表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/74

11 メイド初仕事は……水害レベルの後片付け!?

《これまでのあらすじ》

勇者認定を受けながらも追放され、行き場を失った少女リンは、魔王と秘書官トミーに拾われ、曰く付きのゴミ屋敷へとたどり着く。

勇者としての力も年齢も疑問視されながら、メイドとして屋敷の掃除を任されることに。

呪いの品に囲まれつつも、自分の居場所を作ろうと奮闘するリンは、台所の片付け中に巨大ネズミの魔物(?)と遭遇。

さらに、瘴気に覆われた水場を清めると、水の精のような女性が現れた。

その姿は、かつて教会で見た“聖女像”にどこか似ていて……リンの胸に、静かに疑問が灯るのだった。


「……誰かと思ったら、ウンディーネでしたか」


部屋の奥から、ひょいっと顔を出したのは——


魔王さまだった。


「あら、誰か? 誰かじゃないわよ!」


ウンディーネと呼ばれた女神様は、ピシャッと水を逆立てて魔王様に水鉄砲をぶっ放す。


「わはは、相変わらず元気ですね」


魔王様は手をすっと上げて、その水を弾き返した。

それに当たったウンディーネの体が一瞬ぐにゃっと歪んだかと思うと、今度は逆襲の大洪水を魔王様にお見舞いする。


「ちょっ、やめっ……!」


私は台所の隅っこで、びしょ濡れになりながら目を丸くした。


なにこれ。神々の遊び??


「ひどい! 二人とも、ひどすぎる!!」


叫んだ瞬間、涙がぶわっとあふれた。

やっと台所綺麗になり始めてたのに!

なんでこんな水浸し!?



「リンちゃん、ごめん!」


「リン、大人げなかった。すまない」


即座に反省モードに入る大人二人。





すると、魔王さまが慌てて隣の部屋に向かって叫んだ。


「ネズミイ、頼む!」


そして、顔をひょこっと出してきたのは——


「ひっ……!」


また、アイツだった。

鍋から出てきた巨大ネズミ! 

いや、あれが“人”扱いなの!?二足歩行ですけど!


「大丈夫、大丈夫。この子は敵じゃないから。台所の守り神、ネズミイ。ね、ネズミイ?」


「……今日は最悪だ。お嬢ちゃんに殴られるし、水精霊と魔王の水遊びの後始末までやらされるとはな……」


ネズミイは、私と同じくらいのサイズのネズミ(?)なのに、超ご立腹でモップを運んできた。


魔王さまをギロリと睨みつける姿、ちょっと偉そう。


「いや、トミーがリンに台所掃除をさせるなんて思ってなかったんだよ。ネズミイのこと、ちゃんと説明してなかったね。ごめんね」


と、のんきに笑う魔王さま


私はネズミイと一緒に叫んでいた。


「こんなのいるって知らなかったら、驚くに決まってるでしょーが!!」


声、ハモった。


「まあまあ、仲良くやってよ。改めて紹介するね」


魔王様は濡れた髪をくしゃっとかき上げながら言った。


「この水の女性はウンディーネ。水の精霊で、我が家の美味しい水を出してくれる頼れる存在。こっちはネズミイ、うちの台所の守り神」


「守り神っていうか、掃除係だろ……。はあ、また台所のカビ増えるわ。瘴気もひどいし……」


ネズミイはモップを押しつつ、ぶつぶつ文句を言ってる。


魔王様に文句を言うネズミって、なんか……じわじわくる。


絵面が強すぎる。


「美味しい水を出せって言うなら、もっと早くここの瘴気をなんとかしてほしかったわ。やっとまともに呼吸できたんだから」


ウンディーネも魔石の上で思いっきり背伸びしている。


あの像水の精霊……だったんだ。

私、てっきり聖女様だと思ってた。


私の呟きにウンディーネが、ぴくっと反応した。


「リンちゃんって、人間……よね? なんで魔界に?」


「それがですね、魔界の門に綻びが出来てしまいまして、向こう側に魔物がちょっと逃げちゃって……」


魔王様が困った顔で説明を始める。


「で、それを回収してたら、見た向こうの人間の衛兵が『魔王復活!』って騒ぎ出しちゃったんですよ。それで、なぜかこの子が新しい勇者に選ばれちゃって」


「えっ! リンちゃんが今度の勇者!? 勇ましい……!」


ウンディーネが目を輝かせる。


「いや、無理だろ。さっき鍋蓋と箒で暴れてたぜ」


と、ネズミイが真顔で追い打ちをかける。


「そうそう。だから完全に間違いなんだよね。でも、前みたいにもうツノ持って帰ってもらうわけにもいかないし」


魔王様は、私をちらっと見て、ふわっと笑う。


「だからこの子には、勇者じゃなくて——うちのメイドになってもらうことにしたんだ」


……その笑顔はやさしかったけど。


冷静に考えたらなんだろう??


勇者にされそうになって、魔王に拾われて、今は魔王城でメイドやってます。


これってどう考えてもバグってるでしょ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