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距離が縮まるきっかけなんて、ちょっとしたことだよね?いつもさ

弁当箱を間違えたことがきっかけで冬威と由起の距離が縮まる。

春の日差しは暖かかったけど空気はまだキュッと冷たい。

ふたりの距離はどうやって縮んで行く?

「ん? ライン?」

寝ぼけ眼の俺はベッドの上で携帯電話を手に取る。

ラインの着信音で目を覚ました。


『おはよう^_^お弁当箱間違え持って行ってる見たい。今日学食チャイナで12時に待ち合わせて交換しよ。由起』


「弁当箱? そっかあの子隣にいたっけ。俺そそっかしいからな。悪いことしちゃたな」

そう独り言を言いながら起き出し着替えていると階下から名前を呼ばれる。


「冬威〜あんたこれ誰のお弁当箱?」

「間違えて持って来たみたいだよ。今ラインが来た」

そう返事をしながら階下のキッチンに向かう。


「もうオリエンテーション終わったんでしょ? じゃあお弁当箱にお菓子でも入れておくから女の子には何かご馳走してあげなさいよ」

そう母に促される。


「なんで女の子ってわかんだよ?」

「こんな可愛らしいお弁当箱女の子に決まってるでしょ?」

呆れたように言う。


「ってかキティちゃんの弁当箱なんて俺に持たせるから間違えんだよ? いくら俺がそう言うの気にしないからってもうこの年だよ?」


「なんか文句ある? いいじゃないキティちゃん可愛いいんだから! だいたい1人くらい私に似た可愛いい女の子がいれば良かったのよ! ってあんた早く可愛い彼女でも連れて来なさいよ! そしたら可愛いい服着せたり楽しむんだから!」


「バカらし、ごめん。そう言うのあんま興味ないから期待に添えそうにないよ。それにさ、あなたにはちゃんと娘もいますけど?」


「あら? そうだったっけ? それはそうとそんな長い髪してるから彼女の一人も出来ないのよ!」

そう言いながら髪を引っ張る。


「痛いって! もうガッコ行くよ」

「朝ごはんは? あっ、ほらお弁当箱持って! あんた達も早く起きないと遅刻するわよ〜」


と二階の姉妹に向けて叫ぶ。


春から大学生にもなったのに、なんら変わらない日常。


別にたいして期待していたわけではないが少し拍子抜けな感じだ。


それにしても、弁当箱間違えるとは、悪いことしたな。

12時に学食ね。

忘れない様にしないとな。


ラインの相手は由起? だったな。埼玉から来てて一人暮らし。一人暮らしか‥羨ましい様なめんどくさい様な。


色白で小柄な子だったな。

そんなに目立った美人じゃないけど綺麗な女の子だよな。


だいたいうちのガッコ内部生は金持ちの娘多いから派手なんだよな。


由起ちゃんは素朴な感じで好感持てるよな。


電車に乗りガッコへ行く。

高校時代とあんま変わんない。


なんとなく由起のことを考えながら午前中の講義が終わる。


「学食か、12時だったよな?」

由起の弁当箱を持って学食に向かう。

学食の柱のところで待つ。


10分、20分と時間が過ぎるが由起は姿を見せない。

あれ? なんだろ? すっぽかしか?

念のためラインを見直す、


そんな事を考えていると遠くで自分の名前を呼ぶ声がする。

「冬威〜何突っ立ってんだよ?」

声の主の方へ向かう。


「平出、待ち合わせしてんだけどさ」

そう言いながら携帯をテーブルの上に置く。


「なんだ? 由起と待ち合わせか?」

「なんでわかんの?」

言いもしないのになんでかと訝しがっていると


「ラインに書いてあんじゃん」

冬威の携帯をかざす平出。

「勝手にみんなよな〜。ってかいつの間に取ってんだよ」

「冬威案外ボーっとしてんだな? だから弁当箱間違えんだよ。ってか学食チャイナはここじゃなくてあっちだぜ?」

平出が指差し示す。


「マジ‥サンキュー助かった。行って来んは、ってか携帯返せ」

平出から携帯を奪い返すと待ち合わせ場所に移る。


程なく待ち合わせの場所に着く。

由起が学食の隅に立っていた。

「ごめんね、違う学食で待ってた」

「遅いからすっぽかされたと思ってた‥ライン既読スルーだし」

少し恨みがましく言うが顔は怒っていない様だ。


「ごめんごめん。俺そそっかしいからさ、あっこれ弁当箱」

そう言って由起に手渡す。

「ありがと、これ冬威の。キティちゃんのだからなんか間違えちゃったみたい。ごめんね。でも‥キティちゃん可愛いい。私も大好き」

そう笑いながら言う。


「だろ? うちの母親も大好きでさ、参るよ。あんたの子は男の子ですよって教えてあげてよ」

「冬威、髪長くしてるからじゃない?」

「これは色々意味があんの!」


「意味って?」

「内緒内緒〜」


そんなやり取りをしながら互いの弁当箱を手に持つ。


「あれ?」

二人同時に声を上げる。


「なんか弁当箱重いけど‥」

「お弁当箱にお菓子入ってる」


「お菓子はお詫びにって母親がさ。それよりこっちは?」

「冬威、お弁当箱ないと困ると思って作ってきたの…ごめんね勝手に」


「勝手にって、ごめんね。大変だったでしょ?」

「自分の分と一緒だから全然平気! 美味しいかわかんないけど‥」


「ありがとう。うれしいよ! ってかもう食べた?」

「冬威待ってたからまだだよ! 冬威は?」


「まだだし、朝飯食べて来なかったから腹ペコ」

「良かった! じゃあ一緒に食べよ?」

そう言うと冬威の手を引いて学食を出る。


「ってどこ行くの?」

「体育館の横にベンチがあって日差しが避けられるとこあるの」


「そんなとこあるんだ」

「お昼休み終わっちゃう! 早く行こ」


足早にキャンパスを歩くふたり。

春の日差しは暖かかったが、まだ空気はキュッと肌寒かった。

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