったら怒るからね~」

双子がバタバタと2階に上がって行く。


「ふぅ~っ」

冬威が深いため息をつく。

「どうしたの冬威君?」

由起が冬威の顔を覗き込み気遣う。


「いやなんでもない。なんか由起ってすごいね?」

「何がすごい?」

「すごいわよ由起ちゃん! うちの双子ちゃんがあんなに早く受け入れるなんて! ねぇ冬威?」

奈々が冬威に振る。


「そうだね、なんかもうすっかり仲良しな感じ。特にあの美夏の顔つきが違うのがビックリだね」

「そうそう! 案外美優は受け入れ早いけど美夏の方が割とこだわり強いからね」

「そうなんですね。でも良かった美夏ちゃんと美優ちゃんと仲良しになれてっ」

由起が大きな笑顔を見せる。


「冬威君車の運転できるんだ」

「この田舎じゃあ車の運転できないと生活にならないからね…。でも普段はあんまり車は運転しないよ」

「そんなんだ。かなやって電車からも見えた海沿いの大きなドライブイン?」

「そうそう」

「普段はあんまり行かないけど、お客様が来た時に一緒に行くのよね。東京湾が一望出来て開放的な感じよ」

奈々が由起に言う。


「それにせっかく仲良くなったからここでもう一息? 一緒ににお風呂に入って女同士裸のお付き合いっみたいな!」

奈々が由起の肩をポンと叩きながら言う。


「って俺は独りか~なんか淋しいな…」

冬威がポツリと言う。


「当たり前でしょ!」

奈々と由起が声を合せて言いその後声を出して笑う。

「あはは、私達まるで双子の姉妹みたいね由起ちゃん」

「本当、お母さん。息がピタリと合いましたね」


そんな母親と由起の様子を冬威は遠い過去を見るように愛おしそうに見つめている。

その瞳の色は深く愛に満ちていた。

『201X年5月1日16時…か』

冬威がデジタル時計に目をやり日時を確認する。

そして何かを計算するように静かに目を閉じる。

アナログ時計が流行の中、冬威は機能性を重視したデジタル時計を身につけることを常としていた。

目を開けた冬威が意味あり気に腕時計をポンポンと指で弾く。


「お兄ちゃん! 準備できたよ! 由起ちゃん行こうっ!」双子がバタバタと階段を下りて来る。

「来た来た、じゃあ由起ちゃん冬威、うちのかわい子ちゃん達をよろしくね。冬威安全運転でね」

「わかってるよ母さん」


玄関を出た4人は家の脇に駐車してある赤い車に乗り込む。

「うちのママって赤い車しか乗らないんだよ由起ちゃん」

「そうなの美優ちゃん?」

「そう奈々は丑年だから赤い物が好きなんだよ」

そう言って笑う美夏。


「あはは、ほんと美夏ちゃん? って美夏ちゃんはお母さんのこと名前で呼ぶんだね? なんか姉妹みたいでかっこいい」

「へへ…奈々には怒られるけど…『奈々ちゃんって呼びなさい』って」

「なんかそれも違くないか? ちゃんつければ良いってもんでもない気がするけど…」

冬威がそう指摘するが美夏は意に介さない。


「いいじゃん別に呼び方なんかどうでも~。TPOで使い分けもしてるしさ」

美夏が反論する。


「まぁそのおかげでこっちは美夏が話しているのか美優が話しているのか判断できるから便利と言えば便利だけどね…」

「…」

冬威の言葉を聞いて双子姉妹は無言で顔を見合わせてほくそ笑む。

その姿をルームミラーで見逃さなかった由起が姉妹を振り返り悪戯っぽく微笑む。

すると双子姉妹がそろって小さく舌を出して由起におどけて見せる。

三人の女の子が同時に笑い声をあげて笑う。


「ん? どうしたの? 何が可笑しいの?」

不意の笑い声に冬威が狼狽えるが、


「なんでもないよね~美夏ちゃん美優ちゃん~」

「そうそうなんでもないよね~由起ちゃん美優~」

「お兄ちゃんは知らなくって良いの~ねぇ~由起ちゃん美夏~」

「ねぇ~」

最後に三人が声を合わせてそう言いまた笑い出す。


「なんだよ仲間はずれかよ~」

冬威が拗ねた様に言うと3人の女の子が更に大きな笑い声をあげる。


車内は笑い声に包まれていた。

車は左手に海を見ながらドライブインかなやに向かって走る。







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