表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

□第九話

「はぁ……はぁ…」

 

 なぜ遊園地行くだけで、息切れしなければいけないんだ…っ。

 と泣きたくなりました。

 何とか遊園地前に到着。


「桜子って。結構足、早いんだな」

「えぇ、あっはい。走るのに慣れていまして…」

「陸上部にでも入っていたのか?」


 お前が毎回、俺を走らせるからだよっっ!!

 と心の中で怒るが、本人は知らず……。


「えぇ…ちょっとですけどね」


 蓮は、そうかそうかと頷いている。

 それより俺的には遊びたいんですけどね…と目を向けるが、やっぱり蓮は気付かず。


「それじゃ、行くか」

「はい」


 やっと本題。

 俺の顔は自然と笑みが浮かんでいた。

 

 初めてのデート(と勝手に思い込んでいる)と言ったらっ、やっぱり・・・

 

 お化け屋敷だろうっっ!!


 勝手に妄想。

 キャーとか言って、ちゃっかりくっついちゃうお馴染のアレです。

 男がそんなこと考えているのか?と恥ずかしくもなるが、今の俺は女だ、と恥を捨てた。

  

「お化け屋敷がいいです」

「お化け屋敷かぁ……分かった」

「はいっ」


 早速お化け屋敷に入る。

 隣の蓮を見てみると、平気そうに歩いてた。


「あの、蓮さんはお化け屋敷って来たことあるんですか?」

「うん?あぁ…お化け屋敷かぁ……ない」


 やっぱり蓮は、こういうところに来たことないんだな。

 勝手に納得。


「あぁ!エレベーターがありますよ」

「ホントだ」

 

 こういうのって大体、エレベーターにお化けが隠れてたとかあるんだよな。

 実は俺、お化け屋敷が好きなので、どこにお化けがいるのか熟知している。

 何度来ても面白いからいいけど、怖いと思ったことが実は一回もない。

 だから、お化けが出てきたときにキャーと言ってちゃっかり抱きつこうっかなと思ってるんだけど……

 どうやら小さな夢は儚く散ったようだ。


「うわぁ……」


 蓮はお化けが出てくる度に変に感動した声が漏れる。

 そんな蓮に俺はくっつくことできず、ただ隣を歩いていた。


 お化け屋敷作戦(勝手に名付けた)失敗?


 はぁ……と溜息をついたときだ。


「ぎゃあっ」


 横から、突然お化けが顔を出したのだ。

 それに驚いたのは俺ではなく、その他の客でもなく、蓮だった。


「えぇっ蓮さん?」

「あぁ…っ?なんでもねぇーよぉっ」


 蓮はバツが悪そうに言葉を投げ捨てる。

 あれ?と視線を下に向けると、蓮の手が震えていた。

 ──蓮。もしかして怖がってる?

 さっきから変に感動してような声を出したのは、怖がっているのを隠すため?

 そう思わざるえなかった。


「あの、蓮さん。大丈夫ですか?」

「はぁ?大丈夫に決まってるだろ!?」


 大きく声を上げるときは、蓮が何か無理をしている時だけだ。

 親友の俺には直観的に分かった。


「大丈夫ですよ。ほら、こうすれば怖くないでしょ?」


 俺は無理矢理、蓮の手を握った。

 すぐに離されるかもっと思ったが、蓮は俺の手を離さなかった。逆に強い力で握りしめてくる。


「悪いな」


 ぶっきらぼうにはなった言葉はきっと照れてるからだ。


「はい」


 ずっとこのまま手を繋いでいたい。

 そう思うのは我儘だろうか?


 寂しそうに彼の顔を見上げると、優しく笑ってくれた。

 この姿になってから、初めて蓮が俺に向けて笑ってくれた気がした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