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《完結》聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます  作者: かんあずき


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53 おかえり、ネレウス――水の精霊が帰る場所

「そ、それで……トミー、結果はどうだったんだい?」


魔王さまが、冷静を装いつつも若干声が上ずっている。


「プロポーズ、受けてもらえました」


トミーが頬を赤らめて報告した瞬間──


「うわぁああ!おめでとうございますっ!」


ウンディーネ、エアリア、リンが同時に歓声を上げた。


「……母を裏切る気がしてたんです。

 私を庇って命を落としたのに、みんな母を残して家を出て自分までブラッドバニー族と結婚するなんてって。

 でも彼女……お墓参りに一緒に行ってくれて、頭を下げて、墓を綺麗にして、血まみれの服も『よく頑張ったね』って言ってくれて……。

 もう、許された気がして、そのまま……」


「そのままプロポーズしたんだ……いい話だね……」

リンは涙ぐみながら微笑む。


「いや、敵同士でしょ。墓の下では複雑かも。嫁姑問題だよ?」

ウンディーネが冷静にぶっこむ。


「感動話に水を差さないの」

エアリアがぴしゃり。


「で、そのまま旅行に行って……ってことは、ずっと彼女と一緒だったのか?」

魔王さまが腕を組んで問う。


「はい。なのでアリバイはばっちりです。ホテルもレストランも記憶に新しいかと。ただ、婚前旅行なんで、相手の家への許可がまだで……その、秘密にしたかったんです」


──で、魔王さまが秘密保持のもと、調査した結果。


マクライアが殺されたとされる時間、トミーはラブラブ婚前旅行で海と山と天界リゾートホテルを満喫中。


シロ、確定。


「マクライア、誰にやられたの……? まさか、一人で転んで死んだんじゃないわよね……?」


ウンディーネが沈んだ表情でつぶやいたそのとき──


「いや、誰かにやられたはずだ。……ほら、伝書鳥が帰ってきた」


魔王さまが空を見上げると、黒い翼が音もなく舞い降りてきた。その背には、かすかに光る、今にも消えそうな光の球が揺れていた。


「トミー。彼と精霊契約を結ぼうと思う。ウンディーネとの関係もあるし、リンを守る力が欲しい」


「最初から許してますよ。許せなかったのは、無力な自分自身です。もっとも、うちに配属されたら鍛えますけど」


「ちょ、やめて!マクライアはもうお爺ちゃんなんだから!」

ウンディーネがすかさず庇う。無意識に。


魔王さまは微笑み、伝書鳥に「お疲れさま」と声をかけて転移させると、光の球に優しく呼びかけた。


「マクライア。心残りがあってここにいるんだろう?なら、リンの力になりながら、それを晴らすといい」


そしてぽつりと──

「闇かな、水かな……」


魔法陣が浮かび上がる。魔王さまは光の球を魔石の上にそっとのせると、指先でくるくると術式をなぞった。


淡い光は徐々に強く、そして──水色に染まった。


「……水だね」


光は、ウンディーネと同じような透き通った水へと変わり、その中から青年の姿が現れる。


それは──マクライア。かつて“勇者”と呼ばれた、あの頃の姿で。


「……ここは……?」


目を見開き、キョロキョロと周囲を見回すマクライア。


「おかえり、マクライア。いや──今日から君は、水の精霊ネレウスだ」


魔王さまが笑ってそう告げると、ネレウスは魔王とウンディーネを見つめ、ぽろぽろと涙を流した。






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