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策士由起の憂鬱と驕慢(きょうまん)

フェミレスに来た冬威と由紀が美少女双子姉妹対策を練る。

三姉妹の中間子である由起の憂鬱と驕慢とは?

ファミリーレストランの窓際の席に座る冬威と由起。

チェーン店という事もあり見知らぬ土地に来ている由起もリラックスしている。


「由起なんかデザートでも頼んだら?」

「う~ん…いいやドリンクバーだけで」


「なんで?」

「だってあんまり甘い物ばっかり食べてると太っちゃうでしょ?」

そう言いながらお腹をポンポン叩いて見せる。


「って由起は全然太ってないじゃん? むしろもう少し太った方がいいくらいだよ?」

「ダメダメ油断してると取り返しのつかないことになっちゃうんだから! それに…冬威のママすごくきれい…」


「そっか~? でも…さっきちょっと思ったんだけどさ、由起とうちの母さんなんか印象が似てる感じ?」

「そうそう! 由起とお母さんも初めて会った時二人で一瞬顔を見合わせちゃったの! 印象…似てるよね?」


「なんか…俺としては複雑だけどね…」

気まずそうな顔をする冬威。

「なんでよ? 何が複雑なの?」

由起が食ってかかる。


「だってさ、母親と似てる子とってなんかさ…」

「なに? 何か不都合でも?」

不満気な冬威が気に入らない由起。


「ってわかるだろ? なんかマザコンっぽくない?」

平日の午後のファミレスの席はガラガラであったが周囲をはばかるように由起に顔を近づけて言う。

「いいじゃないマザコンって思われたって! 由起はむしろ母親を愛して大事にする人の方が安心だけど? 母親と一緒にいる事をかっこ悪がったりする人の方がよっぽどガキっぽく見えるよ?」


「そういうもん?」

「そうよ! 母親って、まぁこれは男でも女でも変わらないけど自分のそばにいてくれる初めの女性でしょ? 自分の事を産んでくれて大切に育ててくれた人の事を愛せない人がどうして他の女の子を愛して大切に出来るわけ?」

由起が珍しく熱弁をふるう。


「由起みたいな考え方の女の子って少ないんじゃない? むしろ気持ち悪がる女の子の方が多いと思けど?」


「だったら冬威は安心して、由起はそうじゃないから。 で、結果的に他の女の子は冬威に向いてないってことで冬威は由起だけ見ていればいいという結論に…」

由起がほくそ笑みながら冬威に言う。


「なんだそりゃ結局気持ち悪がられるんじゃん? って由起有りきの話になってるし…」

「由起有りきでは、ご・ふ・ま・ん! ですか? 冬威さん? ん? 由起が気持ち悪がらないんだからいいでしょ! それともなぁに? 冬威は他の女の子にもチヤホヤされたいわけ?」

思いっきり気に入らない顔をする由起。


「そんなこと言ってないし…別に俺はマザコンでもないけどさ」

「じゃあいいでしょ! 由起は冬威のお母さん好きよ! さっぱりしていてなおかつ愛に満ちてる感じがするしきれいだし…」

由起がうっとりした顔をする。


「まぁそう言われれば悪い気はしないけどさ…」

「冬威はそんなこと気にする必要ないの! 由起とお母さんが仲が良ければいいでしょ!


