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異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第3章 失敗作の逆襲 熱戦のナロパニアン
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第77話 大災害の真相

時は少しさかのぼる。

アイザックスを新メンバーとして加えたNCCは各地でその力をふるい、あまたの街を壊滅させていた。

そして彼らは現在、空港から頂戴したナロパニアンで最も性能の良い飛行機に乗って北に移動していた。気分はまさにピクニックであった。


「カイン。このまま進めばナロパニアンと隣の地区の境界線です。」

「おーそうか、いつの間にかそんなところまで来てたのか。やっぱり最新式は速いな。」


特に目的地を定めず気の向くままに飛行機を飛ばしていたカインたちであったが、いざナロパニアンを抜けだせるという段階になって、さてどうしたものかと少し悩んだ。


「このまま「外」に出ちまってもいいけれども、お前らどうする?せっかくだし総督府でも潰してからにしないか?殺された仲間の仇だしな。」

「俺たちは全然歓迎だが、、、どうだ?新入り君。」


デスターがアイザックスのほうを向いて言った。デスターは粗暴な見た目に反して義理堅い男。

復讐とは直接関係のないアイザックスの意見を聞くのが筋だと考えた。


「俺たちの個人的な恨みなんでアレなんだが、、、寄り道に付き合わせちまってもいいか?」

「俺はもうNCCの一員だ。よほど無茶でもない限り「組織の意見」に逆らったりはしない。」


アイザックスの承認を得たことで、一行はにわかにどのように総督府を攻め滅ぼし、総督のソニックを血祭りにあげるかで盛り上がっていた。

そんな中で、「あのー」と言いながら控えめに手を上げる人物がいた。


「ん?どうしたんだ?ルミナ。」

「えっと、、、私まだ、神様と融合してから一回も魔法を使ってないから、どこかで魔法の試し撃ちをしてみたいなーって、、、せっかく体調も良くなったし、、、」

「、、、あぁ、そう言えばそうだったな。」


言われてカインは思い出した。神の力を得てから今に至るまで、いくつもの街を破壊してきたが、それを主に行ったのはデスターやマックスであり、戦闘狂の2人が楽しそうなので基本的に任せっぱなしにした結果、体から黒いモヤを出しただけだったカイン以上にルミナには神の力を使う機会がなかった。


「体調とかは問題ないのか?」

「うん!あれ以来咳も全くでないしめちゃくちゃ調子いいです!体中魔力がみなぎってる感じもするし早く魔法を撃ってみする!」


いつになくルミナのテンションが高い。以前の彼女は毎日病的なほど低血圧で白い顔をしていたのだが、改めてみると今の彼女の顔は健康そのもの。おそらく生まれて初めて体調がよくなったことで、全能感に満ち溢れているのだろうとカインたちは思った。


生まれつき体が極端に弱かった彼女は、体への負担が小さい最下級の基礎魔法しか使えなかった。

しかし、ルミナはその虚弱さのわりに魔力量が多く、本来指先に灯すライト代わり程度にしかならない「プチファイヤーボール」を、人間とほぼ同じ大きさまで巨大化させて、「攻撃魔法」として扱うことが可能であった。


もっとも、それだけで生きていけるほど彼女の生まれ故郷である「魔道国家マドギルプス」は甘くなく、上級魔法を呼吸するように使う彼女の家族から散々バカにされた上で恥晒しとして実家を勘当されたわけであったが、あくまでそれは国民の多くが魔法高いであるマドギルプスを基準にした場合の話である。


カインたちが最初にルミナの魔法を見た時、その威力に彼らは大いに驚いた。同時に、もしいつか彼女の体調が良くなったら、今以上の戦力になるに違いないと期待したのであった。


