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由起VS美夏美優 第1ラウンドっ!

由起と双子姉妹のご対面。

双子姉妹は奈々に似た由起に一瞬戸惑うが徐々にその牙を剥きはじめる…(笑)

トントントン…

階段を下りてくる二つの足音。

美夏と美優が二階から降りてくる。


「あら? もう勉強終わったの?」

1階に下りてきた美夏と美優に奈々が言う。


「ママ、1時間くらい集中して勉強したら少し休んだ方が効率良いんだよ?」

「ママ? あなた美夏よね?」

「そうだよママ? どうかした?」

「ん? ううん…別に」

戸惑う奈々。


「ママ? さっきのクッキー食べて良い? とってもおいしかった~」

「あなた美優? う、うん…もちろん良いわよ」

「やった~」

美夏と美優が同時にそう言いテーブルに着く。


「ふたりとも…何か飲む?」

「紅茶が飲みたい~」

またもふたり一緒に言う。


「あ、ああ紅茶ねわかった」

そう言うとキッチンに向かう奈々。

正直話し方や表情に差が無くなると母である奈々ですら美夏と美優をを見分けることは困難だった。


『この二人…何か感ずいたわね…』

奈々に背中を向けて座る双子姉妹の変化に違和感を感じる奈々。


「美夏、美優? 今晩ちょっとお泊りに来る子がいるからよろしくね」

さも何でもないと言った風にさりげなく言う。


「そうなのママ? どんな子なのか楽しみ、ねぇ美優」

「今度はどんな子なんだろう? ねぇ美夏」

ふたりも対して興味がない感じを装っている。


「冬威にね毎日お弁当を作ってくれてる子なの。そのお礼にママが呼んだから失礼のない様にね」

「は~いママ」

ふたりが声を合わせて返事をする。


そして奈々に悟られないように視線をかわす。

『なに? お弁当作ってるって? 美優?』

『そう言えば最近ママお弁当二つしか作ってなかったよ美夏! お兄ちゃんは学食で食べてるんだとばっかり思ってたんだけど…』

『そう言うことだったのね』

視線と表情のみで意思を伝達する姉妹。

  

