表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/84

春風に吹かれる

冬威と由起の微妙な駆け引きはアッと言う間に終了。

さぁ…これからどうしよっかな(笑)

純情ラブストーリーにするか

リアルに大学生の恋愛描くか

分岐点だな(笑)

「早く、ここ、ここ」

由起が冬威を引っ張るように体育館そばのベンチに誘う。


「こんなとこあったんだ~知らなかったよ」

「良いでしょここ。誰もいないし…。ここに座ろ」

そう言うとベンチに座り弁当箱を取り出す。


「休み時間無くなっちゃうから早く食べよ!」

「ん? あ、ああ」

冬威は由起の弁当を開ける。


「由起ちゃん弁当作るの上手だね。彩りきれいだしうまそ!」

そう言うと冬威は弁当に箸を付ける

「ほんとに? うれしい。口に合うかな?」


「う、うう…」

弁当を一口した冬威が突然呻きだす。

「冬威どうしたの? アレルギー? 冬威! 大丈夫…って冬威? その後『う、うまいっ!』ってやる気でしょ?」

初めは、さも心配気に声をかけていた由起が何かに気が付いたように冷たく言う。


「う、うまい!って、あれ? ばれちゃってた?」


「うちのパパも良くやるそれ…」

「あ、そ。うちの親父も良くやるんだは」


「ぷっ、あはははは」

ふたりが同時に笑い出す。


「なんか似たような父親に育てられた様ですな由起ちゃん」

「みたいね、おっかしい。子供って結局親の背中しか見られないみたいね? 冬威だって家でパパがそれやってるの見て『またやってるよ…』って思ってるんでしょ?」


「ま、まあね…由起ちゃん鋭いね」

「だって由起もそう思ってるもん」

そう言うとまたふたりで笑う。


「でも由起ちゃん料理上手だね。ほんと美味しいよ」

「独り暮らしだからね。何でも自分でやらないと。でも冬威? 男の子で料理の彩り褒めるとはなかなか女心がわかってますな?」


「ま、まぁ…鍛えられてますから否応なく日々…」

「え? あ、そ、そうなんだ…なんかよくわかんないけど大変そうだね…」

「うん…」


「それよっか由起ちゃん? 独り暮らしってちょっと憧れるけど…めんどくさくない?」

「う~ん…確かにめんどくさいって言えばめんどくさいけど…冬威は独り暮らしとかしないの?」

「ガッコまで通える距離だからね。」


「ね、ね?…冬威?ほんとに由起の料理おいしい?」

「何?急に。ほんとにおいしいよ?」

間髪入れずに冬威が返事をする。


「冬威、今度…ううん、今日ウチにご飯食べに来なよ。美味しい物ご馳走するから」

「え~なんか悪いよ…お弁当も作ってもらってるし…」

歯切れ悪く返答する冬威。


「悪くないの。食材買いすぎちゃって痛んじゃいそうなの。だから助けると思って! ね? 由起の、お・ね・が・いっ」

由起は顔の前で手を合わせて冬威に言う。


「お・ね・が・い・ってなんか可愛いね~じゃあお邪魔しようかしら~」

「…ってなんで急にお姉みたいな感じ?」

不機嫌そうに由起が言う。


「あ、いや別に意味ないけど…由起ちゃん怒るからやっぱ行~かないっと!」

「あ、ごめんごめん怒んないから、一緒にご飯食べよ!」

再び拝み倒すように言う由起。


「オッケー! んじゃご飯ごちそうになるね! ん? ライン入ったね。 由起ちゃんも鳴ってるよ?」

「ほんとだ」

ふたりそろってラインをチエックする。


「…午後の講義休校だってさ由起ちゃん」

「やった…じゃあゆっくりお弁当食べられるね」

春のやわらかな日差しの下でふたりならんでぎこちなく座る。

しばしの沈黙を破る様に話し始める由起。


「冬威ってさ彼女とかいるの?」

「由起ちゃんってさ彼氏とかいるの?」

由起に続けるように冬威が言う。


「由起が先に聞いたんだよ!」

「冬威が後に聞いたんだよ!」


「…なにそれ? じゃあ冬威が先に言いなよ」

「…なにそれ? じゃあ由起ちゃんが後に言いなよ」


「…うん、わかった後に言う。じゃあ冬威が先に言って」

「…うん、わかった先に言う。じゃあ由起ちゃんが後に言って」


「冬威…? これいつまで続くの?」

「由起ちゃんが何を質問したか忘れるまでかな~ははっ」


「ってことは彼女いないんだ…」

「ってことで良いよ!」


「もう! 冬威! さっきの女心わかるって言ったの撤回だから!」

「ん? なんで?」


「普通さ、お弁当箱間違えると思う?」

「ん?」


「『ん?』じゃなくて! 由起は冬威にお弁当食べさせたかったから、わ・ざ・と、お弁当箱間違えて持って来たの!」

「…そんなに貧しく見えたのか? 俺って…」


「そうじゃなくて~もう鈍感! 嫌いっ」

「あっ! それわかる! 少女マンガだとだいたい『嫌いっ』って言うパターンは好きってことだよね?」


「は? 冬威って少女マンガとか読むの?」

「読むよ~ガラスの仮面とか王家の紋章とか…花より男子は全巻読んだし~あとは…最近ではオレンジも良かったなぁ~」


「さっきから時々お姉言葉になるけど…もしかして冬威って…ゲイなの?」

「なんで? って別にゲイでもなんでもいいけどさ、ノーマルだよ? 人間が好きってことならバイでもいいよ? ははっ」


「もう! わけわかんない…ノーマルなのね? ノーマルなんでしょ? 冬威、女の子好き?」

「女の子大好きだよ?」


「ってなんの話ししてたかわかんなくなっちゃった…バカなんじゃないの冬威って?」

「うん、バカだよ冬威って。由起ちゃん! お弁当美味しかったよ。ごちそう様ありがと」

イライラする由起を気にも留めない冬威。


「だ・か・ら・冬威にお弁当食べさせたかったからわざとお弁当箱間違えて持って来たの! なんでかわかる?」

「わかるよ由起ちゃん、なんでそうなのかはよくわかんないけど。俺が女の子だったら嫌いな奴にお弁当なんか作らない。ってことくらいはわかるよ?」


「…」

「由起ちゃんは彼氏いないの?」


「今は…いないよ」

「そっか~由起ちゃん色白できれいだから絶対彼氏いると思ってたよ」


「由起がきれい? 冬威からかってんの?」

「なんで? 色白できれいで可愛いし料理も上手で最高の女の子じゃん?」


「冬威の…バ…カ。調子いい感じで嫌い…」

「なんだよ今度は嫌われちった! ははっ」


「冬威…? 少女漫画で『嫌いっ』は?」

由起が冬威に迫る。

「いや…嫌いなものは嫌いだろ?」

急に冷静になる冬威。


「ち・が・う・で・しょ?」

「ってじゃあ由起ちゃん俺のこと好きなの? そしたら由起ちゃんの方がバカじゃん?」


「ど・う・し・て・そうなるのよ!」

「いや? 良くわかんないけど…」


「も~冬威っ! 由起は冬威が好きなの! バカっ! 嫌いっ!」

「好きなの、バカっ…嫌いって…? 由起ちゃん…わかんないよ?」


「好き…」

冬威の胸に由起が飛び込む。

春の陽が優しく射し、まだ少し冷たい風がふたりに優しく吹き付けた。  









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