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□第八話

 ドク…ドクッ…ドクッ


 心臓の音が聞こえるぐらい。咲哉は緊張していた。

 今日は実は初デート!!(咲哉自身がそう思ってるだけだけど…

 蓮と二人きりで。

 さっきまで二人でいたんだけど、蓮が支度してくると言って一旦別れたのだ。

 友達として咲哉として遊びに行くのよくあったけど、駅前の噴水で待ち合わせ。

 本当のデートみたいだぁ!!

 ドキドキしずぎて、本当に心臓が飛び出しそうだ。


 まだかな?蓮……


 時計を見ると、待ち合わせ時間まであと5分。

 多分あと5分で来ないと分かっているけど、ドキドキしてしまう。


 実は蓮は約束の時間に、絶対と言ってこない。

 俺との約束の時間、一回だって守ってくれなかった。

 でも、約束の日は絶対来る。それだけは、確かだ。


「蓮……」


 自然に蓮の名前が出てしまった。

 うわぁ……。なんかすごく恥ずかしい……。

 早く来てほしいと言う気持ちと、ちょっと待ってっ!心の準備が整ってから来てという二つの想いが交差する。

 まあ、どっちにしろ来てほしいものは来てほしいのだけど……。


 ドク…ドクッ…ドクッ


 ドキドキが速くなってくる。

 

「蓮………」


 もう一度彼の名前を呟いた。その瞬間誰かから肩を掴まれた。


「ギャーーーーーー」

「煩いな…大声で騒ぐな」

 

 えぇ?蓮?

 俺は正直に驚いた。時間どおりに、性格には時間よりも早く来た。

 やっぱり女の子に優しいのかぁ?

 友達の俺にはいつも時間破るくせに……。

 そう、自分に嫉妬しながらも、早く来てくれたことが嬉しい。


「ごめんなさい……。突然だったので驚いて……それで……」


 ゴニョゴニョッと言うと、蓮はなぜか納得したように頷く。


「そうか、それは悪かったな。何か背丈が親友と似ているから、手を置きやすくてな」


 はい…。はっきり言いますと。

 本人ですっっ。

 女の子になっても、やっぱり中身が同じだから、扱いまでもが同じになってしまうのだろうか。

 それにちょっとショックを受けてみたり……。

 ちょっとした俺の変化に気付いたのか、蓮は話を進める。

 

「じゃあ、行くか?えっと桜子さん?はどこに行きたいんだ?」

「えっと、遊園地です」


 デートの定番と言えば遊園地!!

 遊園地と言う言葉を聞いた蓮は、限りなく嫌な顔をした。

 

「あの……駄目?ですか?」


 蓮が遊園地が嫌いなのは知っていた。

 でもどうしても行きたかったのだ。遊園地に蓮と二人っきりで。

 葵に習った、上目遣いで何とか迫ってみる。

 上手くいくのか、俺的に心配だったが。


「………分かった…。少しだけだからな」


 どうやらのこの作戦は成功したようだ。

 その言葉に笑みがこぼれる。


「じゃあ行きましょうか」


 近くにある遊園地の名前を言ってそこに行こうと歩き出した途端、蓮は目を輝かせた。

 どうしたのかと問うと、嬉しそうに蓮は言った。


「此処から走って行くぞ」

「……へぇ?」


 何を言い出すかと思えばそれですか!?

 

「走る練習になるし、ちんたら歩いても寒いし」


 ───蓮さん……もう少し雰囲気考えません?


 男女二人っきりなんだから、ちょっとくらい甘い雰囲気になってもいいと思うんですよ……俺的に。

 咲哉はすっかり桜子になりきっていて、大事なことを忘れていたんだ。

 蓮は走りたがり屋だということを……。

 何処に行くにしても走って行った気がする。映画の約束をするときは、大抵蓮が遅れてきて、映画の時間に間に合わないと走ったり。

 その他に、学校に一緒に行く時だって、蓮が遅れてきて遅刻しそうになり走ったり……。

 

「ほら、行くぞ」


 気は乗らないが、走って遊園地に行くことになった。

 走って行くスピードが速すぎて、蓮に追いつかない。


「蓮さん…待ってぇ…」

「何ちんたらしってるんだよ。早く来いよ」


 追いつかない俺を見て、蓮は楽しそうに笑った。

 俺がスカートをはいていることもあるけど、それ以前に蓮がマジに走っているからだと思う。


 ───蓮。女の子に振られる理由はこれだと思うよ……。


 咲哉は自分が蓮に恋しているのも、どっかに置いておいて、自嘲気味に笑った。

 

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