盗賊皆殺し短編 センエース~~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~~
ここは、深い山の奥に築かれた要塞(巨大な盗賊団のアジト)。
その中央にある広い訓練場に、五百人近い盗賊が拘束されて転がされていた。
拘束された盗賊団の頭は、自分を見下ろしているシグレに懇願する。
「頼む。助けてくれ」
神からチートをもらい異世界に飛んだ女子高生『田中シグレ』は、経験値稼ぎのために、山の奥で要塞を築いていた大規模盗賊団を襲ったのだった。
テンプレだね♪
「頼む。命だけは――」
「それを言われて、あんたは誰かを助けた事があるん?」
鬼のように綺麗な顔をした黒髪の女子高生シグレに、そう問われて、ごつい顔をした盗賊団の頭が答える。
「ぁ、ああ……ある、あるさ」
「なんかい中、なんかい?」
「……じゅ……十五回中の……じゅ……十二……回くらいだ……」
「ふぅん」
「頼む、助けてくれ。あんたの命令はなんでも聞く。絶対に裏切らねぇ。裏切れる訳がねぇ。あんたは……あんたの召喚獣は強すぎる……あんたは最高だ……美しく、強い……あんたに提案なんだが、ぜひ、俺らの頭に――」
「なんでも言う事を聞くんか。ほな、一個、命令。『あたしにウソをついたら永遠に死以上の苦痛を感じ続ける』っていうアリア・ギアスを自分にかけてくれる。……あ、『沈黙はウソとみなす』っていうルールもつけてな」
アリア・ギアスは、簡単に言えば、『自分への誓い』。
『破れない約束』と捉えてもらっても構わない。
「そのあとで、もう一回、さっきと同じ質問するから。ちゃんと同じ事を言うてな」
「……」
「沈黙は嘘やとみなすけど、ええの?」
「く……クソアマがぁ! 死ね! 死ね! 死ね! 地獄に堕ちろ!」
「はぁ……もうキレるん? なんで、そう簡単に投げだせんの? 自分の命やで? これやから、盗賊やるようなカスは……」
「てめぇは、俺を甚振るのを楽しんでいる! つまり、てめぇも俺らと同じだぁ!!」
「いたぶる? あんた、今、苦しいん? その理由は? なんで苦しいん? あたしは質問をしただけやで」
「……」
「もうちょっと考えてから発言しようや。今のあんたは、あんた自身の業に苦しんどるだけ。それやのに、なんで、あたしがあんたと同じになるん。破綻してるで」
「……」
「あと、あたしは甚振ってるんやない。あんたらを殺さんですむ手段はないかなぁって考えてるんや。知ってる? 人の脳って、三分の一くらい、爬虫類の脳なんやて。どういう脳か、簡単にいうたら、『やりたくない事』を『やらんでもええ理由』を必死に探す脳。今のあたしは、あんたらを殺さんでええ理由を探してる。『レベル上げのエサ』が『あんたらやないといかん理由』とかないから。……できれば、人とか殺したないねん。あたしも一応、日本人やからなぁ」
「……」
「でも、あかんな。あんたらを殺さん理由がない。放っておくんは無責任とも言えるし、殺せば経験値が入る。少なからず、あんたらの鬼畜な行いに憤ってもおるし、このまま見逃して変に恨まれて復讐されるんもイヤや」
「絶対にしない! 誓う! 悪行からも足をあらおう! 『今後、悪事はできなくなる』というアリア・ギアスをかけろっていうなら今すぐにかける!」
「とにかく生き延びて、解除の方法はあとで探そうって?」
アリア・ギアスは、破れない約束。
しかし、面倒な手続きを経れば、解除できないこともない。
「ええやんか。そうやないといかんよな。命は大事や。簡単にキレたりせず、あがいて、もがいて、必死に守らなな」
「……頼む……」
「少しは反省したみたいやな」
「ああ、反省した。だから――」
「よし、ほな、死のか」
「……ぇ」
シグレは、
「大丈夫……出来る……人も虫も変わらへん……そもそも、相手は山賊……ただの鬼畜……人間やない……できる……大丈夫……殺せる……うん」
何度も口にしてから、グっと両の拳を握りしめる。
「待て、待てぇえ!! 頼むぅ!」
「ああ……流石に、手は震えるなぁ……これは、まあ、しゃーない……慣れていこう。すぅうう、はぁああ……今から人を殺すんかぁ……ぁあ……普通にイヤやなぁ……」
「じゃあ、やめろ! 反省したって言ってんだろ! 頼むから!」
