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6 イケメン王

よく寝た。たぶん十二時間ぐらい寝てたと思う。

寝過ぎた時のあのけだるさ。あるよね。




目の前にはイケメン王の綺麗なお顔。青い目でじっと私を見ている。

うー。寝顔見るの、やめてよね。

なんかもう、ずっとこの体勢で一緒に寝てるらしいから、今更なのかもしれないけど。

私、王様の抱き枕なの?

今のところホントに抱きしめて一緒に眠ってるだけなんだけど、そもそも若い男女が一つのベッドで眠るっておかしいでしょ!

この国、貞操観念とか薄いの? いくらイケメンで王様でも、よく知らないオトコに身体はやらん!

もし王様が、ガバって襲ってきたら、ぶん殴っていいのかなあ。

正当防衛ってあるのかな。打ち首にならないよね?





「おはよう、キラ。調子はどうだ? どこか痛くないか? のど渇いてないか? お腹すいたか?」


朝からこれですよ。

王様、ちょっと過保護過ぎじゃないですかね?

あくまでも私が痛くないように、優しく包んでくれてる王様の腕をひょいとのけて、私は体を起こした。



「おはようございます、王様。もうだいぶ良くなりました。痛みも、ほとんどありません」

ほら、と両腕を伸ばしてみせる。

私の身体は全身ミイラ状態で、腕にも足にも包帯がぐるぐると巻かれている。

何度かお風呂にも入らせてもらってるけど、傷口に滲みちゃって、とても長湯できそうにない。広くて素敵なバスルームだから、もっとゆっくりしたいのに。

幸い、痕が残りそうな深い傷は腕に2、3カ所。あとは小さな擦り傷や切り傷。

なにしろその数が多いから薬を塗るだけでも大変なんだけど。

これでもずいぶん傷がなくなったって。

どんだけ傷まみれだったの、私。



お腹や背中、足の包帯替えは女の人のお医者さんがやってくれて、腕はなんと、毎日王様がやってくれる。

おいおい、王様にこんなことやらせていいのかよ、私。首飛ぶんじゃない?

違うんですよ、王様がどうしてもやるって聞かなくて!

っていうか、私の意識がモーローとしてる時からずっとやってくれてるらしくて手早いの、なんの!

まあ、王様はやるって言ったらこっちが何言っても聞かないみたい。

王様だもんね。





今朝は昨日よりも品数の増えたすばらしいご飯を食べた。

もちろん、王様と一緒に。食後にはリコの実を剥いて、あーんしてくれる。

自分で食べられますよって言っても王様は聞かない。オレ様だから。

美味しいからいいんだけど。




食べ終わって、食後の紅茶みたいなものを飲んでいると、ノックと同時にドアが開いた。

「アルファ、女神さまが目を覚ましたって聞いたけど」

少し慌てた様子で入って来たのは、マントをした薄い茶色の髪の、メガネの人。


メガネに対する偏見じゃないけど、クソ真面目そう。

歳は、王様と同じくらいか、ちょっと若いかな。

二人とも二十代前半って感じ。その辺の俳優さんよりカッコいい。



メガネイケメンは私と目が合うと、静かにその場で頭を下げた。

「僕は精霊魔法騎士団、総長、キース・ミストニアといいま」

「キース、ちょうどお前を呼ぼうとしていたところだ。こちらへ来い」

王様がキースさんが話しているのにお構いなしでしゃべり出す。


「アルファ、挨拶ぐらいさせてよ。まったく、せっかちなんだから。まあ硬いことはいっか。キースって呼んでね」

「は、はい。私はキラと言います」

「キラちゃんか、よろしくね」

気さくな笑顔を向けられた。


隣同士で座ってる私と王様の正面に、キースは腰を下ろした。

メイドのマアサがタイミングを見計らっていたかのように座ったと同時にお茶を彼の前に置いた。優秀なメイドだなあ。


関係ないことを考えているうちに、王様がキースに昨日私が話したことを説明してくれたみたいだった。

キースはメガネをくいっとあげて、うーんと考え込む。




「異世界、かあ。僕が知る文献では、はっきりとした記述はないかな。

ただ、三百年ほど前に現れた魔法使いでどこからともなく異空間から突然現れたとか、そういう記事はあったね。あと、五十二年前には海を越えた大陸から人を呼び寄せたっていう話もあるね。

他にも、二、三あるけど異世界は聞いたことないなあ。もう一度確認して、何か関連したものがないか、調べ直してみるよ」


すごいな、この人。

頭の中に読んだ本が全部入っているみたいな言い方だったよね。

賢い人なんだなあ。メガネだからかな。



「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をして頭を上げると、目を丸くしてるキースと目が合う。


? どうした? 何か失礼なことした?

首を傾げると、慌てたようにキースが手をパタパタと振る。

「あ、ううん。ごめんね。キラちゃん、先日、見た時とは、ずいぶんと違う印象だから、驚いちゃって」


ああ、そういうことね。この猫かぶりに驚いてるワケね。

私はにっこり笑って返した。


「いえ。よく仲間にも言われるんです。試合の時には別人みたいだって」

「仲間?」「試合?」二人が尋ねる。

部活とか、学校って伝わるのかな?

「剣道、という、えっと、剣術のスポーツを何人かでやっていまして。

練習で一対一で組み合うんです。私は昔から、竹刀・・木の刀を持った時にはすごく集中してしまうので、性格が変わったように見えるようです。

それより、ちょっと質問したいんですが、精霊魔法というものについて」


ちょっと強引に話題を変えた。自分でも上手く説明できないことを深く掘り下げないで欲しい。

つーか戦ってる時と普段と違うって、別に普通じゃない? それって。

ふにゃふにゃして試合に臨まないでしょ。





「精霊魔法については、コイツより詳しい奴はいない。何でも聞け」

にっこり笑って、王様が自信たっぷりに答えた。

何から聞こう。

魔法なんて、ファンタジーの真骨頂だよね。

もしかして、私も使えたりするのかな!? ドキドキ!


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