そして現在、すこぶる元気そうなルミナの様子を見て、カインたちは万全のルミナがどんな威力の魔法を撃つのかを見てみたくなった。


「そうだな、、、じゃあどっかの街で試すか、、、よしピエール!予定変更!どっかの街の近くに着陸だ!」

「了解です。」


やがて一行を乗せた飛行機は、高い丘の上に着陸した。そこからは、見渡す限りの建物が立ち並んだ大きな街が見える。


「よーしルミナ。あの街が標的だ。あそこに魔法をぶち込んでやれ。」

「わ、分かった!」


ルミナはやや緊張した様子で一歩前に進み出ると深呼吸をした。


「デッカいのをぶちかましてやりな!!」


デスターが高いテンションで手をパンパン叩くと、それに釣られてマックス、ピエールと続き、やがて全員が手拍子をしてルミナを煽った。


「やれ!やれ!やれ!やれ!」


のせられたルミナはだんだんとやる気に満ちた顔つきになっていく。


「よ、よーし、、、やるよ、、、!」


ルミナは再び大きく深呼吸をすると、杖の先に魔力を込める。放つ魔法は当然、これまで何度もNCCの大砲としてルミナを活躍させてきた得意技、


「プチファイヤーボール!!」


ルミナが大きな声で叫ぶ。他のメンバーは全員、ルミナが魔法を出したらとりあえず歓声を上げるつもりであった。

しかし、結論を言えばそうはならなかった。その魔法を見た全員が言葉を失ったからである。


「いや、、、魔法に詳しいわけじゃないけど、、、これ明らかに『プチ』じゃないよな、、、?」


アイザックスの言葉がメンバー全員が心の中で考えていたことを代弁していた。

カインたちは、万全のルミナの「プチファイヤーボール」は大体3メートルくらいの大きさになるのではないかと予想していたが、その予想は大きく裏切られた。

ルミナが掲げた杖の先端には直径数十メートルはありそうな超特大の火の玉が出現し、少し離れた場所にあるカインたちの頭上までも覆い尽くしたのである。


「あ、あわわ、、、!ど、どうしよう、、、!」


これほど巨大な魔法ができることはルミナにも想定外だったのであろう。彼女は両手で杖を持ったまま助けを求めるようにカインたちの元に駆け寄ろうとする。


「おいおいおいおい!!!危ない危ない危ない!!!近づくな!!!」

「お、重いぃ、、、!」


火の玉の重量がルミナにのしかかっているのか、彼女はプルプルと体を震わせて、倒れそうになってしまう。もしもそのはずみでルミナの「プチファイヤーボール」が地面に接触し、この場で爆発してしまったら大惨事は免れない。


「うわーっ!!ダメダメダメッ!!!」

「捨てなさい!あっちに!」


慌てたカインは街の方を指さして叫んだ。


「えっと、、、えい!!」


ルミナが力一杯杖を振り下ろすと、火の玉は街の方へ飛んでいった。


「ふぅー、、、助かったー、、、」


デスターは危機は去ったと腕で額の汗を拭い、マックスとピエールは前に進み出て飛んでいく火の玉を見送る。


「、、、街の半分くらいは消し飛ぶんじゃないか?」

「いや、どうだろう、、、デカいとはいえプチファイヤーボールだし、さすがに半径1キロが吹っ飛ぶくらいだと思うが。」


2人が予想しているうちに、プチファイヤーボールは街の中央付近に落ちていく。そして、中央部にあった教会と思われる一際巨大な建物に着弾した。


その瞬間、街の中央に閃光が走った。光は一瞬にして街全体を覆い、カインたちの元へ、、、


(ヤバい!!)


ほんの一瞬の判断で、カインは渾身の魔力を込めて仲間たちを覆うバリヤーを作り出した。

やがて光が彼らの元に到達し、眩しさのあまり彼らは何も見えなくなった。




ほぼ同時刻、ナロパニアンの中心地にある総督府の前では、ランドとレイスが向かい合っていた。

緊迫した面持ちのレイスに対して、ランドはどこか楽しげな笑みを浮かべている。

ランドにしてみれば、それこそ数百年ぶりに楽しく遊べるオモチャが手に入ったのだから、そのような態度になるのも無理もないことであった。


「さぁ、やろうか。「遊びの続き」を、、、ん?」


ランドが戦闘という名の「遊び」を再開しようとした時、彼は遠くの地で大爆発が起こったのを感じ取った。


(、、、なんだ?)


