由起VS美夏美優 第2ラウンドっ!
由起と美夏美優との攻防!
さぁ…どうなる?
L型に配置されているリビングの4人掛けソファーに座る5人。
テレビと対面する側のソファーに奈々、美優、美夏が座りもう一方に冬威と由起が座っている。
『この子達…さりげなく牽制してきたわね…。しかし巨大タコにイカ…由起海辺の街のことよくわからないから一瞬ほんとかと思ったじゃない…』
笑顔の由起が心の中で呟く。
『それにしても…なんて可愛さなの…。長い黒髪、つぶらな瞳、小っちゃい顔! お母さん譲りの美しい鼻筋と唇…。そして長い手足に引き締まったボディ…。完璧だわ…その完璧な女の子が全く同じ姿でふたり…。凄まじい破壊力だわ…』
ニコニコと微笑みながらも双子の姿を冷静に観察する。
『冬威が学校や電車の中の女の子に目もくれないのはこの子たちのせいだったのね…。確かに日常的にこんな可愛い子が、しかも×2でそばに居たらちょっとやそっと可愛い子が目の前に来ても全然刺激にならないかも…。つまり可愛い子がそばに居るのが当然な環境で…可愛いの感覚が麻痺している…的な』
「でも…見れば見るほど美夏ちゃんも美優ちゃんも可愛い…。スタイルも抜群だし顔も小っちゃくて可愛いし、由起自信が無くなっちゃう…」
自信なさ気な顔つきを作る由起。
「そんなことないよ~由起ちゃんもスタイル良いし可愛いよ~」
双子が示し合わせたかのように同時に声を合わせて言う。
「美夏ちゃん美優ちゃん? お願いがあるんだけどいい?」
「お願い?」
美夏が聞き返す。
「由起ちゃんお願いって?」
美優が更に返す。
「変な子だって思わないでね? …美夏ちゃんと美優ちゃんの間に座ってもいい?」
「…」
美夏と美優が無言で顔を見合わせる。
『美優? なにこの子?』
『美夏? 想定外の動き…でもここは向こうの出方を見るよ!』
目線だけで会話をし小さくうなずく。
「え~なんだかよくわからないけど…どうぞ」
美優が腰を上げて奈々のそばに近づいて、美夏との間に空間を作る。
「ありがとう~」
由起が喜々とした表情を作りふたりの間に座る。
奈々、美優、由起、美夏の順で並んで座る。
「…」
しばしの無言。
「美夏ちゃん、美優ちゃん」
由起が双子の名前を呼びながらそれぞれの顔を代わる代わる見る。
「なに? 由起ちゃん」
双子が同時に言う。
『ヤバイ、この状況で可愛い双子ちゃんから同時に顔を見られると…ちょっと形容できないくらいファンタジーだわ…』
由起が心の中で呟く。
そして…
「可愛い~。信じられない夢の様な可愛さ…異次元級~」
「…」
美夏と美優が呆気にとられる。
その二人を畳み掛けるように由起が続ける。
「美夏ちゃん、美優ちゃん、お兄さん…冬威君って学校でもね、女の子にデレデレしたりしないし基礎ゼミの飲み会なんかも誘われても全然来ないし、電車の中で可愛い子が横に座っても知らんぷりで本読んでたりするのね…」
一旦話を区切り双子の様子を見る由起。
「うんうん…それで? それから? 由起ちゃん」
双子が由起の方を見て話しの先を急がせるように言う。
『よしよし…食いついてきたわね』
心の中でほくそ笑む由起。
「それでね、学校の女の子たちは冬威君には地元にすっごく可愛いくて嫉妬深い彼女がいるに違いないなんて噂してるの」
「へぇ~そうなの、笑っちゃうね美優!」
「お兄ちゃんに嫉妬深い彼女~? いないいない~ね~美夏!」
双子が由起越しに顔を見合わせ笑う。
「なんだよ変な話ししないでくれよ~」
そんな双子の反応を見て気まずそうな顔をして笑う冬威。
「でも今、美夏ちゃんと美優ちゃんの間に座ってみて良くわかった…右を見ても左を見ても可愛い女の子がいる。由起は今ファンタジーの世界に迷い込んだみたい! 」
「え~そんな…由起ちゃん恥ずかしいよ~」
声を合わせる双子。
そう言いながら満更でもない顔のふたり。
「美夏ちゃん美優ちゃんみたいにファンタジー級に可愛い妹さんがいつもそばにいたら、ちょっとやそっと可愛い子がいても冬威君が興味も持たないのがよくわかったよ~。冬威君幸せねっ!」
由起が冬威の方を見て大げさに言う。
そして視線で冬威にメッセージを送る。
『ここで同意して冬威っ!』
冬威も由起の意図的な視線に気が付き反応する。
「あっ、あぁそうなのかもしれないな~。俺が言うのもなんだけど可愛い妹だからね~」
由起のサインを読み取った冬威が事も無げに言う。
「…」
双子が無言で顔を見合わせる。
『冬威があたし達のこと人前で可愛いって言うって…』
『美夏? なんかちょっとうれしくない?』
『由起ちゃん…なかなかやるわね。美夏と美優の反応が違ってきているわ…』
3人の女の子のやり取りを冷静に見つめる奈々も心の中で呟く。
「やだ~なんかうれしい~由起ちゃん~」
由起を間にはさみ双子が同時に言う。
「きゃ~こんなに可愛い女の子に挟まれてそんな風に言われると、ほんとにファンタジーの世界に迷い込んじゃったみたい~。って言うか…由起はふたりを見てると自信がなくなっちゃうよ…」
明るい笑顔で黄色い声を上げた直後、コンストラストを効かせて由起が表情を曇らせる。
「由起ちゃん…」
双子が心配気に呟く。
「美優は由起ちゃんきれいな人だと思うけど」
「美夏も由起ちゃんはなんか…他人な気がしないと言うか会ったことがある気がするって言うか…」
『美夏? 言い過ぎ!』
美優がチラッと美夏を見て牽制するが美夏は気が付かない。
「ん、んん~とにかく由起ちゃんは自信なくすことなんてないと思うよね? 美夏!」
「そうだよ由起ちゃん!」
美夏が美優に同意する。
これまでイニシアティブは美夏が握っている感じであったが、こと冬威のこととなると美優の方がやや前面に出て来る印象を受ける。
「ほんと? うれしい~。可愛いふたりに言われるとなんか少し自信が持てる…。ありがと美優ちゃんっ美夏ちゃん! ふたりは優しいんだね」
そんな空気を敏感に察知した由起がふたりに向けて言う。
リビングに流れていた緊迫した空気が徐々に緩んでいく様子が壁に立てかけられた大きな鏡に映し出されている。
窓の外には青い空と真っ白なバラの花と緑の芝生が輝いていた。