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番外編 真っ白なドレスと誓いの指輪 4

婚姻の儀は、確かにシンプルなものだった。

日本とかの結婚式とかに比べると、あっという間。

ただ、小さくても一国の王の結婚式だけあって、規模がすごい。

精霊祭の時などイベントに使うステージみたいなところの前の広場に集まった人達は、おそらく全国民。赤ちゃんからお年寄りの人達までみんな、おめかししてズラーリと並んでいる姿はマジですごい。



白で、とだけリクエストしたドレスはメイドさん達と服屋さんが何日もかけてデザインして、縫い上げるのに一月以上かかってる超大作だ。


二人並んでステージに上がると、みんなの目が一斉に注目した。

「みんな、今日からキラはこの国の王妃になる。俺の嫁だ」

アルが大声で宣言すると、「わあー!」と一気に押し寄せるほどの大きな歓声が上がった。


「おめでとうございます!」「やったな、王さま!」「キラ様、きれい!」

「アルファ王、キラ様、ばんざーい!」「お幸せに!」

「おめでとう!」「すてきー!」「おめでとー!」

パチパチパチパチ、拍手と歓声が鳴り止まない。


「リン、手を」

アルが私の手を取り、横に控えているジェイから指輪を受け取り、私の指に嵌めた。

左手の薬指。



「女神、あなたからもアルファに、これを」

ジェイが私にシルバーの指輪を手渡す。

いつも私の傍に影のようにひっそり、でもしっかり護ってくれる私の騎士。

無表情なこの男が、私に向かって微かにほほ笑む。

わお。初めて見た、レアな笑顔。

カメラがあったら間違いなく撮ってる。


「・・・アルファはイイ男だ。あいつと一緒にいれば必ず幸せになる」

「うん」

「これからも、俺は女神の騎士なのは変わらないがな」

「・・・ありがと。頼りにしてる、ジェイ」


しっかり受け取った指輪を、アルのぶっとい指に嵌めた。

アルは慣れない装飾品を珍しげに眺め、手を握ったり開いたりしてみてる。

ニマニマしながら。

指輪は、シンプルなのにやたら輝いてる気がする。

はずかしい、でも、うれしい。



「ありがとう、アル。これから死ぬまでよろしくね!」


勝手に言葉が口から飛び出た。顔も緩んでただろう。

アルは私の顔を見てポカンとして、次の瞬間、がばっと私を抱き上げた。


うっわ、まさかのお姫様抱っこ!!!!


ヤメロ、恥ずかし過ぎて死ぬ!

暴れて抗議しようとして、アルの顔を見た。見たのが失敗だった。

アルはめちゃくちゃ嬉しそうな顔してた。

もう、にっこにこが止められないーみたいな、緩み切った顔。

マヌケな顔のはずなのに、・・・ちょっと、可愛いとかやっぱカッコイイとか思っちゃったあたり、私も脳みそ沸いてきちゃったのかもしれない。


・・・まあ、いっか。

今日は結婚式なんだし。

みんなの前で馬鹿みたいにのろけても許されちゃう日なんだよね。

だったらまあ・・・、楽しんじゃうか。


アルの首に片手を回して、もう片方の手で持っているブーケを上に掲げた。


「みんなー、どうもありがとー!!」


勢いよくブーケを投げる。リボンをほどいてバラバラになるようにして投げた。

別にブーケの意味が違ったっていい。みんなにお礼を言いたかった。




「リィ、おめでと。うれしいナ、りぃが にこにこ、うれしいヨー」

「シルフ! ありがと!」


ふわりと柔らかい風が吹いて、風の精霊シルフが大志の水の精霊アクアと手を繋いで現れた。精霊に歳はないかもしれないけど、見た目は小さい子どものカップルなので非常にかわいらしい。

クスクス笑って二人とも楽しそう。

二人は笑いながらふわりふわりと宙を飛び、手をすうっと前に伸ばした。


「おめでとー」「おめでとー」


その瞬間、花びらが舞い落ちる。雪のように。

それだけじゃなかった。しゅわあっと霧のようなもやが広がったと思ったら、虹が空へ渦巻くように何本も出てきた。


みんなが空を見上げうっとりと手を広げる。

夢のような、信じられないほど幻想的な空間だった。



しばらく魅入っていたら、アルに名前を呼ばれた。

「リン・・・、キラ、リンコ。死ぬまでずうっと一緒だ。愛してる。愛してる、リン」


アルが私にキスをすると、また火をつけたように割れんばかりの歓声が上がった。

たくさんの人達が、笑顔でおめでとうって叫んでくれてる。



・・・こんな風にたくさんの人に祝福されて、好きだって思える人と結婚できるなんて。

私にこんな、未来が用意されていたなんて、過去の私は思いもつかなかっただろう。



私は仲間と笑い合ってる時でも、どこか他人事のように思ってた。

今は、心からゲラゲラ笑える。

私を変えたのは、アル。

それと、キース師匠、ジェイ、ラビさん、マアサ、シルフ、大志・・・、それから、この国のみんな。

この国に来れて、本当に良かった。

戦場のど真ん中に落とされた時には、神様の馬鹿野郎ー!って思ったけど。

今なら感謝の一つでもしてやろうかなって思える。



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