第5話
猛といったん別れ公園に向かう晃
そして公園に着いてのんびりと歩きながら、そういえば猛の掃除っていつ終わるんだ?と考えているとふと足元に何かが当たった感触がして下を見ると透明なビー玉が1個落ちていた。
(へぇ、これって俺がよく飲んでいたラムネのビー玉じゃないか。もらっておくか)
実はビー玉とか変なものを集めるのが彼のひそかな趣味なのである。
そんなことを思いながらまた歩いていると”ブチっ”っと嫌な音がした。
(また靴紐かよ。一体何回目なんだか)
そう言いながら腰を下げて予備の靴紐(なぜかいつも常備しておく)を直した彼。
そして立ちあがろうとしたら足が吊ってしまった。
(やばっ)
慌てて体制を立て直す。
一段落してボケットの中に手を突っ込むとビー玉が無くなっているのに気がついた。
(あれっ、どこいったんだ?)
「おぉい、晃。こっちは片付いたぞ」
猛はそう言いながらこっちに向かって来る。
(まぁいいか)
そしてこっちも手をあげて返事を返す。
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さて、あいつの隣にいたやつは川田の協力をかりて引き離すことに成功した。
約20人程であるからあのレベルを足止めするにはせいぜい10分がいいところだろう。お世辞にも足止め役は強いとはいえないからな。
そうするとあとは俺の方だが…
正直言うと全くしとめられる自身がない。時間も少なく、最もあいつではどんなに時間をかけようとも無駄であるだろうから一瞬にすべてをかける。
俺は「流星のカイト」としてやらねばならぬのだ!
あの公園は俺の最高の狙撃場所だ。さすがに1キロ離れた所からの不意をるいた狙撃は防ぎきるのは不可能だろう。
もちろん俺が当てないと意味はないのだが…しかしたった1分しかれど1分ここにすべてをつぎ込む。
そしてチャンスが来た。あいつは靴紐を座って結び直す。そして立ち上がろうとした。
(もらった!!)
最高の場所からの狙撃、俺が今までで一番集中し、そして今まで打ち続けた中で最高の出来であるといえた。
あいつの完璧な死角からの跳弾による狙撃。絶対に当たる…はずだった。
あいつは絶妙なタイミングで前に体を傾けた。
本来、人はある動作をしている間に別の動作にすぐに移るのはとてつもなく難しい。
それは今回の場合、立ち上がる晃のその瞬間。それを狙った狙撃は本来かわすことすら不可能だっただろう。
それを傾けるだけでよけるなんて恐怖以外の何物でもない。
しかもあいつは跳弾をかわすだけでなくこちらにポケットに入っていたビー玉を投げたのだ。
跳弾により狙撃ポイントをつかめなくさせていたのに一瞬でバレてしまったのだ。
さらに前に傾きながらポケットを鞘にしながらビー玉を投げる…はたして投げるといっていいのか。鞘としたポケットから打ち出された球は居合の原理を用いてかなりの速さでやってきた。
もちろんかなりといってもよけれるものだったのだがそのビー玉が厄介なことに透明で気づくのが遅れ、ぎりぎりで避けたがライフルスコープを割ってしまったのだ。
たったあれだけの時間でここまでの反応ということからあいつが一体どれだけ戦いに身を投じていたかわかる。
もはやこれまで、と思ったがあいつは相棒に事のしだいも話さず去ってしまった。
それは暗に「お前は負けだ。いつでもかかってきてもひねりつぶせる。だからもう向かってくるな。俺は無駄な争いは避けたい」と言ったメッセージであると簡単に推測できた。
それは俺に戦う気力すら失わせたのだ。