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って冬威? そゆこと平気で他の女の子にも言ってるんじゃないの?

由起の手料理を食べてご満悦の冬威だったが…

由起の部屋で手料理をほうばる冬威

ふたりともとてもリラックスした雰囲気だ。


「ごちそう様~! うまかったよ由起! うっ腹いっぱい」

「おいしかった? よかった~。でもよく全部食べたね?」

由起の手料理を平らげた冬威は椅子の上で満足気だ。


「いや、この量はちょっとどうかな? って思ったけどあまりに美味しいから全部食べちゃったよ~」

「うれしい! 冬威って食べさせ甲斐あるよね。由起また作るから食べに来てよね?」


「もちろん! こんな美味い手料理食べられるなんて幸せだ~。由起のママきっと料理上手なんだろうね?」

「ママお料理上手よ! ママのお手伝いして由起は覚えたんだもん。初めはお手伝いめんどくさかったけど…やっぱり教わっておいて良かった~」


「今時、男も料理くらい出来なくちゃいけないけど、やっぱり料理できる女の子って良いよね? ちょっと小腹が空いた時とかにさ、そんなに手の込んだものじゃなくてもぱぱっとちょとした物作って出してくれると感動するもんね~」


「そうそう~わかるわかる~そう言う子って良いよね~。って、ん? …なんか引っかかるな? …冬威? 小腹が減った時に、ぱぱっと何か作ってくれる子って…誰の事?」

冬威に褒められ上機嫌だった由起の顔つきが変わる。


「えっ? 誰って…あれだよあれ…ママ?」

突然振られて困惑した冬威が苦し紛れに言う。


「ママって…冬威ママって呼んでるの?」

「勘弁してよ由起~この年になってママってそんなわけないじゃん~ハハッ…って、あれ?」


痛いところを突かれ自らの言い訳を否定してしまい乾いた笑いでとりあえず誤魔化そうとするが、そんな自分に自分ですら違和感を感じざるを得ない冬威。

「だよね~じゃあ誰?」

そして由起の追撃は終わらない。


「いやだから何て言うの例え話し…的な? 誰と言う訳ではなく、強いて言うならば由起っ…かな? ははっ」

「…」

無言で冬威を見る由起。


「なんか怪しい…冬威のことだから他の一人暮らしの女のこのところでもこうやって手料理作ってもらって同じ事言ってるのが目に浮かぶんですけど…」

由起の目が冬威のちょっとした変化も見逃さないと言わんばかりに鋭くなる。


「そん…なことないさ~って…ははっ、『そんなことないさ~』って、あの沖縄出身の屋嘉比って子が良く言ってるよね~。由起聞いた事ある? 沖縄の人のインストネーションって可愛いよね? そう思わない由起? ん?」

冬威は話を逸らそうと必死だがこんな時はだいたい裏目にでるものである。


「冬威…由起は今、そんな事聴いてないんですけど? ん? 屋嘉比って子…確か隣のゼミの子よね? その子のとこで沖縄そばでも作ってもらった? ん? 怒らないから言ってご覧? ん?」

五感を研ぎ澄まし…そればかりか第六感までをも駆使して由起が冬威の疑惑に迫る。


「いやいやなんでだよ? 俺は捨て犬か? 誰んとこでも上がりこんで食べさせてもらってるみたいに言わないでくれよ…」

由起に踏み込まれ焦る冬威だが、ピンチはチャンスとも心得る冬威はテンションを切り返して由起に言う。


「誰んトコでも上がりこんで…? とこって…ベッドの事? 冬威いやらしい! 一人暮らしの女子学生の敵っ!」


「ってなんダヨそれ? 噺家はなしかか由起は? 上手い事言い張りましたな、笑点なら座布団三枚でっせ? 全く、どんなたくましい想像力持ってんだって、思春期の男子顔負けだは! そんで敵っ! ってなんだよ」


「冬威…あとでバレたら怖いんだからね…。由起はさ、ただ冬威は優しいから一人暮らしで滅入ってる女の子と一緒にご飯食べて元気付けるくらいのことしてそうだとな思っただけなんだけどね…」

由起が柔らかく表情を変え急に冬威を懐柔し始める。


「いや、それは由起さんの考えすぎだと思いますよ~」

その手には乗るかと即座に返す冬威。


「ふ~ん…何だかちょっとがっかり…冬威は一人暮らしで心細くしてる女の子の味方だと思ってたんだけどな~由起も助けてもらったし…。ん?」

小首を傾げて可愛らしい顔でなおも冬威を懐柔する。

由起もなかなか強かに男を見抜く術を身につけているようだ。


「そりゃそう言う気持ちが滅入ってる子がいれば俺だってさ…。っていやいや違う違う、そんなたいそうな奴ではないですよ冬威って奴は~」

危うく由起の手に引っかかりそうになる冬威。


「『冬威って奴は~』ってどうして第三者化して自分と切り離そうと必死か? 冬威? 

 ん? 待ってさっき、『考えすぎだと思いますよ~』って言ったね…決して否定はしなかった…という事は…」

まるで犯罪者を追い詰める刑事の様にあらゆる仮説を形成する由起。


「刑事さん~もう勘弁して下さいよ~やってないもんはやってないんすから~」

それを察した冬威がお茶らけて巧みに場面転換を図る。

「…」

しかしそれをも判断材料にしようと見逃さない由起。


「さ~ってと、もう疑り深い由起なんて放っておいて、美味しい料理を食べさせてくれた由起のために後片付けしよ~っと」

重苦しい? 空気に耐えかねた冬威がそう言いながら食器をまとめシンクに運び始める。


「冬威いいからそんなの由起がやるから! ってそうやって自主的に家事をするところもなんか怪しい! うちのパパそんな風に自分からお手伝いする時ってだいたいママに怒られた時とか都合の悪い事突っ込まれた時だからね! 冬威っ!」

由起が冬威の後を追う。


「俺のはそうじゃなくて…美味しい物を食べさせてくれた女の子に感謝の意を表して真心をこめて後片付けをさせていただくだけなのです…」

さっきまでのお茶らけた顔を真顔にし、真っ直ぐに由起に言う。


「もうっ、そおやって男はすぐ都合の悪い事から逃げるんだからっ! 由起は誤魔化されないから!」

「由起そんなに怒んないでよ~。笑ってる時の由起が…一番可愛い…って思うよ俺は」

シンクに近づいてきた由起に冬威が言う。


「冬威…なに急にそんな事言って…ばかっ…」

冬威の突然の言葉に顔を赤らめる由起。


しかし…

「って冬威? そゆこと平気で他の女の子にも言ってるんじゃないの?」

次の瞬間にはまた冬威を攻め立てる由起であった…。


「もう勘弁してくれよ~由起~」

冬威の悲痛な叫び声が由起の部屋に響く…。


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