2 実質入学式
「ちょっとあんた、お弁当ちゃんと持った?」
「大丈夫だって、お母さん」
「そう?あんた久しぶりに学校に行くんだから、シャキッとしなさいよ」
「へいへい、じゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。あ、帰りはちゃん」
ジャスティはドアを閉めた。こっちの世界でも世話焼きなんだなと、少しあっちの世界を懐かしみながらジャスティは自転車にまたがった。
季節は夏一歩手前、はじめここはソ連と聞いた時はてっきりずっと寒いものだと思っていたがどうやらこの世界のソ連は日本と同じように四季が顕著に出るらしい。
「長袖じゃちょっと暑かったかな…?」
そうジャスティは言いながら昨日のうちに場所を調べておいた学校にへと向かっていく。
しかし、この世界を見れば見るほど異世界とは到底思えない。景色も現代的だし文明も思ってた以上に発展しきっている。
ここまで基盤が整っていると革命なんて到底成し遂げられそうにないかな…?なんて思ったりもする。
まぁ、とりあえずはこの世界の異世界っぽいところ、魔法について学ぼう。そこにこの世界のヒントが隠されているかもしれない。
そんなことを考えているとあっという間に学校についた。
その学校の名前は「セイント・アレクス高校」とあった。
とりあえずまずは職員室に行けって言われてたっけ、そんなお母さんの言葉を思い出しながらジャスティは職員室のドアを2回たたく。すると、少しひょろくて目つきが怖い人がドアを開けた。
「あ、すいません事故でしばらく休んでいたジャスティ・ルミナです。私のクラスはどこでしょうか?」
そうジャスティが言い切った後、2,3秒の沈黙の後に目つきの怖い人は言葉を発した。
「ルミナ君、とりあえず中に入りなさい。それと…」
数拍間を置き、こう続けた。
「ノックは4回が基本です。ルミナ君。」
なんかめんどくさそうな人だな、とジャスティは思った。
「…お母さまから話は聞いています。どうやら重い事故にあったとか…」
「まぁ、はい。母によると死にかけのところをギリギリ生還できたとか」
「それは幸運でしたね。…おっと、私の名前を名乗るのを忘れてましたね。私の名前は
「グリラン・カイザー」です。カイザー先生と呼んでください」
「はい、カイザー先生」
ジャスティは見た目に反してかっこいい名前だな、と思った。
「さて、確かルミナ君は1年生でしたね。しかし、事故で休んでいたとはいえ授業をほとんど受けれていないのは問題ですね…」
「お疲れ様でーす、カイザー先生。あれ、その子は誰ですか?」
「うわっ!え、誰?」
その人は音もなくジャスティの背後に立っていた。
「もう、そんなに驚かなくてもいいじゃないですか。それで、この子は誰ですか?カイザー先生?」
「…事故で休んでいた生徒だ。」淡々と答える。
「へぇ…事故で…。それはご愁傷さまです…。」
「いや亡くなってないっすよ」
「あ、そういえばそっか!」
なんだこの人、とジャスティは思った。
「で、なんでそんな不幸な少年が職員室で薄汚いおじさんと喋ってるの?」
言葉に棘がありすぎる。しかし、カイザー先生はそんなことを気にしてはいない様子だ。
「今ルミナ君のクラスをどうしようかと画策していたところです。事故とはいえ、長い間授業に出席できていませんから…」
「それなら、カイザー先生のとこで教えたらいいんじゃないの?」
「いや、私のところに来るのは特別な理由でもない限り認められませんから…」
「いや、充分特別な理由でしょ。ねぇ、ルミナ君…だっけ?ルミナ君もカイザー先生に授業してほしいよね〜?」
「え、いや、僕は別に」
「ほら〜ルミナ君もカイザー先生に教えてもらいたいって言ってるじゃないの〜」
いや何も言ってないよ、とジャスティは心の中でつっこんだ。
「はぁ…。わかりました。ルミナ君は私の特別教室に配属させることにします。ルミナ君もそれでいいですね?」
「あ、はい!これからよろしくお願いします!」
「よかったじゃ〜ん!じゃ、私はこれで〜。」
そう言うと背後に立っていた人は自分の席であろう場所に歩いていった。
「…彼女の名前はサンライト・クーラーと言います。」
「うわびっくりしたぁ!急に耳元で話さないでくださいよぉ!」
「声が大きいですルミナ君…。いいことを教えます。彼女に絡まれるとめんどくさいです。ですのであまり関わらないほうがいいですよ」
