表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/74

44 魔王の告白と、止まらない浄化——そして、初めてのキス

どれだけ——私に、力があるのか。


ウンディーネの言葉がよみがえる。

『利用されることから逃げられなくなったら……あなた、きっと死んじゃう』


目を閉じて、息を吸う。

背筋を伸ばして、手を地へ向けた。


「浄化っ!」


紫の瘴気が光に包まれ、風が舞う。

エアリアの力じゃない、これは……わたしの力だ。


「うわぁ……!」


誰かの声が響く。


戻れ、戻れ、大地よ、本来の姿へ!


光があふれ、緑が芽吹く。

けれど——


ズンッ、と身体にのしかかる重さ。

……ダメ、立てない。倒れる——


みんなが笑顔で駆け寄ってくる


笑って。笑わなきゃ。

みんなの前で。


ガクンと膝が崩れた瞬間、


「もういい!」


強く、だけど優しい声が耳元で響いた。


抱き上げられていた。魔王さまの腕の中で。


「……妻の力がわかったか?」


魔王さまの声が低く、冷たいほどに怒っている。


「みだりに妻に近づくな。私は、他の男が近づくのを許すほど器は広くない!」


その場が静まり返った。


「解散だ。全員、戻れ」


そして気づけば、全員が会議室に戻されていた。

——私と、魔王さまの姿だけが消えて。


***


「……すみません。最後、頑張れませんでした」


ベッドの中で、しゅんと項垂れる。


「頼んでない。あんな犠牲、頼んでない」


魔王さまの声が、低くて……痛いほどに真剣だった。


こんな声、初めて聞いた。

甘やかしてくれてばかりだったのに。


わたし、足手まといだ。

魔王さまの役に立ちたくて、自分で決めたのに……。


眩暈と吐き気で、立ち上がれない。

情けない。


魔石からエアリアが飛び出す。


「魔王さまひどい!! リンちゃん、がんばったのにっ!」


珍しく怒ってる。

けれど魔王さまは無言で、エアリアも気圧されて去っていった。


入れ替わるように、ノックの音。


「リンさん、大丈夫ですか?」


入ってきたトミーが明るく笑う。


「狸谷宰相、リンさんを気に入りすぎて“うちの息子の嫁に!”って叫んでましたよ。いや~、大成功ですね!」


ピキィッ……


魔王さまの空気が、静かに……冷たくなった。


「……息子の嫁?だあ??殺す」


「ちょっ、魔王さま!? 冗談、冗談ですって!」


トミーが慌ててなだめる。


「そ、それより!皇后の間にお部屋を移しましょうね!もう誰も反対しませんから!これでしばらく行事もないし、私も有給休暇で実家の里に数日戻ってますから。ごゆっくりー」


無理やり明るく取り繕って、トミーも、この圧に耐えきれなくなり逃げるように出て行った。


静寂。

魔王さまとふたりきり。


わたしはまだ、起き上がれない。目を閉じる。


「リン……愛してるんだ。怒ってるのは、お前が無理したからで……」


魔王さまの声が震えていた。


「今、触れたら……俺の瘴気まで浄化されそうで。ほんとは、今すぐ抱きしめたいのに……」


さっき、抱きとめた時。

こんなに体調が悪くても、自分の瘴気を浄化してきた



恐ろしいほどの力。

そばで抱きしめて本当はよくやったと支えてやりたいのに.....


「私も、愛してます」


「……!」


「ちょっと、力の加減がわからなくて。緑にまで戻すつもりじゃなかったんですけど……認めてもらえて、よかった」


そっと、手を伸ばす。


魔王さまが、恐る恐るその手に触れる。

そして、そっと口元へ。


「えっ、それ……手、ですけどね...その、ファーストキスなんですけど私っ!」


わたしの顔が、熱くなる。


魔王さまはきょとんとしたあと——


「……それは、少し皆にサービスしすぎたね」


柔らかく笑って、

今度は、唇を——わたしの唇へ、重ねてきた。


言葉も呼吸も、すべてが奪われるような、甘くて熱いキス。



息も、思考も、止まってしまう。

まるで、時間が凍ったような感覚。


「……まだ妻じゃないのに、俺、また先走ったか」


魔王さまが囁く。


わたしは何も言えなくて、顔を真っ赤にして、ただ目をそらした。


——でも。

胸の奥が、温かい。


婚約者として、魔王さまの隣にいる。

それだけで、今は十分だと思えた。


……まだ妻じゃないけれど。

いつかちゃんと、その日が来ることを、信じてる。









リンと魔王さまの距離がぐっと近づきました……!

今後は、ふたりに新たな試練が?

この回、もしよければブクマ・感想いただけると次も頑張れます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