「法律的にも大丈夫。山賊は殺しても違反やない。こいつらは悪。何の罪もない女が何人もさらわれて犯されて残虐に殺された。さっき見た子を思い出せ。グチャグチャに甚振られとったあの様を……素数は数えんでいいから、こいつらに壊された人間の数だけを数えろ……あたしも、一応、殺されそうになってる。うん……いける……」
シグレは、『ニー(シグレの召喚獣。スライム。神様からもらったチート)』に猛毒を付与してもらったナイフで、
「やめろ。やめろぉお!」
男の手に切り傷をつけた。
すぐに、男の肌が紫色に変わっていく。
「うぅ……うぇ……うぷっ……うぉ……――」
ピクピクとけいれんしはじめて、泡をはき、
「――」
最後には動かなくなった。
「死んだ……あぁ、ついに、人を殺してもうた……やっぱ、精神的にしんどいなぁ。……ぃや……ぁあ……実は、そんなでも無いかな……」
ふぅうっとため息をついて、
「うん、『やってもうた感』はあるけど……そんなしんどいかって言われたら……ぶっちゃけ、そうでもないなぁ……あたしがおかしいんか、そんなもんなんか……んー、判断に困るとこやけど……まあ、ええわ。あたしがおかしいって事でも別に問題ないし。『やっぱり殺せへーん』とか泣き崩れるとかよりは全然ええ」
「あ、でも、これって、ニーが殺した事になるんとちゃう? 九割九分、ニーの毒のおかげなんやけど」
質問を受けると、シグレの頭の上に乗っている、かわいらしいスライムが答える。
「その山賊の死に触れたのは、シグレだよ。だから、EXPは、シグレに入るよ」
「死に触れる……か。まあ、よぉ分からんけど、それならええわ」
言いながら、シグレは、ふっきれたように、次々と、山賊の腕に、毒ナイフで傷をつけていく。
「ぎゃああ!」
「うぇっ」
「うぉ……」
「がはっ……」
紫になってバタバタと倒れていく山賊を尻目に、
「なんか……ものすごい速度で、『殺人』に対してマヒってきたな……やっぱり、アレやな。大事なんは『関係性』やな」
流石に『鼻歌まじり』とはいかないが、『人を殺す』という行為に、さほど『重さ』を感じなくなってきた。
「ニーは魔物やけど、あたし、ニーを殺すんはちょっと無理や。叔父さんはどうかな……一応、生きていくためのゼニは出してもろうたからなぁ……殺すんは無理かなぁ」
シグレの伯父は、シグレに対して、一切、愛情を示さなかった。
『かたくなに愛されてない』という仕打ちを、『暴力的』と捉えた事もある。
だが、事実、金は出してもらえた。
金は大事だ。
命よりも重い。
「……『神様』も殺したくはないなぁ。『百パー不可能』っていう前提は置いておいて、まず、色々と世話になったし……考えてみたら、あの神様は、あたしの夢、『異世界モノの主人公になりたい』を叶えてくれた大恩人やし……」
シグレは、イカれた人間だった。
心から、本気で、『異世界に飛ばされたい』と願っていた変人。
神(本編の主人公)は、そんなシグレの願いを叶えてくれた。
それだけではなく、『ニー』という、素晴らしいチートまで与えてくれた。
ここは、平均レベル15の中級異世界。
最強の力を持つ『勇者』でも、レベルでいうと『70』前後しかない。
対して、『ニー』のレベルはというと、『5000000000』を超えている。
『レベル50億』オーバーという、神性能を持ったスライム。
それが、ニー。
圧倒的、チートっっ!!
「だいぶ、減ったなぁ。300人くらいは殺したかな? ……なあ、ニー、どう? あたし、レベル上がった?」
「うん、上がったよ」
「こんだけ殺したんやし、だいぶ上がったんちゃう? あたしのレベル、なんぼになった?」
「6になったよ!」
「1しか上がってへんやないか! どんだけ、レベルあがるん遅いねん! てか、あたし、ほんま弱いな!」
――この作品の本編は、ニーすらゴミに思えるほどの、イカれた強さを持つ『神(主人公)』が、その圧倒的な『最強』で無双する物語。
日本人(シグレとか、他にも)を召喚してチートを与えたり、
世界を裏から支配しようとしたり、
いろいろと、なんやかんやしながら、最後には神を殺す物語です。
読んでくださってありがとうございます。
ぜひ、本編も読んでください。
本編は、シグレにチートを与えた神様が主人公をやっています。