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人間の尊厳…由起もまじめに考えてみたくなってきたよ…

由起のマンションで『人間の尊厳について』のレポートを作成するふたり…

『人間の尊厳とは、日本国憲法においても保障されており、そもそもこの憲法自体個人の尊厳を遵守することが、基本に置かれている。すなわち憲法第十三条に規定される、個人の尊重(尊厳)、幸福追求権及び公共の福祉についてである。


他方特定の宗教においては人間の尊厳を人間が神に似せて創造されたことで前もって決定されていると考えられている。


古今東西さまざまな賢人哲人によって、人間の尊厳や人が生きる意味または、どう生きるべきなのかというテーマについて論じられてきたが私は人間の尊厳とは、生まれ生きること自体にあると考えている。


それは男女が出会い愛を育み生命が誕生した瞬間から生まれる。


つまり3億個の精子の中からたった一個の受精卵が誕生した瞬間からである。


3億の精子の中から勝者はたった一人。299999999と誕生をかけての死のレース。


勝てば誕生、

負ければ消滅‥


デスレースを制し、なおかつ出産のリスクを乗り越え誕生したのが、すなわち生まれ出でてきた人間なのである。


人間は生まれた瞬間から尊ばれるべき存在なのである。

例え障害を持って誕生したとしてもこの価値観は変わらない。

人間は生まれた瞬間から壮大なレースを勝ち抜いた勝者なのである。


3億分の1の確率を乗り越える。

これは世界経済や世界情勢に絶大なる影響力を持ち、その一挙手一投足が常に注目されるアメリカ大統領になることと同じレベルであると言っても過言ではないだろう。


人は生まれ出た瞬間から誰からも咎められたり抑制されたり軽んじられたりすべき存在ではないのだ。

全ての人間は勝利者として尊厳を持って生きる資格を持つのだ。


ゆえに我々はその意志を勝利者として正しく活用せねばならない義務を併せ持っていると考える。


フランスの思想家パスカルはその著書パンセの中で人間は考える葦だと定義した。


人間は一本の葦にすぎず自然の中で最も弱い者である。

だがそれは考える葦である。

パスカルは人間は孤独で弱いが考えることが出来ることにその偉大さと尊厳があるとした。


我々生まれ出でし者はその尊厳を高らかに謳うとともに意志を持つ尊厳ある存在として正しく考え表現していく義務を持つ存在であると考える。


人間の尊厳とは、意志ある存在としてその権利を正当に行使しまたその義務を良く果たすことにある。』


学生番号 901262 冬威


「…冬威? これがインパクトってこと…?」

冬威と由起は講義を終え由起のマンションで倫理学の課題であるレポートに取り組んでいた。

書き終えた冬威のレポートを読んだ由起は呆気にとられているようだ。


「そっインパクト! って言ってもこれは本当に俺がいつも考えていることだけどね。人間ってさ生まれてきた段階で誰にも軽んじられることのない勝者なんだよ。頭が良いとか悪いとか、顔が良いとか悪いとか健康だとか障害を持っているだとかそれから…金持ちだとか貧乏だとか、そんなのは問題じゃないくらい根本的に称賛されるべき存在なんだってね」


「ふ~ん…冬威って…こんなこと考える人だったんだ…意外。それにしてもちょっとエッチじゃない?」

由起がちょっと言いずらそうに指摘する。


「エッチって? そんな風に考える由起の方がエッチなんじゃないの~」

「由起はエッチじゃないって! 冬威これ教授に怒られるんじゃない? 女の教授だし…」

由起が心配げに言う。


「怒られる? どうして? 別にふざけてないし自分の考えを真摯に述べてるだけだろ? それで怒られるんならそれは尊厳を傷つけられたってことで抗議しなくちゃね?」


「抗議ってあの教授に?」

「そうだよ、学生だろうと教授あろうと尊厳を損なわれればそれに対して行動を起こさなくっちゃね? 学ぶ側、教える側で立場は違ってもそれは相手の考えを押しつぶす力を与えられていることとは違うからね。ってそもそもそんなことが許されるなら人間の尊厳何て言うのは根底からないんだよ」