さすがのランドも、戦闘中は探知魔法を弱めるため、具体的にそこで何が起こったのかまではわからない。しかし、はるか北方の場所で何かとてつもない破壊力を持った爆発が起こったことは感じとれた。

そしてその爆発が範囲を広げながらこちらに迫ってくることも。

どうやら、目の前のレイスたちはそのことに気づいていないらしかった。


(せっかくのオモチャが吹き飛ばされるのは勿体無いな。)

「チ、、、」


ランドは仕方なく、周囲一帯を覆うバリヤーを作り出した。

その直後、光がバリヤーの外側を覆い尽くし、その内部も光で包まれる。


「うわっ!!」


その光を受け、レイスたちは慌てて地面に伏せた。ランドだけは立ったまま、爆音を出しながら周囲を覆い尽くす炎の様子を観察していた。


(これは、、、魔法か?この範囲と威力、、、俺がフルパワーで「獄炎」を撃ったとしてもはたしてこうなるかどうか、、、)





一方その頃、ナロパニアンより北方の上空では、1つの都市ほどの大きさのある飛行型の戦艦が光を超える速度で空を駆けていた。


「キーレ大総督、目標地点まであと3時間半です。」

「よし、そのまま前進。」


戦艦の艦橋(操縦室)にて、大総督と呼ばれた、長い髭を携えた壮年の屈強な男、キーレは落ち着いた、しかし聞く者全てをを威圧するような重厚な声で部下に命令を下した。

彼は、ナロパニアンよりも北方の地区一帯を統べる総督であり、その威圧感のある風貌と、ナロパニアンよりさらに広大な世界を1000以上も統治する圧倒的な剛腕、そして、転移者に与えられた、全てを捻じ伏せる強力なチートスキルにより、部下からは敬意を込めて「大総督」と呼ばれていた。


その実力は転移者からも一目置かれており、「いずれは転移者様の側近になる」と周囲の人間からは目されていた実力者であった。


そんな彼は現在、直属の軍団を率いて戦艦でナロパニアンに向かっていた。先日、中央の命令により逆賊レイス・ビネガーを成敗するため派遣した20人の「特級冒険者」との連絡が途絶えたためである。


「大総督、やはり特級冒険者たちとは連絡が取れません。戦死が濃厚かと。」

「そうか、、、やはりあんな小僧たちでは務まらんだろうと思っておった。賊はコウガ様の側近であったタマ殿を倒したらしいからな。」

「ナロパニアン総督府とも連絡が取れません。ひょっとするとソニック総督も、、、」

「関係ない。逆賊は殲滅するだけのことだ。」


ナロパニアンの支配者ソニックが倒されたという可能性に言及されても、キーレの自信は微塵も揺らがない。それが単なる驕りではないことを、部下の兵士たちはよく知っていた。


キーレの戦闘能力は、タマやソニックとは明確に違うステージにある。加えて何よりも恐ろしいのは彼の用意周到さであった。

特級冒険者を派遣した直後には彼は部下に招集命令を出しており、万一の時にすぐに出撃できるよう待機させていた。それによりキーレは冒険者たちから連絡が途絶えた数時間後には500人を超える配下のチートスキル使い、さらに強力な神域武具による武装を施した百万もの兵士と共に戦艦に乗り込んで出撃することができていた。


加えて彼らが乗る戦艦も、キーレの指示によりビッグバン級の威力のレーザーを無数に打ち出せる砲台が何万と設置され、さらに戦艦自体もそれらのレーザーを至近距離で撃ったとしても容易く跳ね返す鉄壁さを誇る、まさに難攻不落の要塞と化していた。


自分が一度潰すと決めた相手には決して油断せず、全力でもって徹底的に粉砕する。それがキーレのやり方であった。


(レイス・ビネガー、そしてグレゴリー・グラッドストンよ、気の毒だがお前たちの勝利は万が一にもあり得ない。転移者様に歯向かうことがいかに愚かな行いであったのか、数時間後、たった1分で骨の髄まで思い知らせてくれるわ。)