だいたいさっきの雰囲気で察しはついていたけど。そう思いながらジャスティはわかりました、と小声で言った。
ジャスティの特別教室生活がスタートした。
「少しこの部屋で待ってて下さい。手続きをしてきます。」
そうカイザー先生は言うと、ジャスティを残して部屋を去っていった。
あの先生、思ったよりいい人だったな。そう思った。
さて、1人になったし革命について少し考えよう。
まずは情報が欲しい。この世界にもインターネットはあるがジャスティが元いた世界とは流行りも情報も歴史も違いすぎる。
特に歴史なんかはその違いが顕著に出ている。元々起こっていることが違うのもあるだろうが情報統制でもされているレベルでこの国の悪いところというのがヒットしない。恐らくはそういった投稿はすぐに消されるのだろう。
それに共産主義のいいところ、悪いところと検索しても出てくるのは
「共産主義は神の政策!」
みたいなのばっかだ。もう少し情報がほしいな…。そう思う。
「お待たせしました。手続きが無事済んだのでルミナ君はこれで特別教室への仲間入りです。」
「…ぶっちゃけて言うんですけどその特別教室って名前、ちょっとださくないですか?」
「はは、この前入ってきた生徒にもそんなことを言われましたよ。そろそろこの名前も変えましょうかね…」
そう言ったカイザー先生の表情が少し暗くなった。恐らくこの教室の名前を付けたのはカイザー先生なのだろう。ごめんなさい。心の中で謝った。
「さて、教室に移動しましょう。今はルミナ君を除くと3人ですがにぎやかな教室ですよ。」
「そういえば聞き忘れてたんですが、特別教室ってどんな人が入るんですか?」
「そうですね…。学校にて重大な問題を起こした生徒や君のように長期間休んでいて授業についていけない生徒、あとは…いえ、彼女は除外して考えるとしましょう。」
「除外?その人は何で特別教室に入ったんですか?」
「それは恐らくこの教室に入ったらわかりますよ。さぁ、着きました。」
ジャスティは恐る恐るドアを開ける。すると、中には女子2人、男子1人が座っていた。
「さ、みなさんこちらを向いてください。今日からこの特別教室の新しいメンバーとなるジャスティ・ルミナ君です。席は…そうですね、どこか適当な場所に座ってください。」
そう言われたジャスティはなんとなく後ろがいいな、と思ったので後ろの席に座ることにした。
しかし、今のところ問題児っぽい人はいなそうだな…辺りを見回し、ジャスティはそう思う。
「ねえねえ、ジャスティ君?だっけ?」
唐突に1人の女子が話しかけて来た。
「あ、うん。」間抜けな返事だ。
「へ〜!かっこいい名前だね!私の名前はペレスト・レボ!ペレちゃんって呼んで!」
気さくな人だな、そう思った。
「ああ、こちらこそよろしく」
「ところで〜ジャスティ君?聞きたいことがあるんだけど…」
「え?いいよ!何でも答える!」
かわいい子だったからついこう言ってしまった。それが間違いだったのだろう。ペレストは笑顔のままでこう問いかけてきた。
「…ジャスティ君はこの国は腐ってるって思うよねぇ?この国には革命が必要だと思うよねぇ?」
なるほど、そういうヤバさか。ちら、とカイザー先生の方を見たが、視線をそらされた。
「で?どうなの?ジャスティ君?」
ペレストはそう執拗に問いかけくる。笑顔のままなのが逆に怖い。
ジャスティは頑張って角の立たない返答をしようと考えた。が、思いつかない。
「どうなのぉ〜?ジャスティ君〜?」
「…俺も革命派かなぁ…?」
そう答えてしまった。実際そうだから間違いではない。
ペレストは真顔になった後、数秒間沈黙した。そしていきなり抱きついてきた。
「ジャスティ君〜!君わかってる〜!そうだよねぇ、この国には革命が必要だよねぇ!もう好き、ジャスティ君大好き!一緒に革命しよ!」
恐らくどっちの返答をとってもバッドルートな負けイベントだったのだろう。厄介な人に目をつけられたな、とジャスティは思いながら今はただ、そんなめんどくさい女の柔らかい体の感触を堪能するだけだった。
やる気が絶望的に出ない、新生茶んです。
夏休みなのに全然書けません。どうしよう。
とりあえず宿題を終わらせないといけないんで楽しみにしてる人がいるかは分かりませんがしばらく投稿はないと思います。
気軽に感想お待ちしてます。
最後までご覧いただきありがとうございました。