22 ゴミ山メイド、無自覚に浄化中
トミーさん肝入りの「リンさんの適職」
それは、このガラクタゴミ山の整理。
「瘴気を浄化できるリンさんなら、鏡みたいにゴミ山も浄化できるはず!いや絶対!」
すごい圧を残して私はこの部屋でゴミ山を整理して、寝泊まりすることになった。
私の右腕はウンディーネさんだ。
ある日、城のその日のはたき掃除も終わってしまい、トミーさんから司令を受けた私はゴミ山部屋に篭ることになる。
「今日からこのガラクタ山の片付け、一緒にしましょう」
そう言って、ウンディーネさんが言ったのはーー例の呪われたガラクタの山。
スペースにおかれた3人で寝ていたお布団はもうない。
代わりにちょこんと置かれた作業机とウンディーネさんの魔石が台所から移動されてきた。
ウンディーネさんは魔王城のお水の管理のお手伝いもしているから、時々お出かけしてしまう。
シーンとした部屋に一人でいるのは嫌だ
――もう、魔王さまたちと眠ることもないんだ。
それが現実だと。
ここが、わたしの部屋。
誰も近寄らない、呪いのゴミ山
なまじ、温かい空間を知ってしまったから、余計につらい。
私の人生自体、人がいない空間がなかったから余計に苦手だ。
魔石に腰かけたウンディーネさんが声をかける
「しばらくみんなが慣れるまでは、安全が一番だから。ここはいわく物だらけだから、魔物も魔族も恐れて寄ってこないわ」
ウンディーネさんがいうには、
「魔族は人間に対していい感情がないから、リンちゃんは極力、みんなの目に触れない方がいいのよ」
と言ってたけど...
「……なんかこう……窓際族って、こういう感じなのかな」
本当に居場所がないのだ。
お掃除は、プロのメイドさんたちが戻ってきたから、本当に私はハタキをかけるくらい。
庭も庭師さんに任せて、噴水はたまに散歩するくらい。
ご飯は、厨房長のオーガさんが作ってくれるようになった。
「オレは食うもんなくなったら人間でも食うぞ」
でも、ネズミイさんいわく「あれは魔界のデレ隠し」らしい。
夜中にこっそりおにぎりが届いた。
「……厨房長、リンがちゃんと食ってるか気にしてたぜ」
……やっぱり、優しい人なんだ。
「午後はスネクとお勉強でしょ? 少しづつゴミ山を減らすわよ」
ウンディーネさんが指示する。
「はーい!」
最初に取り出したのはティーセット。
「“飲み続けるティーセット”ね。お茶を注ぐと、延々と“わんこティー”状態で止まらなくなるわ。苦しみながらのティータイム……」
「え、それは普通に地獄では?お客様にだせません」
ガシャアアァン!!
容赦なくリンが叩き割る
いきなり割れたティーセットから、黒いもやもやがふわり
ウンディーネさんが焦りと眉をひそめる。
「なんだろう、黒い埃が…?」
むぎゅ。
リンは、無意識に掴んで、握りつぶしてしまった。
ぼふっ。
「あ、消えました」
「……無自覚浄化」
次に取り出したのは、一本の口紅。
「“鏡に映ると10倍可愛く見える口紅”。依存性あり。つけると手放せなくなって、あちこちにリップ跡つけるようになるの」
「……それ、ちょっとだけ使ってみたいです!」
ぬりぬり。あ、ちょっとはみ出たかも。
「鏡、鏡……あ、これ? “美しさを吸い取る鏡”? ……まぁ、映ればいいよね」
その瞬間。
鏡に映ったのは――
口裂け女みたいな私の顔(しかも笑顔)。
「ぎゃーーーー!!」
リンと鏡、同時に悲鳴。
そして、
パリンッ!!
「……あれ??口紅も鏡もくだけた」
「もっと丁寧に塗りなさい。そういうのはスネクに任せたほうがいいわ」
ウンディーネさんが冷静にアドバイスしてきた。
続いて、ぽいっと置かれた謎の機械。
「これは、“呪われた体重計”。食べてなくても増える、水飲んでも増える、空気吸っても増える。もう体重が減ることはないわ」
「そんな素敵なアイテムが!!」
わたし、喜んで乗る。
メーターがカタカタ動いて……止まらない。
ぐるぐるぐるぐる、針が振り切れて――
ぶしゅううう。
「……黒い煙、出ましたね?」
パタパタ仰いだら、煙がふっと消えた。
「……やっぱり無自覚、おそるべし」
ウンディーネさんが、ため息をつきながら帳簿を開く。
「なんだか、整理しようと思ったけど……処分品ばっかりね」
「廃棄、廃棄、ぜんぶ廃棄……」
机の上の帳簿には、次々と線が引かれていく。
こうして今日も、わたしの“聖域”は、じわじわと安全になっていったのだった。
でも、この時、誰も知らなかった。――この“聖域”が、過去を開く鍵になることを




