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番外編 真っ白なドレスと誓いの指輪 3

「おおきくなったら、およめさんになるー」とか言ってたクラスメイトの人気者の女子を横目に見て、ケッて内心バカにしてるような可愛くない小学生だった私。

そんな私が、今、なんとウェディングドレスを纏ってこんな・・・、女子の憧れを絵に描いたような王子様と結婚式だなんて、世の中はマジで何が起こるか分からない。


「リンっ!! やはり、お前は女神だな!」

「アルファ様! 乱暴にされるとドレスも髪型も乱れてしまいますわ! お手を出されませんよう!」

何時間もかけて朝からドレスアップした私を見るなり、いつものように抱きついたアルをピシャリと叱ったのはやっぱりマアサ。

「お、おお。すまんな。・・・キスもダメか?」

オレサマなアルもマアサにはたじたじ。

笑っているのに笑顔がコワイもんね、マアサは。

「駄目です。我慢してください。お化粧がとれてしまいますでしょ!

私達は会場の準備に参りますので下がらせて頂きます。時間になりましたらお呼びしますので、ゆっくりお過ごしください。

・・・アルファ様。くれぐれもキラ様に触れませんよう」


パタパタといつもよりも忙しくメイドさん達が下がっていった。

今日は朝から晩まで動き通しだろうな。

明日、街でお菓子でも買って差し入れしようっと。



「リン」

呼ばれて振り向くと、ちゅっとキスされた。

ビックリ。

「ちょ、アル。ダメって言われてたでしょ!」

「こんなにイイ女が目の前にいて、それはないだろ。ほら、来いよ、俺の女神」

装飾盛りだくさんの衣装でキメたアルは、いつもよりキラキラ感のアップしてる笑顔で、ソファに座って私に手を伸ばす。

いつもながらにクサいセリフも今日はハマりすぎてる。


「婚礼の儀が始まれば、みんなの前でにこにこ笑って手を振って、お前はこの国の王妃になる。

でも今は・・・俺だけのリンだ。そうだろ?」

ちょんと私の手がアルの手に触れると一気にぐいっと引っ張られる。

バランスを崩した私はアルの膝の上に倒れ込み、そのまま抱き込まれた。


「愛してる。リン。戦場で剣を振るうお前も、舞を踊るお前も綺麗だが、今日のお前は一層美しいな」

甘過ぎる言葉と共に落とされる、キス。


「ちょっと、ア・・んっ」

キスは触れるだけのものからすぐに深いものになり、焦った私は拳に力を入れた。

「ちょ、ちょーしに・・」下から拳骨を繰り出す。「乗るな! 馬鹿ッ!!」

「ぐはっ!」

腕の力が緩んだ一瞬の隙に立ち上がり、距離をとる。


「ははっ。やっぱりリンはサイコーだな」

イケメンは殴られても顔には怪我しない決まりがあるのか、アルは顎をさするくらいで王子っぷりは変わらない。

それどころか、かなり痛かったはずなのに嬉しそうに笑ってる。やっぱりマゾか。この変態野郎。

思わず二、三歩後ずさる。




と、ちょうどそこに、コンコンとドアがノックされた。

「キラ様、お時間ですわ」

返事をするとマアサがメイク道具の箱を持って入って来た。


私を見た後、ふうとため息をついて、じろりとアルの方に視線を向ける。

「・・・・アルファ様」

「なんだよ。マアサだって予測してたから、ちゃんとそうやって用意してきたんだろ。さすがだよな。マアサ」

アルは何の悪びれもなく笑い、ソファに寝転ぶ。

「・・・おかげでちょっとの間でも美しい女神を独り占めできた。ありがとう、マアサ」

「まったくもう、上手いこと言っても駄目ですわよ」

なんて言いながらも、マアサは楽しそうに笑ながら私の口紅を塗り直している。


・・・やっぱり敵わないね、マアサには。



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