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7 お掃除勇者、今日から仮採用です

《これまでのあらすじ》

勇者認定され、魔王の元に身を寄せたリン。

魔王の家はゴミ屋敷ながら、優しい魔王と狐のトミーに囲まれ、少しずつ心を休めていく。


魔王は過去の“元勇者”ギルド長との因縁や、自らのツノを折るユーモアでリンを和ませる。

一方でリンの小さく傷だらけの体を気遣い、彼女を保護する決意を固めるのだった。


静かな夜、魔王は「こんな子にこそ世界を変えてほしい」と願いを胸にリンを見守る――。

「改めまして、魔王秘書官をしております、トミーです」


朝、目を覚ましたわたしに、トミーさんがきっちり頭を下げてきた。


狐人間かと思ってたけど、よく見ると――


毛並みがとにかくキラッキラ。

白くて、ふわふわで、上品で……

しかも、尻尾が九本!?



「九本あると寝にくいですから、家では一本に束ねて過ごしてるんです」



し、尻尾……それ、ふわっふわ確定じゃないですか……!



さ、さわりたい。いや、もういっそ抱きしめ――

いや、だめ!!

ここで飛びついたら完全にアウトだ。

17歳だけど! 見た目子供だけど! 

わたし、一応大人なのだから……!



……じーっ。



「……マクライアさんとは似てないと思ってたんですけどね。やっぱり似てます。尻尾にこだわるところが」


トミーさんが苦笑する。


「やっぱり! ギルド長も、尻尾を抱きしめたいって言ったんですね!?」


めっちゃわかる。だってこの尊さ、反則。


「いえ……」


トミーさんの目が、すっと遠くなった。


「切り落とされそうになり、魔法で火をつけられそうになりました」


 


――は? えっ? な、なにを言って……


思わず息をのむ。声が出ない。


「だから、思わずこの尻尾で吹き飛ばしてしまいましてね。怪我させてしまったんです」


「そ、それは当然です! ギルド長、ひどいっ!!」


思わず拳を握ると、トミーさんは首を横に振った。


「……あの方も、焦っていたんです。人間界のプレッシャーでね。成果を出さないと自分の立場が危ういと、かなり無理をしていた」


「それでも、尻尾に火をつけようとしちゃダメです!」


「まあ……そうですね。ですが、尻尾を“触りたい”と言った勇者も、あなたが初めてです」


トミーさんがくすっと笑う。

なんか、怒ってたのに一瞬で照れくさくなってきた。


「リンさんも、ここでは落ち着かないでしょう。しばらくは、家事全般をお願いします。

ただし――あなたはまだ十七歳。まだ子供です。だから、無理はしないこと。これが条件です」


昨夜、魔王さまと相談したらしい。


わたしの体は細くて、肌も髪もぼろぼろで。

たぶん、そうなるまで誰にも頼れなかったんだと思う。


教会で働いてた頃、働かないと食べられなかったから。

だから、仕事がないってことが、わたしには“存在が消える”ような気がしてしまう。


「働かせないより、できることをやらせて、自分の居場所をつくってもらうほうがいい。――それが魔王さまの考えです」


ふわりと、九本の尻尾が揺れた。

その白いもふもふが、なんだかやさしく微笑んでるみたいで――胸がぽっとあたたかくなった。


 


そしてそのまま、ボロボロだった教会服を脱ぎ、支給されたメイド服にお着替え。


うぉおおーっ! 神官助手から、メイドに――!


華麗なる転職!


さっそくいくよ、ゴミ屋敷から荷物の大放出ターイム!


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