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□第七話

次の日……



「おはようございます」


「あぁ。おはよう。今日も来たんだな」


咲哉は今日も公園に来ていた。そこには蓮がいて。


「はい。私も冬休みは何をしていいのかわからないもので……」


「そうだよな。勉強なんてやってられねぇーよ」


いつもと同じ蓮だ。

そう思うとなぜか笑みがこぼれた。


「何笑ってるんだよ?」


不機嫌そうに蓮は言った。


「別に何でもないですよ」


「そうか?まぁーいいけど」


照れくさそうに頭をかく姿がカッコいい。

いつも見ていたけど、立場が違うとこんなにもドキドキするんだなぁ……。

咲哉は女の子になったことで違う視点で、蓮を見ることができた。

蓮は俺の正体なんぞ知らない。

――それでいい。

咲哉としてじゃなくて、桜子としてみてくれれば。


「蓮さんは、この冬休み何か予定ってありますか?」


「あぁ?そうだな……お正月にばーちゃん家に帰るくらいしかねぇーな」


そう言うと思った。

咲哉はそれを予想していたかのようにニヤリと笑った。


「蓮さん、今日が何の日か知ってます?」


「今日かぁ?あれだろあれだろ」


そう!あれ!

咲哉はその答えに期待する。


「あれだ。キリストの誕生日の一日前」


「と言うことは!!」


「あれだろ?」


「それです!」


「あぁーそっかそっか。やっぱりあれだよな、あれ!!」


一人納得したように、手をポンとたたく蓮。

しかしなぜ蓮はさっきから「あれ」としか言わないんだぁ?


「あれじゃ分かりませんよ?」


そう言うと蓮はあからさまにムッとした。


「お前、意外としつこいな。なんか咲哉みたいだ」


「えぇ?」


その言葉にピクッと反応した。

俺みたい、だって?

まぁーそりゃ俺だから俺みたいなのは当たり前だけど。

何と言うか心臓に悪いな、俺の名前を出されると。俺の正体がばれたんじゃないかって思うし……。

蓮は続けて咲哉の話をする。


「咲哉ってのは、俺の幼馴染なんだけど、インフルエンザにかかったらしくてさ大変なんだとよ」


―――ごめん蓮。

心の中で、蓮に謝る。

しょうがなく嘘をついたけど、やっぱり罪悪感がある。


「まぁ。アイツのことだから大丈夫だ」


蓮は遠くの何かを見るかのように優しく微笑んだ。

あまり見ない微笑んだ顔。

それが無性に嬉しくてたまらない。


「それより、今日はクリスマスイブですよ!!」


そう、今日はクリスマスイブ。

今日はちょっとしたデートに蓮を誘うと思っているのだ。


「何かご予定ありますか?」


「ありました」


………えぇ?

その言葉に咲哉はショックを受けた。

だってさっきなにも予定ないって言ったのに……。

しょげてると、蓮は咲哉を不思議そうに見た。


「何落ち込んでんだ?」


「別に何でもないです」


慌てて咲哉は首を振った。

こんな顔してたら好きだとばれる!!(早とちりだと思うけど)


「で、今日は俺に何か用があったのか?」


「い、いえ。そうじゃなくて……」


「あぁ?」


咲哉が口ごもると、蓮は続きを追求してくる。


そうだった。蓮はこうゆう奴だ。

中途半端ということが嫌いで、何が何でも追求しないと気がすまないたちなのだ。

………うぅ。恥ずかしいけど言ってみなきゃな。。


「あの、今日ちょっと出かけませんか?とお誘いしようと思ったんですけど、先約があるなら仕方ないです」


落ち込んだ様子を見せないようにそう告げた。

すると、蓮は「何だそんなことか〜」とため息をつく。


「俺言ったよな?【ありました】って。元々はあったけど、今はない。だから、そんな顔をするなよ。出かけようか」


蓮は咲哉の頭にポンと手をのせる。


優しくて安心する手。


――暖かい……。

冬で寒いから余計に温かく感じる。

今はこのままでいたいな。




――――ただ蓮の温もりを感じていたかったから。




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