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10 大型わんこに囲まれる

私の体力を削ってまでお着替えをして、どこに連れて行かれたのかというと、中庭。花畑があったり、グラウンドみたいな広場もある。いたってシンプル。

花畑の奥の方なんて森みたいになってる。


え? 森に続いてるの? あれも庭なの?

気になって聞いたら王様に笑われた。森に決まってるだろって。

わかんないでしょ。中世ヨーロッパの金持ちの庭には、生け垣で迷路作ったり噴水とか、花でアーチ作るとかって聞くじゃん。


そう言えば。お城かと思ってたけど、建物はそんなに凄くはなかった。

ちょっといいお屋敷って感じ。ちょっと、ほっとした。

庭の感じといい、お屋敷といい、この国、貧乏なのか。なんか、タダメシ食らっててますます申し訳ない気分になってきたよ。





「ここは祭りやお祝いの時に皆が集まる場所なんだ。普段は騎士達が訓練で走ったり、子どもが花摘みに来るぐらいだな。キラも散歩に来るといい」

「はあ」

私を抱っこしたまま王様は庭を進んで行く。

ちょっとそろそろ降ろしてくれませんかね。人が来たら恥ずかしいんですけど。

「王様、私ひとりで歩けれま」


その時、ガサガサっと近くの植木が葉を揺らし、数人の男の人が押し合うように雪崩れてきた。

「アルファ王、そちらが!?」

「お前、押すなよ!」「おマエこそ!」

5人の男達は王様の腕の中の私に注目すると、一列になおり、ビシッと敬礼をキめた。



「女神様! どうも、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」「ありがとうございます!」

一人が一歩前に出てそう言い、深く頭を下げると、残りの人達も声を合わせて頭を下げた。

無駄に綺麗に揃っている。ビシーって音が聞こえそう。

体育会系だ。

うちの剣道部も礼には厳しかったからなあ。声の大きさとか、体の角度とか。



顔を上げた彼らは一斉に私を見る。わわ。視線が痛いっ。

突き刺さる視線に身を縮めると、王が私を庇うように体を捻った。

「おいコラ見過ぎだ。下がれ。お前らでかい図体してんだから迫ってくるなよ」


「王、ヒドイです!」「横暴だ!」

「僕達もお話ししたいです!」

「独り占めはズルいですよ!」「女神様かわいい!」


何これ、恥ずかしいんですけど!

王様に助けろって視線で訴えると、はあーと大きくため息をつかれた。



「やかましい奴らで悪いな。キラ、少しおしゃべりに付きあってやってくれ。みんな、先日の戦で前線に出ていた奴らだ。お前のお陰で命拾いしてる。礼が言いたいらしい。あと、お前と話したいんだと」

「は、はあ。いいですけど」


ふかふかの芝生の上に降ろさせれると、ズラリと周りを取り囲まれた。

筋肉質の巨大な男共に囲まれてるのに、ちっとも怖いとか感じないのはなぜか。

王様がそばにくっついててコイツらに殺される心配がないって思えるからか。

コイツらが尻尾振ってる大型犬にしか見えないせいか。

うちの部のヤツらに似ているからか。なつかしいなあ。思わず口元が緩む。


「えっと、初めまして。私、キラと言います。よろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をする。すると、

「ははー! キラ様! こちらこそ、よろしくお願いします!!」


座った状態で頭を下げられた。はい! これ、土下座、ですよね。

でかい男達に囲まれて土下座をされる。

それがこんなに居心地の悪いものだとは!

お願い、ヤメテ!


懇願する目で王様を見ると、苦笑して手前の人の頭をパカンと叩いた。

「おい、止めろ。キラが困ってるだろ。話さないなら帰るぞ」


「そんな!」「横暴だ!」

「話したいです!」「女神様かわいい!」

「王、あっち行け!」

なんだろう、このノリ。ヤバい。ホントにうちの部みたい。おかしい。脳筋のノリは異世界でも共通なのか。

ぷぷっと吹き出して笑ってしまった。


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