レイスたちが恐怖に怯える顔を想像したキーレが口角を釣り上げた時、慌てた様子で操縦士が叫んだ。


「大総督!前方に巨大なエネルギーを確認!」

「なに?」

「とんでもない広範囲です!こっちに向かってきます!」

「船を停止させろ。」


キーレの命令で操縦士は戦艦を止め、目の前の巨大なモニターに外の様子を映しだした。

その光景を見た時は、百戦錬磨の猛将キーレも、流石に動揺は避けられなかった。


「なんだ、、、あれは、、、」


その光景はまさにこの世のものとはとても思えないものであった。なにしろ視界のほぼ全て、地平線の端から端、はるか天空までその全てが、炎のような赤い何かに覆い尽くされていたからである。


(炎の、、、魔法、、、?いや、ありえん!魔法であんな巨大な爆発が起こるはずがない!)


経験から、目の前のエネルギーが魔法によるものの可能性に思い至ったが、現実的に考えてそれはありえないと自分に言い聞かせた。


「ち、近づいてきます!!」


操縦士の言葉に、兵士たちはにわかにざわめきだす。そんな彼らをキーレは一喝した。


「狼狽えるな!この戦艦の装甲を忘れたか!転移者様以外でこの戦艦を破壊できるものなど」


キーレの言葉を遮るように、艦橋内のモニターが次々と爆発するように割れ、操縦用の機械が火を吹き始めた。それの原因が目の前の謎のエネルギーの塊であることは誰の目にも明らかであった。

当然、難攻不落を誇る戦艦の内部が破壊されるなど初めてのことであり、艦内は半ばパニック状態となる。


(まさか、あの炎が原因か、、、?直撃ですらなく近づいただけで!?)

「ク、、、ッ!やむを得ん!!撤退だ!!アレからすぐに距離を取れ!!」

「そ、操縦がまったくききません!!」

「なんだと!?」


撤退の判断をするももはや打つ手なし。彼らを待つのは「死」。ただそれだけである。


「ば、馬鹿な、、、うわぁぁぁぁぁっっっ!!!」


膨らみ続ける爆炎がついに戦艦に到達する。迫りくる炎に対し。戦艦は悲しいほど無力であった。

戦艦は炎が直撃したその瞬間崩壊していき、1秒ももたず乗組員ごと完全に消滅してしまった。




ナロパニアンの南方、アルフガンドの都市の一つミケーア。

すっかり平和になったこの町で、町の守護者ミアは今日も旅立った幼馴染グレッグの無事を祈っていた。

その時、


「ッッッ!!?」


突如、巨大な魔力を感じたミアは慌てて教会を飛び出し、空を見る。しかし、空は雲ひとつないいい天気で、町の様子も平和そのものであった。


「どうかしたのか?」


同じく教会に来ていたアバンが心配そうに彼女に聞く。


「いや、、、すまない、気のせいだった。」


実際のところそれは気のせいではなかった。アルフガンドの周囲ではルミナの魔法による破壊の嵐が吹き荒れていた。


アルフガンドが無事だった理由、それは、コウガが愛するタマのために万一に備えて外からの攻撃を防ぐ強力なバリヤーをアルフガンド全体に張っていたからなのだが、ミアがそのことを知るはずがなかった。




ルミナが力試し感覚で放った「プチファイヤーボール」は、ナロパニアンを容易く飛び越えて、ロディニア帝国内にある数多の世界、転移者が宇宙を支配するよりも前、「1秒よりも短い時の間に「無限」を超える数の宇宙を生み出す」という、創造神の仕事の実に「百万年分」に相当する範囲の世界をわずか数十秒のうちに跡形もなく消し去った。


そんな大惨事の発端であるルミナおよびNCCは、バリヤーの中で呆然と、周囲を覆い尽くす破壊の炎を眺めていた。

誰か彼もが絶句する中、魔法を放った張本人のルミナは呆れたように口を開いた。


「いや、、、そうはならないでしょ、、、」

読んでくださりありがとうございます。


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