「ママ~その子いつくるの~」

「もうすぐ来ると思うわよ美夏」

「ふ~んそうなんだぁ美優楽しみ」

白々しい会話が続く…。


『とりあえずは大丈夫そうね…そしたら冬威に連絡して…』

奈々が心の中で呟く。


「ちょっと洗濯物取り込んで来るわね…」

そう言うと携帯電話を手にいそいそと2階に上がる奈々。


奈々が居なくなったリビング。

「奈々の奴、冬威に電話しに行ったね…」

「間違いないよ美夏! ママ、お兄ちゃんに電話しに行ったね!」

ふたりの顔つきが変わる。


「さぁて…どう来るのかなぁ~美優?」

「う~ん…どうだろ? でもさお兄ちゃんに毎日お弁当作って来るなんてちょっとびっくり」

「まぁ…ね。奈々がお礼を言いたくなるのもわかるよ。毎日お弁当作るって大変だよね…」

「なんかまるで…ママみたい」

「だよな…」

「案外いい子かもね」

ふたりが声を合わせて言う。


「まぁ初めはリビングで可愛らしい妹! っ的な感じでキュートに挨拶でもして…」

「当たり障りのない話からちょっとずつプレッシャーかけてね…」

「お兄ちゃんの部屋で二人っきりでお話でもしたらぁ~」

「なんて言ってママからお兄ちゃんとその子を離して…」

「二人っきりになったところであたし達が突入してそこから作戦通り行くよ美優!」

「ハイスペック美少女Twinsアタック! なんちゃって。美夏? 美優なんか楽しみになって来ちゃった」

ひそひそと企みを企てる双子姉妹。


2階に上がりベランダで電話をかける奈々。

「冬威? 美夏と美優に由起ちゃんが来ること話したから後はふたりのタイミングで帰って来て」

「わかったよ母さん。ふたりはどう?」

「あの子達…なんだろうね、既にこの状況を予測していたみたいな感じ…」

「そうなの? 大丈夫かなぁ…」

「まぁ冬威に毎日お弁当作ってくれる子に私がお礼を言う為に招待したって言ってあるからその辺り由起ちゃんにも上手く伝えてね」

「わかった…。じゃあしばらくしたら帰るよ…」

そう言うと冬威が電話を切る。


「電話、お母さん?」

由起が不安そうな顔をする。

「そうそう、俺に毎日お弁当を作ってくれる由起にお礼を言う為に母さんが招待したって話してあるって」

「わかった…」

冬威と由起に緊張が走る。


「いこっか?」

「う、うん…ちょっとイメージトレーニング」

そう言うと目を閉じてブツブツとつぶやく由起。


「大丈夫だよ、俺と母さんがついてるからさ」

「うん、わかってるけど…たぶん由起にとって一番手強いのが双子ちゃんだって…女の勘がそう言ってるのよね…」

由起が中空を見つめる。


「そ、そうなんだ…って大丈夫だって! よくよく考えたらそんなに大それたことしようってんじゃないんだからさ!」

冬威が楽観的に言う。


「いえ…冬威さんこれは決戦よ…。双子ちゃんも相応の作戦を練っているはずだわ…」

由起の顔つきがみるみる険しく変わっていく。


「冬威さんって…」

「でも由起も覚悟を決めたわ! さぁ早く行きましょ!」

会計を済ませたふたりは足早に冬威の家に向かう。


ほぼ無言で歩を進めるふたり

ほどなく門の前に着く。

インターフォンの前まで来ると由起が一瞬立ち止まるが先を行く冬威にすぐに追いつく。


「行くよ、由起?」

「うん…」

由起が冬威の服の端をしっかりと握る。


「ただいまぁ~」

能天気な声で冬威が帰宅を告げる。


「あら、お帰り冬威」

本当は玄関の中で二人が来るのを待っていた奈々であったが、たった今何気なく2階から下りてきた風を装う奈々。

「由起ちゃんいらっしゃいどうぞ~」

由起を誘う奈々。

「はい、お母さんお邪魔します」


『お母さん?』

リビングで待ち構えている双子の耳がピクンと動いたようだった。

美夏と美優は互いに顔を見合わせ明らかに不快を表したがリビングの扉を開け奈々、冬威、由起、の順で部屋に入ってくるとその顔つきを素早く変える。


「美夏、美優、由起ちゃんよ」

奈々が由起を自分の胸の前に連れてきて紹介する。

「初めまして由起です。お邪魔します」

由起が軽く頭を下げる。


『んっ?』

顔を上げた奈々を見た双子姉妹が一瞬目を見開き顔を見合わせて無言で会話をする。


『なんか…奈々に似てない?』『美夏? ママに似てるよね?』

双子の想いが交錯し一瞬の間が開く。


「どうしたのふたりとも黙っちゃって…あんたたちも自己紹介しなさい」

奈々が二人に促す。


「あっ、こんにちは美夏です、よろしく」

「こんにちは~美優です~よろしくおねがいします~」


「こちらこそよろしくお願いします」

由起がもう一度頭を下げる。


『なんか…感じ良い人じゃない?』

『うん…なんかいい感じだよね?』

双子が視線で会話をする。


「美夏さん、美優さんふたりともすっごく可愛くて…びっくりしちゃった…」

由起が目を見開いて言う。


双子が再び顔を合わせる。

