14 イケメン神官
舞の稽古の前に、王様と神官長に挨拶に行った。
神殿は洋画に出てきそうな、中世ヨーロッパの教会みたいな感じ。
白っぽい石で作られた柱と壁、ステンドグラスはないものの窓が大きくて、陽の光がたくさん入る開放的なつくりになっていた。
王様のお屋敷より断然しっかりした造りじゃないですか。でかい。
奥から出てきた男の人は、白くて長い服をきて、白く長い髪を後ろでゆるく束ねた、いかにも神官さま!って感じの人だった。
白い髪は日の光が当たると銀色にキラキラと光っている。
目が細いのかつむっているのか、よくわからない。糸目だ。口は優しく弧を描いている。鼻筋はシュッと通っていてやっぱり美形。
本当すごいな、この世界。美形率の高さ、ハンパないよ。
「お初にお目にかかります。イルト・ラビリアと申します」
神官長はすっと膝を付き礼をした。
いきなり跪かれると焦ってしまう。
こんなお偉いさんっぽい人に膝をつかせてしまうなんて!焦っちゃうけど、よく考えたら王様ともめっちゃ馴れ馴れしくしてるなあ、私。
王様、フランクだから、もう偉い人って感じがしない。
「顔を上げてください、神官長さん。私はキラと申します。これから色々ご迷惑お掛けしますけど、よろしくお願いしますね」
「キラ様、この国の巫女となる決意をしていただき、有り難う御座います。
心よりお礼申します。神殿の神官一同、キラ様を歓迎いたします」
ものすごく丁寧に、心のこもったお言葉をもらった。深々と頭を下げながら。
いやだ、この人、イイ人っぽい!
真面目で熱心な神官長さまだ。
イジワルな奴だったら王様にチクってやろうなんて思ってスミマセンでした!
冗談ですから!
王様にもう頭上げさせて、と視線で助けを求める。
「イルト、キラが困ってるからそのくらいにしとけ」
王様の声に、すっと姿勢良く神官長は立ち上がる。イチイチ所作の綺麗な人だ。
「イルト、先日話した通りだ。舞の指導を頼む。
できれば精霊祭に出したいが。まあ、その辺りは様子を見て予定を組むか。
昼前は巡礼もあるし、昼飯を食った後、ここにキラを連れてくるから、お茶の時間までしごいてやってくれ」
「アルファ王、了解いたしました。
今日はどうなさいますか? お時間がありましたら、広間で少し体の動きを見させていただいても?」
「ああ」
よく分からないうちに話が進んでいるが、もう練習が始まるらしい。
習い事の体験入学みたい。申し込みだけに来たつもりが「やってく?」って言われて戸惑う、みたいな。
今日はドレスなんですけど。私。動きにくいんですけどー。
裾をちょっとつまんだだけで私の思考を理解したのか、
「大丈夫だ。そんなに激しい動きをするわけじゃない」と王様は笑った。
そんな爽やかに笑われても。動くの私なんで、動きにくいかどうかは私が決めるんですよー。
広間に向かいながら舞の説明を受ける。
舞は二種類あった。扇を持って踊るものと、剣を持って踊るもの。もちろん私は剣舞の方を選んだ。
剣道は数少ない私の特技。
才能があったのかはわからないけど、何しろ年季が入ってる。小学生の頃から十年以上やってるんだから、上手くならない訳がない。
ダンスはやったことないけど、棒を振り回して踊る方が俄然上手くいくと思う。