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【Ⅰ】
ゆっくりと……ゆっくりと死んでいく感覚。
細く細く息づく気配は、終わりが間近に迫っているのを悟らせる。
その時が来たら、この身と心はどうなってしまうのだろう。
どんな価値があるというのだろう。
……知れた事。
とうの昔にこの小さな館に幽閉同然に追いやられ、無価値の烙印は押されている。
日に一度朝も遅い時間に、その日の食べ物と衣服を世話係の者が置いていくだけの毎日。
涙など枯れ果てた。
怒りや悲しみの矛先など、最初から宙に浮いたままだ。
今はただ、そんな我が身がやるせないだけ。
痩せたため息と共に目を閉じたとき、部屋のドアが小さく軋むのが聞こえた。
真夜中にも近いこんな時間に一体誰が、と重い頭を巡らす。
「……よう。久しぶり。こんな所でこんな事になってるとはね」
ドアの脇に立つ男の姿が、懐かしくもおぞましい記憶を呼び覚ます。
「なぜ……! う、あ……ああっ……?」
心が大きく揺れてしまったせいだろうか。
その瞬間、胸の中の大事な者が静かに終わりを告げた。




