第1話 出会い
「ハア,ハア,ハア……やばい,間に合いそうにねーよ……。」
AM8:40……もう家を出てから20分間は走りっぱなしだ。
「クソ……本当なら今頃クラスのカワイイ子達に囲まれてウハウハな学園生活をおくっているはずだったのによ……ハアハア。」
みんなもこの気持ちを分かってくれると思う。学校入学初日の朝は誰もがきっと,
「俺のモテ期が来る」とか,「テスト,スポーツ共に学年トップでクラスの中心的人物になっている」とか,「新世界の神となる」とか……3番はそうそういないか。まあそんな事を思うはずだ。俺も今そんな感じなのだ。
そんな事をぶつぶつ言いながら,俺は走り続けた。
―5分後―
「よっしゃーあと約100Mだ」そう思った瞬間自然と俺のスピードが上がっていくのが分かった。一気に疲労感が無くなりテンションもMAX状態だ。
「ハッハッハッ,俺様のスピードについてこれる者などこの世には存在しない……。」
思わず厨二病発言をしてしまった。周りの痛々しい目が俺に集中しているのが分かる。超恥ずかしい。
「まあいい,あと数メートルで俺のバラ色スクールライフのスタートだ」
と,そう思った瞬間出来事は起こった。突如目の前に黒い物体があらわれたのだ。
『ドカッ』
痛てててて…今何が起こったんだ?
俺は走っていて,突如あらわれた良い香りのする柔らかい物体にぶつかって……ん?柔らかい物体?確か学校までの直線上にそんなものが無かったはず……んじゃ,あの感触は一体……?
「あのー,あの,ちょっとー,大丈夫? おーい,君大丈夫……ってえ? ウソ,海斗……ボソ。」
目を開くと女の人が手を伸ばしていた。
「あ,あの,その,すいませんでした! 大丈夫でしたか?」
(あれ,今名前呼ばれたような……まあ知ってるはずないか……。)
俺は慌てて立ち上がり謝罪した。頭を下げた時スカートの柄が見えた。俺の学校の制服だ。
きっと俺と同じ新人生なんだろう。頭を下げたまま俺……
「もしかして,東一高校の新入生ですか?」
彼女は驚いた様に
「あ,ああ,そうだよ! よく分かったねー。」
と,感心していた。
「俺達から制服の柄が少し変わっているからな。」
俺はそう言いながら頭をあげた。
「へえ~そうなんだ。君は物知りだねー! 関心関心。」
急に褒められて少し照れくさい。そう思っていると彼女は,
「ふふふっ。」
……と綺麗な笑顔を浮かべていた。もしかして,俺の顔が赤くなっていたりして。そうだったら超恥ずかしいんですけど……。
「どうしましたか?」
「ああ,ほらここ!」
そういうと,彼女の白くて綺麗な手が顔の近くまで伸びてきた。
オイオイ,俺の心臓の鼓動が止まらねー。思わず叫んでしまいそうだぜ。
彼女の手が一瞬頬に触れたかと思うとすぐ離れていった。
「ホラッ花びらついていたよ!」
「あ,ありがと。」
期待していた俺よ……消えてしまえ。まあ予想とは違って良かったー。
そう思いながら,俺はあらためて彼女の姿を見た。
彼女の髪の色は淡いピンク(染めてるふうにはとうてい見えない)でポニーテールをしている。いかにもスポーツが出来そうな細い体をしているのに,胸はC,いやDかな?良い感じの大きさかな……ゴッホン。
そうだな,こいつを例えるなら……俺は何となく空を見上げた。そして,風に運ばれて空で舞っている桜の花びらを見て,彼女の顔をあらためて見た。
「桜……そうだ桜だ!」
明るく力強く咲いているのにどこか,人を魅了してしまう気品や美しさをもっているあの桜。そう思った時,
「ん? どうしたどうした? 私の顔にも何かついているのかな?」
彼女は自分の顔を触りだした。俺はきっと彼女の顔をずっと見ていたのだろう。なんか急に恥ずかしくなってきた。頬が熱くなっていくのがわかる。
「いや,春って桜も咲いてるしぽかぽかしていて良いなあって思って!」
「そうだね! 春はいいよね~。夏みたいにやたら滅多派手に光らないし,冬みたいに寒くないし,ちょうど良いよね~。」
そう言いながら彼女は胸を上下に揺らしながら深呼吸を始めた。
いやー良い眺めですな~……じゃなくてごまかせて良かったー。
「あっ,そうだまだ君の名前聞いてなかったよね。君の名前は?」
「あ,俺!? 俺は西崎 海斗。今日からこの学校に通う1年だ。」
「あ,君もか~。私も今日入学するんだ! よろしくね,かいとっ!」
初対面なのい呼び捨てかよ。いや,どこか懐かしい感じもする。なんでだろう……? まあいっか。凄い美人だし,なんか青春のはじまりって感じで超良い!!!
「ああ,私の紹介まだだったよね。私の名前は,桃色 桜。君と同じ一年生だよ! よろしくね。」
そう言うと手をさしだしてきた。
「ああ,よろしく。」
そう言って俺はにぎりかえした。すべすべしていて気持ちが良い。桜に似てると思ったら,名前が桜かよ。そのまんまじゃねーか。
「やっぱり覚えてないよね……かいと。」
風の音でうまくききとれなかったが,彼女の顔が一瞬暗くなったような気がした。
「ねえ,今なにか……。」
『キーンコーンカーンコーン……』
俺が聞こうとした瞬間予鈴が鳴った。
「ああーやば,もう学校始まっちゃうよ? もう少し話していたかったなー。」
そう言って彼女が走りだしたかと思うとまた戻ってきた。
「ほら行くよ。かいと!」
「え,ええ?」
俺の左手と彼女の右手はしっかりと繋がれていた。ふと俺は思った。
この光景,昔も見たことがあったような…。そう思った瞬間「ズキッ」俺の頭に激痛がはしった。
「くっ。」
「かいと,大丈夫? 凄い汗だよ。かいと?」
彼女の声はもうほとんど俺には届いていなかった。
頭にノイズがかかったような音が響いて,うっすらと,ぼんやりと映像が流れた。
「なんなんだよこれは!」そう思っていると遠くから声が聞こえてきた。
「かいと,ほら行くよ!」
「待ってよ,○○○ちゃん足速すぎ。もう疲れたよ。」
「あ,あれは……俺か?」そこには昔の俺がいた。でも,もう一人の女の子は誰だ? 顔にかげがかかっていて見えねぇーよ。
「もう,かいとは本当に情けないね! フフッ,でも可愛いから許す。」
「か,かわいいって,俺は男なんだぞ! しかも,○○○ちゃんとも同じ年だし,可愛いなんて言われたくない!」
「分かった分かった,ゴメンゴメン。じゃあホラ行くよ。」
あっ,そうだあの時も女の子に手をひかれていた…俺って今も昔も変わってないんだな。
「うん! じゃあ,○○○にいこう!!!」
聞き覚えのある名前だった。ん?今なんて言ったんだ?
「おい,今なんて……」
俺がそう言おうとした瞬間またあの音が響いた。それと共に激痛が頭に走っている。
「クソッ。あの子は一体・・・・・。」
そう言うと一気に俺の目の前は真っ暗になり,そのまま俺は気を失った…。
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