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《完結》聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます  作者: かんあずき


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29/74

28 魔王に嫁入りって……私、聞いてません!

魔王城・最上階が騒然となっていたその頃。


リンは、一人、机に向かっていた。

スネク先生から出された“宿題”に取り組み中である。


今日はスネク先生、メイドたちの研修があるから時間が取れないんだって。

……そこに呼ばれない私は、もう「メイド」じゃないってことなんだなあ。


頑張ってたのに。

淑女レッスンも、変なウォーキングも、紅茶の入れ方も。

お辞儀の角度だって完璧目指した。

ぜんぶ、魔王さまのそばでお役に立ちたくて――


――でも、まだ正式なお仕事はもらえない。


じわっと涙がにじむ。


……ダメダメ! 卑屈は罪!


スネク式・自己肯定感トレーニング!


毎日1000個、自分の素晴らしいところを書き出して、声に出して暗唱!


ええと、今日は――


・お日様がまぶしいと思えた!

・曰く付きゴミ山をひとつ減らせた!

・お城じゅう、パタパタはたきをかけた!

・ネズミイさんに「おはよう」が言えた!

・厨房長に「ありがとう」が言えた!

・ごはんが美味しいと思えた!


ええと、ええと、あと994個は……


そのとき。


机の上の魔石が、ふわっと光ったかと思うと、エアリアが風ごと飛び出してきた。


「りんちゃん! たいへんだよー!!」


「え? エアリアさん? どうしたんですか?」


「おちついて! 落ちついて聞いてね!!」


エアリアが息を吸い込んだ瞬間――


「――待った!!」


風と水がぶつかるような音とともに、今度はウンディーネが突入してくる。


「エアリア! ダメよ、それは魔王さまの口から言わせなきゃ!」


「でも!! リンちゃんだけが知らないの、絶対おかしいでしょ!? おかしいでしょ!!」


風がブワッと舞って、魔石がガタガタと震えた。


……ただ事じゃない。

これは、きっと――自分と、魔王さまの間に何かが起きた。


スネク先生なら、こういうとき……なんて言ってたっけ……?


首をすくめるのは、蛇だけです!!

……だった? いや……


不安? 焼き払え!

不信? 蹴り飛ばせ!


……だった、気がする。


うーん、どうやって??


「ええと……とりあえず、わたし、笑顔で聞くから……ゆっくり、教えて?」


ウンディーネが困ったように顔を見合わせたそのとき。


――すぅっ。


音もなく、ドアが開いた。


「廊下まで騒ぎ声が響いています。淑女として、あるまじき行為ですね」


そこに立っていたのは、スネク先生だった。


「リンさん、背筋はピンと! 胸は張ってお聞きなさい」


するするっと、音もなくリンの前に立つ。

リンは椅子から慌てて立ち上がり、姿勢を正す。


「はいっ! スネク先生! わたしが世界基準ですっ!」


スネクはにっこり微笑む。


「よろしい。さて、魔王さまから何かご連絡は?」


「え、いえ。何も……伺っておりません」


「そう。ではお伝えします。先ほど魔王さまが魔王会議にて、あなたを妻にされると宣言なさいました」


「わかりました! 私が世界基準! 向こうがひざまずくまで、堂々と立ち続けま――す……???」


「“えっ?”、ですって?」


ビシィッ!


スネクの蛇ムチが光る。


「そこは、『私を選んだのは正解! でも、私が選ぶかは別よ』です!!」


「えええええ!!!」


「ええ、じゃありません! 淑女たるもの、魔王であろうと、求められる存在であるべきです! 選ぶのはこちら!」


「はいっ! スネク先生! わたしが世界基準ですっ!」


その様子を見ていたウンディーネとエアリアは、魔石の上で、ただ呆然とするしかなかった――。








注意

本作に登場するメソッド・思想・発言等はすべてフィクションです。現実の医療・心理療法とは関係ありません。

自己肯定トレーニングとしてやるのは自由ですが、全く責任は持てません(笑)

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