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本編開始!
突っ込みどころ満載・・・。
熱い。
顎先から落ちた汗が、あっという間に蒸発した。
一はふぅ、と息を吐く。
鉄を溶かし、脆くなった銃機器を強化する。今回の依頼は顔馴染みの客からだから、料金はサービス。それでも、久々にちゃんとした飯が食えて、風呂にも入れる。
「おーい一葉ァ!久々に一緒に風呂入るかァ!4日ぶりだからくせぇだろうけど」
「5日ぶりよボケ!」
ガツン、と脳天にたらいが落とされた。
いたたた、と呻き、作業を中断する。振りかえると、ずかずかとこちらに歩み寄ってくる少女が居た。
普段は清潔感のある、ショートカットの黒髪、いつもなら張りのある白い肌、5日前はいいにおいがしていただろう少女――一葉は、一に近寄ると気の強そうな顔を歪めた。
「うわっ!暑っ!くさっ!最悪!」
鼻をつまみ、まわりの空気を掻き回すように腕をブンブンと振りまわす。
「ひでぇ言い草だな。しょうがねぇだろ、仕事だ」
「いいからはやくおわらせてよね。はやくお風呂入りたいし、あんたが鉄とかしはじめるとまわり一帯がすごいあつーくなるのよ」
「ガキどもは喜んでるだろ?」
「アホ。あぶないっつの」
ここは国の都市部から遠く離れたスラムだ。たいした設備もない場所で鉄を溶接していたら、間違いなく大問題だが、幸い事故は起こっていない。何より一は自分の腕に自信を持っていた。まあ、こんな技術も、能力者がたくさんいる都市部では不要だろう。能力者が一人いれば、戦車うん台分という戦力になると聞くし。というか実際そうなのだろう。一は背後にいる少女をぼんやりと眺めた。
かつて守ると誓った少女は、今や自分より強いかもしれない。
一葉は突如として、「重力を操る能力」を手に入れたのだ。先ほどたらいが落ちてきたのも、その能力のためだ。力を手に入れた当初は大パニックだった。レジスタンスの仲間には内通者と言われ、討伐にきた軍には裏切り者と言われ、二人で頭を抱えたものだ。結局、前居たグループを抜け、今のグループに入った。ここには、一葉の他にも能力者が居たのも加入の理由だ。都市部以外に能力者が居るのは、滅多に無いことだ。能力者はたいてい軍人なのだ。おっかない。
「あだっ」
ぼんやりとしていたら一葉に頭を叩かれた。
「何見てんのよ」
不機嫌そうな表情で腕を組んでいる。
交差された腕の上で胸が強調されていた。
「お前おっぱいでかくなったよなぁ」
「死んだらっ!?」
今度はたらいどころか鉄アレイが落ちてきた。
痛みにのたうち回っていると、入り口の方から慌ただしい足音が二人分聞こえてきた。
「あんちゃーん!」
「はじめ兄貴ぃー!」
12、3才くらいの男の子と女形が顔色を悪くして走ってきた。
「どうしたの?」
痛みでしゃべれない一のかわりに、一葉が尋ねた。
「か、かずはちゃん、たいへん、たいへんなんだよ」
女の子の方が半ベソをかきながら言った。
「軍の人が、きたのっ・・・」
「そうなんだ、どうしよう兄貴・・・まだ武器なおってないよね?」
「おう・・・まだだ」
一はようやく痛みから復活した。
「ていうか昴、好戦的だな。いきなり銃ぶっぱなすのかよ?」
昴と呼ばれた男の子はひどく興奮していた。
「だって!だってなんとかしないとみんな殺されちゃうよ!」
一は昴の目線まで屈むと、頭をぽんと撫でた。
「おまえは楓つれてスラムの皆に声かけろ。俺が時間稼ぎする」
女の子――楓はびくりとした。
「どうするの?」
「いいからーはやくっ」
二人の背中を無理矢理押し、裏口の方から逃がす。
それを見ながら、一葉は言った。
「私ついてくから」
鼻をつまみながら喋ったのでひどいダミ声だ。
「知ってる」
一は苦笑して正面の入り口へむかった。万が一に備え、殺傷力が高そうなごついスパナを持っていくことにする。
「さぁーて・・・・・・って、なんにも考えてないんだけどさ、実は」
「馬鹿じゃないの」
次は巴さん登場。




