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聞いた、聞いた~? 千秋ちゃん? 由起って嫌な性格してるよね?

由起と冬威と千秋の講義前のじゃれ合い絡み。


講義が始まる前のひと時。

講堂の最前列に座る冬威、由起、千秋。

千秋が冬威の後輩であることを発端にそれぞれの想いが交錯する。


「由起が冬威に嫌味なんて言うわけ…って言うかもしれないって言うか言うと思うけど~」

「なにを言ってんの由起?」

冬威が茶々を入れる。


「冬威が浪人生ってことは由起より1歳年上ってことでしょ?」

「まぁ二浪三浪なら話は別だけど?」


「え? 冬威、三浪なの? とすると三つも年上…」

「聞いた、聞いた~? 千秋ちゃん? 由起って嫌な性格してるよね? 言うに事欠いて冬威、三浪扱いされたよ~ひどくな~い?」

「可哀そう…冬威君…一浪なのに…」

「千秋ちゃん千秋ちゃん由起はそんなこと言ってないでしょ? 冬威ってちょっと読解力おかしいから~ 」

「ちょっとちょっと聞いた~千秋ちゃん! ひどいのよ由起ったら冬威の頭おかしいとかゆって~」

「冬威君可哀そう…そんなに頭悪くないのに…」

「冬威…またお姉になってるよ? って千秋ちゃんスルーなとこ見ると前からやってたね? お姉キャラ?」

3人が一斉に笑い出す。


そんな様子を講堂の後ろの席から見下ろす大野。

「フッ冬威、なんか楽しそうだな」

「大野さんあいつですよ今日校門のところでもめてた奴! 俺遠目から見てたんすよ!」

大野の隣に座る男が冬威を指さして言う。


「ってなんでお前は俺のことさん付けなんだよ? タメだろ?」

「あ、いや何となく…この世界強い人が上ですから…。大野さんある意味ご法度っすけど半月もたたないうちに上みんなに一目置かれるって言うか勝っちゃうし。でも大野さんあいつ目つぶしかますは金的きめるはかなりやばいっすよ?」


「だろうな、今のお前じゃ絶対勝てないよ」

「まさか素人相手に負けないっすよ。大野さんあいつのこと知ってるんですか?」


「前に駅で工業高の奴らと揉めただろ? 俺と同じ連中と冬威は揉めてんだよ?」

「あいつ冬威って言うんすね」


「おまえも覚えといたほうがいいぞ? あいつ朝、蘇我駅で工業高5人とやり合ってさ、帰りのホームで20人くらいの工業高生がたむろする中に平気で入って行って…」

「どうなったんすか?」


「飄々と連中の真ん中に入って行ってベンチで目えつぶって腕組みして笑ってやがった…そしたらよ…」

大野が小さく笑い出す。

「工業高の奴ら気味悪がってさーっとあいつの周りから離れてやんの! 俺は上り方面だからよ向かい側のホームにいて何かあったら割って入ってやろうって見てたらさ、聞こえんだよ工業高のやつらが言ってんのが。『あいつ笑ってやがる…やばくね? 気持ち悪りい』ってよ」

「ハハッ冬威って奴かっこ悪りいですね」


「お前バカか? あいつは20人相手にはったりだけで戦わずして勝ってんだぞ? お前さ、孫氏の兵法って知ってるか?」

「知らないっす…」

「だろうな…。お前が何のために格闘技やってるのかは知らないけどよ…俺は…そう言うことだと思うわけよ」

「そう言うもんすかね…」


俺は知ってる冬威がどんな奴なのかを。

この間の関東大会で冬威と同じエリア出身の連中に試しに奴の名前出してみた。

あいつがただのハッタリ野郎かどうか知りたかったからな。

『あいつが動くならうちは全員動くよ…あいつが今まで何をして来たか俺達みんな知ってるからな』

それなりの奴らが口をそろえてそう言った。


なにがあったのかは誰も語らなかったし、たぶん冬威に聞いたところで、『そんなの知~らな~い』だろうが…な。

「冬威に何かあったらうちも動くぞ…あいつの顔よく覚えとけよ」

そう言うと大野は返事も聞かずに講堂を後にした。


由起がむきになって冬威に食ってかかる声が講堂に響いた。

「冬威!ちゃんと聞いてって!」

「由起? もう授業始まるから静かにしてくれたまえ…」

「冬威君、授業中マジメだから…」


「もう! まだ始まらないよ! 由起はね三姉妹なの! 昔っからお兄ちゃんが欲しいって思ってたの!」

「千秋ちゃん? 由起ってお兄ちゃんが欲しかったんだって~じゃあ千秋ちゃんも妹ね~」

「冬威君の妹…いっぱいですね」


「ちょっとちょっと由起を外さないでって! 冬威、由起の言うこと聞いてる?」

「ハイハイ由起ちゃんは冬威の可愛い可愛い妹ですよ~。千秋ちゃんもね~」

「はい…冬威君の妹です」


「冬威~由起は妹じゃないっ!」

「…由起は一体どうしたいんだよ?」

「冬威君…由起ちゃんは冬威君が年上で良かったって言ってるんだと思いますよ?」


「そうなの千秋ちゃん? もう由起ってわかりずらいよね~」

「冬威君…由起ちゃんそんなにわかり辛くないです。むしろとても素直です」


「そうっ! それが言いたかったの! 千秋ちゃん大好き! それに由起のことわかってくれてる~。もう由起の気持をわかってくれてうれしい~って教授来ちゃった…ここからが言いたいことの本番だったのに…」


講堂に静けさが戻り冬威が講義に集中する。

冬威の横にいる由起、千秋も同じように最前列で冬威と時を共にする。

 





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