第三話 彼女は綺麗だった
「ずっと待ってたよ!リオ!
私はソルヴィア、精霊のソルヴィアよ!」
まるで子供みたく、無邪気に笑う天使のような精霊。
「あなたはーー」
「誰だよお前!」
男の怒号。彼女は嫌そうに振り向く。
「空気が読めないね、君はいつもそうだ。我先にと行動して周りに迷惑をかける。良い面汚しだよ」
「俺の何がわかんだよ」
男は手を天に掲げる。
「喰らえ!《炎の槍》!」
手の平に立ち上った炎が収束し、やがて槍を形どったそれはソルヴィアへと投擲される。
だがそれは一歩横に反れるだけで避けられてしまう。
「ノーコン野郎に未来は無いよ!」
「舐めるなああああ《炎の槍》!」
男は再び叫ぶ。
その後男の背後に赤い魔方陣が浮かび上がる。
それは2つ、4つ、と増えていき、16もの魔方陣が円を描くよう展開された。
それらから無数の炎の槍が射出された。
「これは流石に避けれねぇだろ!」
男は勝ち誇ったように叫びを上げる。
だが避ける避ける避ける避ける!
ソルヴィアは槍と槍の弾幕の隙間を、針の穴を縫うように潜り抜け、大量にあるそれを華麗に、難なく躱していく。
「もしかしてこれが全力なの?」
「なわけ無いだろ‼」
怒りによって魔力制御を少し緩めた分と、単純に出力を上げた分で、一つ一つの威力が格段に上昇する。
それらは着弾時に、地面を砕く爆発を起こしていく。
「全く、芸がないね。それより、
ーー何故君は近づいて来ないのかな?」
眼孔を鋭く尖らせる。
「これが俺の戦闘スターー」
「怖いんでしょ、これ」
そう言って背後の後光を指差す。
男の表情を見たら、どれだけ動揺しているのかは明らかだった。
「具体的には光属性の魔力だよね。
知ってるよ、お前らにはこれが一番効くんだって。
ーービビってんの?」
「...違う...ちげえよ!今のはほんの小手調べだ!端から本気なんて出してる訳が無いだろ!」
男はソルヴィア目掛けて飛びかかった。
途中、飛来する炎の槍を掴みながら。
体を捻り、回った勢いでの凪払い。
「そんなの当たるわけがーー」
そう高を括っていて、三歩だけ後退するソルヴィア。
だが次の瞬間、右の脇腹に強烈な一撃が叩き込まれた。
「がはっーー」
殴られた勢いで地面に何度かバウンドする。
辛うじて受け身を取ったが、顔を上げた時見えた光景に驚きを隠せなかった。
「しっかり当たってんじゃねぇか‼」
と慢心して喜んでいた。
男の肩には、射出された時と明らかに長さが変わった槍が担がれていた。
「振りかぶってる最中に槍に魔力を流したか。それも周りにある散らされた大量の炎による視界妨害付きで」
「敵を褒めるとは気楽なもんで、それと俺も一つわかったことがあるんだ」
「...なんだ」
「お前、
ーー攻撃するための手札がないだろ」
ソルヴィアには土埃と苦悶の表情が顔に張り付いていた。
「攻撃した瞬間にわかったぜ。カウンターや受け流しすら考慮に入れていない回避一辺倒の姿勢、おまけに次の槍の射出までのインターバルまで気にしてる素振りも見えた」
男は間髪入れずに再び間合いを詰めてくる。
「後光怖くないの?」
「めっちゃ痛えけど」
一定時間で射出される炎の槍の遠隔攻撃と、リーチが変わる槍のコンビネーションにより、回避の選択肢は非常に狭まった。
ーー面倒だ。
一撃一撃が大振りで連打され、呼吸の暇は無い。
「そこだあぁ‼」
射出された槍を盾に隠された、地面に描かれている魔方陣からの一槍により、ソルヴィアの左腕が突き刺され、
ーーそうになった時、背後から一本の斧が、風を纏い、回転しながら男目掛けて飛来する。
男は寸でのところで躱したが、ソルヴィアがその隙を突いて回し蹴りを胸に打つ。
「いつまでも逃げてられない...
いつだって助けられてばかりじゃない...
誰かには任せられない、俺が助けないとなんだ‼」
リオは静かに立ち上がった。
燃える青い炎の様に。
闘志に火が着いた。
「クソガキイイイイ‼」
子供一人穿つ程訳ない強さの投擲は、後光によって書き消された。
「ごめんなさい、任せてしまって」
「ありがとう、助けてくれて




