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由起 クライシス!

すっかり打ち解けた由起と冬威の母。

まるで本当の親子みたいに仲の良いふたり。

そこに謎の刺客の乱入か…?

冬威に連れられ一旦回避する由起。

事態が飲み込めない由起が見たものは!!

ダイニングテーブルに並んで座る由起と冬威の母はまるで親子の様に仲睦まじい。

ふたりの向かい側に座っている冬威が疎外感を感じるほどに。


「う~ん由起ちゃんは本当に可愛い~。もう、うちの子ね!」

冬威の母が由起の頭を自分に寄せる。

「はいお母さん、由起はもうここのうちの子です~」

由起が満面の笑顔でそれに応える。

そんなふたりを冷めた目で眺める冬威。


「母さん…仲良くなったのはいいけどそれなら余計に早いとこ由起を帰した方が無難だと思うけど…」

盛り上がるふたりを見ながら冬威が言う。


「なによ冬威? 由起ちゃんには今日泊まって行ってもらうからね? 由起ちゃん今晩泊まっておいで! 学校お休みだから明日も泊まっておいで」

「はいお母さんっ」

「出たよ…得意技。って明日もって…」


「いいでしょ? 明日も学校休みなんだから!」

「お母さん由起念のためお泊りの準備もしてきました~」

そう言うと持って来た大きなバッグを指さす由起。


「あら、さすが由起ちゃん準備が良いわね~気が利いてる~」

「はい~」

「オイオイ…それは気が利いてるっていうのか…由起も何が念のためだっての…」」

と、冬威が突っ込むが、もうこのラインは鉄壁となっており冬威に入り込む隙はない。


その時…

「ただいま~」

の声と共にけたたましくリビング入ってくるふたつの人影。

ふたりはダイニングには目もくれずリビングの隣にある和室に入り着替え始める。


「あら? あなた達学校は?」

入ってきた二つの人影に冬威の母が問いかける。


「奈々! さぼりさぼり~どうせ午後からマラソン大会の練習だからさ…あたし達練習する必要なし! 絶対、美夏と美優でワンツーフィニッシュだから。体育の成績は保障されたようなもんだよ」


「ママ? 美優はちゃんと授業出ようよって言ったんだけど美夏が言うこと来てくれなかったの~」

ふたりの女の子がけたたましく言い放つ。


「なんだよ美優? 美優だって帰っちゃおって言ってただろ?」

「美優はそんなこと言ってませ~ん」

「ずるいぞひとりで良い子になって!」

がやがやと騒がしいふたり。


「だめだろ学校さぼっちゃ!」

冬威が和室のふたりに向かって言う。


「冬威? 冬威のおかげでさ、あたし達全校で一番足速いからさ? 男子も含めてだよ?」

「お兄ちゃん帰って来てたの? 美優うれしい~」

男の子っぽい物言いをする美夏に比べ美優はおっとりとしているようだ。

話し方は違うが…

ふたりの顔は全く見分けがつかないほどに一緒だった。


「だからって学校さぼって良い理由にはならないだろ?」

冬威が双子の姉妹に向けて言う。


「冬威? 冬威がさ護身術やらなんやらあたし達に教えてさ、集団と対峙? した時は走りながら追いついてきた奴から一人一人倒せなんて言って毎日毎日毎日ランニングに連れまわしてくれたおかげでね? 美夏はちょっとやそっと練習した奴になんか負けないくらい速く長く走れますからご心配なく!」


「お兄ちゃん? 美優と美夏は、ほんとに速いんだよ? だから体育の成績は全然問題ないの、てへっ」


「冬威? あんた一体この子たちに何を教えてんの?」

冬威を睨みつけて母が言う。

「いや…女の子もいざって言う時に自分を守れないといけないから、色々とね…」

冬威がバツ悪そうに下を向く。


「奈々? 冬威は女の子のあたし達に後ろから抱きつかれたら、かかとで思いっきり相手の足の小指めがけて踏みつけろだとか、金的攻撃、目つぶし、肘鉄、飛びかかってきた相手への膝入れ、のしかかられた時の噛みつき攻撃…髪の毛を引っ張られた時の頭突き攻撃…実地込みでさんざん仕込まれたは!」


「ママ? 効果的な攻撃をするためにって腕立て腹筋懸垂もお兄ちゃんと一緒にやってるんだよ。美夏? 鼻の穴に指を突っ込む技もあるでしょ? ぐっと一気により深くね! それから手首返してねじり倒すとか、膝を真正面から思いっきり押し蹴るとかねっ!」

無邪気な顔で美優が言う。


「冬威…うちの娘達を何にするつもりなの?」

「いや、母さん美夏美優が危ない目に合わないようにって考えたらつい…いろいろ教えちゃった。って母さんそんなこと言ってる場合じゃあ…」

冬威が小声で母に告げる。


「ってそうね、ここはひとまず由起ちゃんを冬威の部屋に…」

「わかった…母さん美夏美優を和室に引き止めといて、その間に由起を」

「わかった、冬威上手くやるのよ! 結局後で対面はすることにはなるけど…」

「このパターンでいきなり美夏美優と対面したら…」

「由起が」

「由起ちゃんが」

「やばいっ」

冬威と母が同時に言う。


「冬威、抜かりなくね!」

そう言うと母は素早く和室に入りふすまを閉めふたりの女の子を叱る。

「美夏美優! 学校さぼっちゃダメでしょ?」

「は~い、ごめんなさ~い」

声を合わせて謝るふたり。

が、全く悪びれた様子はない。


「由起っ今の内だ早くこっちへ」

冬威は由起の手を引き足早にリビングを抜ける。


「えっ? え? なんなの一体? 何が起きたの?」

困惑する由起の口に指を当て静かにするよう視線で伝える冬威。

そのまま階段を昇り冬威の部屋に向う。


冬威は部屋のドアを素早く開けると由起を部屋に入れ、しっかりとドアを閉める。

沈黙したままドアの前にたたずむ冬威と由起。


緊迫した空気の中、チラッと窓の方に視線を向けた由起の目に、真っ青な美しい海が映った。

「海だ!」

そう言うと窓に駆け寄り海を眺める由起。

部屋の窓から見える東京湾には大きな船が浮かんで見えた。


ちょっと前の喧騒を忘れて海に魅入る由起。

由起の美しい横顔が5月の清々しい光に輝いていた。













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