「そう言う物なの…。人間の尊厳…由起もまじめに考えてみたくなってきたよ…」

「由起はちゃんとわかってるじゃん?」


「どうして? 由起は良くわかんないけど…」

「そんなことはないよ? 由起は不当な暴力にノーを突きつけて闘った。そしてそれに対してきちんと行動して解決に導いた…これは自分の尊厳を守った尊い経験だと思うよ。考える事…つまり思考することと行動することこの二つがかみ合って初めて物事が動く。つまり世界が変わっていくと思うんだ。思考、熟考することはとても大切! だけど正しき考えに基づいて行動することはもっと大切だって俺は思っているよ」


「由起は何も行動していないよ…冬威に助けてもらっただけ…」


「違うよ? 由起の意志が俺を動かし事態に変化を及ぼした…これは直接由起が行動したのと同じだよ。例えば、政策を考える政治家がいて、その政策が施行される。だけど実際に運用するのは行政だったり企業だったりするんだけど、それによって社会が変わる訳じゃん? この場合政策を実行に移した政治家は直接手を下していなくても行動を起こしたのと同じだけの意味を持っていると思わないかい? 今回の由起の問題解決の手法も同じようなものだと思うよ。考え行動することに意味がある。行動は何かを変えるよ。表現し行動することがとても大事なんだ」


「なんか難しいよ…冬威? でも…由起にもなんとなくわかった。考え行動することの大切さが…由起も尊厳を持って自分を変えられたんだって思うとなんだか誇らしくなってきた」


「そうさ! それが重要。もっと自分を認めなきゃね。うぬに惚れなきゃ誰が惚れてくれる? 自分を認めて自分を好きになれない様じゃ他人なんて好きになれないさ。自分のことも愛せない人が自分以上に未知の存在である他人なんてとても愛せやしないよ? 自分を認め自分を愛することから全てが始まるんだって俺は思うよ」


「冬威…?」

「ん?」


「女の子の部屋でこんな意味深なレポート書いて愛について熱く語っちゃったりしたり?」

「ん?」


「これはもう…由起が変な勘違いしても冬威にも責任がありますね~」

「変な勘違い?」


「そうっ! 由起は愛についてお勉強しま~す、冬威に師事してね…」

「師事って…俺は落語家の師匠か! 生憎弟子は取ってないので」


「もう遅いから、もともと押しかけだけどこれはもう冬威にも責任が生じましたね~」

「なんの責任だって?」


「尊厳を持ってその行使と義務を? なんでしょ?」

「ま、まぁそうだけど…それとこれとは無関係だよね?」

 

「いえいえ…由起は冬威に教えてもらってお勉強しちゃいましたから。冬威にはきちんと由起に権利と義務を行使してもらって、尊厳と愛についてたゆまなく思考し行動していただきますから? 覚悟してね?」

「って全然わかってないじゃん? 俺が言ってたことと全く論旨が違うっての?」

「わかってないのは冬威、だ・よ? わからないから冬威が由起に教える義務があ・る・の!」


「それは…詭弁って言うんだよ?」

「詭弁でもなんでもいいの! 由起にちゃんと行動を伴わせて教えないと由起は一生泣くから!」


「なんだよ最近女の子良く使うけどその一生~っての?」

「な・ん・で・も・い・い・の! だいたい夕べ冬威が由起を放って帰っちゃったからあのあと由起は一生泣いてたんだからっ! 冬威はこんなか弱く儚げな女の子が一生泣くのを良しとするような非情で非道な人じゃないよね?」


「ってなんだそりゃ? か弱く儚い女の子はつねったりするのかよ?」

「可愛い女の子の嫉妬攻撃でしょ? 光栄に思って一生!」


「また一生かよ?」

「そうだよ~。冬威? 由起の一生攻撃は一生続くから…か・く・ご・し・て! ね?」


「それよっか由起? 早くレポート書いたら? 全然書いてないじゃん? 一生終わらないよ?」

「あ~全然なに書いて良いかわからない~一生終わらない~。ん? ってことは冬威? 一生夕食食べられないよ?」 


「早くレポート書きなさいって…」

「手伝って? エヘっ」


この後、冬威が夕食にありつくために由起のレポート作成に手を貸したのは言うまでもない…。




 







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