『双子なんだから同じで当たり前だろ?』

『でも美夏? ふたり一緒じゃなくて一人一人が可愛いって言ってくれてるみたいで…なんかうれしくない?』

一瞬でお互いの気持を視線と表情で交わす。


「うれしい~由起さん~美夏、あたし達のことは美優ちゃん、美夏ちゃんって呼んでもらっていいよね?」

「もちろん~由起さんあたし達のことは美夏ちゃん、美優ちゃんって呼んで下さいね~」

これでもかというほど柔和な表情で言う双子姉妹。


「うれしい~じゃあ由起のことも由起ちゃんって呼んでくれる?」

由起がふたりの顔色をうかがいながらそう言う。


「由起ちゃんって呼んでいいの?」

双子が声を合わせる。


「由起ちゃんって呼んでもらえたらすごくうれしい~」

「じゃあ…由起ちゃん」

まるで練習したかのようにぴたりと同時に言う美夏と美優。


「美夏ちゃん美優ちゃん? 突然お邪魔してごめんなさいね…」

由起が顔色を変えて、さもすまなそうに言う。


「全然~そんなこと気にしないでね~。ねっ美優?」

「そうそう~全然大丈夫! ねっ美夏?」


何となくいい感じの由起と双子の様子を見て奈々と冬威がホッとした顔をしている。

しかし水面下での双子はと言えば…。


『おいおい美優? なんかペース乱れてないか?』

『ん…うん…。なんか押されてる感じ…ちょっとここらでジャブ?』

伏し目がちに双子が視線を交わし小さくうなずき合う。


「美夏ちゃん美優ちゃんここは海見えていいなぁ~。由起は埼玉県出身だからうらやましい~」

そんな事は露知らず由起が双子に話しを振る。


『おっ来た!』

『今ね!』

一瞬の視線のやり取りで呼吸を合わせる双子姉妹。


「由起ちゃん…海が近くで良いなんて…全然違うよ…ねっ美優」

「そうそう由起ちゃん? 全然良いところなんかじゃないよここは…」

双子がさも恐ろし気な雰囲気を出し話し始める。


「えっ? どうして?」

「由起ちゃん? 今はいいけど…夜になると海から巨大なタコやイカが海から這い上がって来て…うちの前の空き地で戦うの…。もう怖いやら生臭いやら毎晩嫌になっちゃう…。由起ちゃん巨大タコとかイカとか好き? それから生臭いのって我慢できる? 美夏心配…」

さも心配気な顔をしながら由起に振る美夏。


「え…あ、ちょっと苦手かも…」

由起が戸惑いながら返事をする。


「由起ちゃん…。巨大タコやイカだけじゃないの…。裏山からは夜になると巨大なイノシシやでっかい角をして目の血走ったシカや狂ったように騒ぐサルの大群が押し寄せてきて…女の子を狙ってるの…美優もう嫌っ耐えられないこんなとこ!」

美優が耳をふさぎながら小さく叫ぶ。


「え、え? そうなの…」

由起が唖然とする。


『うまく行ったかな美優?』

『だいぶショックを受けてるみたいよ美夏』

口元を小さく歪めながらほくそ笑む双子姉妹。


「美夏、美優! そんなわけないでしょ? 由起ちゃん怯えてるじゃない! 変なこと言わないの!」

奈々が双子を窘める。

「だってママっ? 由起ちゃんには本当のことを知ってもらわないと…ねっ美夏!」

「そうだよ…何にも知らないで由起ちゃんが怖い目に合ったらって思うと心配なんだよ…ねっ美優」

互いにそう言いながらうなずき合う。


「おいおい? 美夏? 美優? いつうちの前でそんな怪獣大戦争みたいなことが繰り広げられたのかな? それにイノシシやシカやサルは確かにいるけど、ここまでは来ないだろ?」

冬威が可笑しそうに言う。


「お兄ちゃんは知らないのよ…。美優と美夏はいつもいつも怖い思いをしてるってのに…」

「美優っ! お兄ちゃんは由起ちゃんに隠しておきたいのよっ、由起ちゃんがここを嫌いにならないように」

白々しい顔をする双子姉妹。


『まぁこの辺りであたし達の真意を感じ取れるでしょ?』

『そうね美夏…最初はちょっと押されちゃったけどこんなバカな話をされたら普通は怒るよね?』

双子が目で話す。


「もうやだ~美夏ちゃん美優ちゃんったら、由起本気にしちゃった~」

これでもかというほどの微笑を見せる由起。


『むむっ…これでもかっていう程感じの良い微笑み返し…』

『美夏? この人ただ者じゃないわよ?』

『そうね…ここは一旦退避』

『タイミングを見てお兄ちゃんと二人っきりになった時に再度アタックよ美夏!』


「あはは~ごめんごめん~由起ちゃんにうけるかと思ってちょっとオーバーに言っちゃった~」

「美夏ってば巨大タコと巨大イカが戦うなんてもう~由起ちゃんあきれてるよ~」

「由起ビックリしちゃった~あはは~」


3人の乾いた笑い声がリビングに広がりその水面下の闘いを垣間見た冬威の表情が凍る。

3人の女の子の理由なき? 戦いは始まったばかりであった…。


   






















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