「なんか…よくわからないけど…仲悪いよりは良い方が良いと思う…けど」

「そう言う事! それでいいの! これは女の問題だから冬威は気にしなくていいの! わかった!」


「なんか論点がずれてきてる気がするけど…」

「い・い・の! それより問題なのは冬威の方よ! 冬威何にもわかってないでしょ?」

由起がむきになって言う。


「何にもわかってないって?」

「お母さんが女の子に『今晩泊まっておいで』ってなんで言っているのかよ!」

「母さんが気に入った子だからじゃないの?」


「そりゃそうよ! 何が悲しくて気に入らない子を自分の家に泊めるわけ?」

「まぁ…そう言われてみればそうだけど…」

何を言われているかよくわからない冬威。


「だから~何を基準として気に入るかってこと!」

「…」

冬威は無言で『さっぱりわからない』事を表現する。


「冬威? お母さんはね、冬威のお嫁さんとして気に入った子を泊まらせるわけ! 本当はどんな子なのかを見極めるためにね!」

「はぁ~? そんなわけないだろ?」

豆鉄砲をくらったハトのような顔をする冬威。


「やっぱりわかってなかったか…。冬威ってものすごく敏感かと思うと、逆に地の果てまで鈍感なとこあるよね?」

由起が呆れた顔をする。


「地の果てまで鈍感って…」

意味は分からないが、かなりひどい悪口を言われていることは感じ取りしょげる冬威。


「双子ちゃんたちはとっくに気づいてるよきっと…」

「まさか~お子ちゃまのあの子たちがそんなのわかるわけないじゃん」

そう言いながら笑う冬威に由起がとどめを刺すように言う。


「この問題に関しては冬威の方がお子ちゃまよ、きっと…」

「…」

お子ちゃまだと思っていた妹たちよりお子ちゃまだと指摘されさらにしょげる冬威。


「冬威? 冬威ってマザコンって言うよりシスコンじゃない?」

由起が眉を上げる。

「由起にとってはそっちの方がなんか手強いんですけど…」


「何言ってんだよ? そんなことないって」

冬威が慌てて否定する。


「ふ~んほんとにそうかしら…」

由起がジッと見つめる。


「そりゃ妹は可愛いけどさ…」

「双子ちゃんたちはお母さんにやきもち妬いてるんじゃなくて! 冬威にやきもち妬いてるのっ! もうこれは確信的に間違いないから」

由起が冬威を責めるように捲し立てる。


「そんなわけないじゃん~」

「もう冬威は鈍感にもほどがあるよ…。仮にやきもちじゃなくってもさ、冬威のお嫁さんってことはあの子たちにとって義理ではあってもお姉さんになるんだよ? 穏やかじゃないに決まってるでしょ?」


「ってそりゃあ俺に当たられても困るよ…母さんがしてることなんだからさぁ~」

「そりゃまぁそうだけど…。でも双子ちゃんの気持ち由起はわかるなぁ…」

そう言うとテーブルの冬威の足をこれでもかと踏みつける。


「痛てててっ! って何すんだよ由起!」

由起の足を振り払う冬威。


「冬威がハッキリしないっていうか…妹ちゃんたちの前でお母さんが泊まらせた女の子にデレデレしてたんじゃないの?」

由起が冬威を艶っぽくも鋭い視線で見つめる。


「んなわけないだろ? 俺はほとんど一緒にいないからさ!」

「ほんとに…?」

疑いの目で深く冬威をえぐる。


「ほんとだって! 案外気を遣うもんだよ? 自分の家に年頃の近い女の子が泊まるってさ」

「ふ~ん…そうですか…」

由起は不満気だ。


「まぁ信じてあげましょ。でも妹ちゃんたちは冬威が思ってる以上に冬威の事を大事に思ってると思うよ。だ・か・ら! 由起は『冬威君のこと好きなんだけどちっとも由起の事見てくれないの…冬威君誰か好きな人っているのかなぁ…知ってる? 由起が冬威君に押しかけているだけできっと迷惑なんだよ…。ごめんね、大切なお兄さんに…』っ的なスタンスでいくからよろしくっ!」

「…」

呆然と由起を見つめる冬威。


「どうしたの冬威?」

「由起? そんなにうまくいくとは思えないけど…あの子たちかなりあれだよ?」

「あれって?」


「狡猾というか…兄貴の俺が言うのもなんだけど知能が高いっていうか、知能犯というか…」

冬威が心配気に言う。


「だ・い・じょ・う・ぶ! 心配ご無用。 恋する女は強くて狡猾なのよ冬威? 知らなかった? 冬威は私の動きに合わせていなくなったり現れたり、口裏合わせてればいいから。視線で合図するからちゃんと空気読んでよ!」


「双子の以心伝心にかなうかな…あの子たち本当に目で話をしてる感じだからな…。見抜かれそう…」

不安気な冬威がアイスコーヒーをグッと飲む。

「大丈夫大丈夫! 冬威? 前に由起は三姉妹って言ったでしょ? 由起は真ん中なの。姉もいるし妹もいる。妹の可愛がり方ならま・か・せ・て!」

自信満々な由起を見ながらさらに不安が増す冬威。


人影もまばらなファミレスにふたりの姿がまぶしく輝いていた。

窓の外にはひっきりなしに車が走りせわしなかったが、ふたりの間にはゆっくりと時間が流れていた。












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