第四話 自分事
新四話 怠慢
僕らを庇うように知らない人が戦っている。
正義の味方が戦っている。
誰を守るため?何故戦う?
無垢なる人類を守るためなのか。
俺は英雄になりたかった。
でも逃げた。
恩人を見殺して。
でも夢は変わっていない。
この名状しがたい自己矛盾のせいで、未だ前に進めずにいる。
でもソルヴィアと名乗る彼女は戦っている。
知らない人を助けている。
重ねて言う。俺は英雄になりたかった。
なら戦って戦って...戦って戦って戦うべきだろ...
「リオ避けて!」
飛んできた流れ弾をリーナが身を挺して庇う。
「う゛あ゛あ゛あああああぁぁ‼」
のし掛かるリーナに目を向けると、両腕を繋ぐように胸を通る、焼け焦げた抉れた線が出来ていることに気が付く。
「姉さん!ごめん、俺が呆けていたばっかりに」
「ごめんねリオ、駄目なお姉ちゃんで」
「えっ」と思わず疑問を持った。
いつも家族を裏で支えてくれた姉が、心配性で傷付いた人を見るとすぐに駆け寄り治療するお節介な姉が、謝った理由がリオにはわからなかった。
「私いつも迷惑ばっかかけてた。今も私じゃなかったら当たっていなかったと思う。悲しいなあ、悔しいなあ、リオはどう?」
その顔は、泥と涙でぐちゃぐちゃだった。
「俺もだ、俺も悔しい。悔しくて悲しくて泣きそうだ。
でも姉さんも母さんもマリーも泣いて欲しくない、似合わない、笑っていて欲しい。まだ自分の気持ちに正直にはなれないけど、うん、だから俺が、家族の俺が助けに行くから」
そういうとリーナは子供を見送る親のように微笑んだ。
「いってらっしゃい、私もすぐに追い付くか...ら」
そこで意識は途切れた。
傍らに置かれた斧を握りしめ、狙いを定め、風の魔力を流して投げつける‼
「いつまでも逃げてられない...
いつだって助けられてばかりじゃない...
誰かには任せられない、俺が助けないとなんだ‼」
「クソガキイイイイ‼」
子供一人穿つ程訳ない強さの投擲は、後光によって書き消された。
「ごめんなさい、任せてしまって」
「ありがとう、助けてくれて。任せてとはいえないけど、一緒に戦わせて欲しい」
「勿論だよ‼」
二人横並びで共闘。まもなく夜が明ける。
「ねえ、リオ」
ソルヴィアは、戦場とは思えないほど穏やかな声で言った。
「覚悟は出来た?」
その言葉に、胸が締め付けられる。
「復讐のため感情を堕とせる?」
一拍、間。
「リオはまだ弱い、だから私が力を貸す。私のへなちょこパンチじゃ効かないらしいからね」
喉が鳴る。
怖かった。分からなかった。
でも、分かってしまった。
「……姉さんを、連れ帰れるのか」
「世界の全てがうまく行く」
即答だった。
躊躇はなかった。
「なら全てがイエスだ」
ソルヴィアは笑った。
「OK決まり‼なら言って、ただ一言、助けたいって」
ソルヴィアは楽しそうに言った。
三歩前に出て口を開く。
「俺が家族を助けるんだ‼」
瞬間、次の瞬間、胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。
心臓の鼓動に合わせて、知らない力が満ちていく。
それは確かに、暖かかった。
――けれど、その熱は、戻り道を焼き切っていた。




