第76話 次の目的地
激闘の翌日の朝、
「それにしても驚いたな、まさか朝になったら元に戻っているなんて。」
更地になったナロパニアンの中で唯一、ランドのバリアーのおかげで無事だった城。その城の中の食堂で、グレッグが作った料理を食べながらノルが興味深そうにつぶやいた。
「うん、、、俺も驚いた。」
ノルの目の前に座るレイスの姿は、昨日とは打って変わって、赤髪と白髪が混じった男性の姿に戻っていた。いまだに昨日ランドを圧倒した女性と目の前にいるレイスが同一人物だということを信じ切ることができなかった。
「昨日アレって結局何だったんだ?」
「いや、それがさぁ、、、」
質問をされたレイスはサクサクのトーストをほおばりながら少し困ったような顔をして、天井のほうを見ながらつぶやいた。
「俺もよく分からないんだよね。なんか、気づいたときには女の体になってて力もみなぎっててさ。別人になったみたいだった。勢いのまま戦ったけど、俺も混乱してたよ。」
あやふやなことしか言わないレイスの回答に困ったノルは「それじゃあ、、、」と続ける。
「フレイヤさんはどうなんだ?何か知っているんじゃないのか?」
ノルはレイスの体を指さした。「女神」であるフレイヤであれば何か知っているのではないかと思ったのである。
「疲れ果ててまだ寝てるよ。ところで、君と融合した神には聞いてみなかったのか?」
ノルも「運命の神フォルトゥナ」と融合した「適合者」である。ノルの中の神に聞きはしなかったのかとレイスは当然の疑問を呈したが、それを聞いてノルは少し顔をしかめた。
「いや、それがさ、なんか俺の場合、あんたらと違って「体の中に神さまがいる」って感じがしないんだよ。なんというか、魔力は確かに上がっているんだが、それ以外はいたっていつも通りだ。」
「え?そうなの?」
「うん。一応声もかけてみたけど体から出てきたりしないし。」
2人が不思議がっていると、デザートを持って歩いてくるグレッグの中からパナケイアが出てきて彼らの質問に答えた。
「たぶんだけど、、、ノル君は「シンクロ率」的なのが高いんじゃない?」
「「シンクロ率?」」
「うん。神と完全に適応してるからノル君の体と完全に一体化してるみたいな、、、昨日のレイスの変身もそれが関係してるかも、、、ごめん、私も詳しくないからただの予想だけど、、、」
パナは若干自身が無さそうであったが、なんとなくイメージができる理屈であったため、その説明を聞いた二人は納得した。何より、プライドの高いノルはほかの2人よりも「シンクロ率」とかいうのが「優れている」というのを聞いてご満悦であった。
「あのーパナ様?私にも何かそういう能力を得られたりするのでしょうか?」
パナの言葉を聞いたグレッグが期待に満ちた目で質問をする。現状、回復役に専念しているが、戦闘面でもレイスの役に立ちたいと思っていた。
「うーん、、、」
パナはグレッグの顔を覗き込んだ。
「、、、これからの努力次第、、、かな?」
パナは言葉を濁しつつグレッグから顔を背けるとそそくさと彼の中に戻っていった。
「あ!ちょっと!」
グレッグが何度も呼びかけるものの、パナはそれっきり黙ってしまった。その沈黙が答えだと察したグレッグはがっくりとうなだれる。
「、、、まぁ、落ち込むなよ。ほら、伸びしろがあるって考えたらいいじゃん。」
落ち込むグレッグを見かねて、ノルが彼の肩をポンと叩いた。
「はい、、、ありがとうございます、、、」
「、、、ところでグレッグさぁ、昨日城の中見回ってたんだろ?何か見つかったかい?」
若干気まずくなってしまったので、レイスが強引に話題を変えた。昨夜レイスは疲労のあまりすぐに寝てしまったが、グレッグは役立つものを拝借するために夜遅くまで城の中を散策していたことをノルから聞いていたのである。
「え?ああ!そうでした!見つかりましたよ!いいものが!」
グレッグは一転して元気になるとあっという間にデザートを平らげ、興奮した様子で2人を招いた。
案内されてたどり着いたのは城の宝物室。とてつもなく広い部屋の中には、ソニックが集めたのであろう目も眩むような金銀財宝や明らかに素晴らしい画家が描いたのであろう絵画が所狭しと並ばられている。
だが、それ以上に目を引くものが、部屋の中心にはあった。
「これは、、、飛行機?」
「そうです!機能ちょっとマニュアルを見てみましたが、どうやらワープ機能がついてるようなので、どんな遠くでも一瞬ですよ!」
グレッグの目はまるで少年のようにキラキラしていた。
(もしかして、、、メカが好きなのか?)
レイスがグレッグの好きなものを想像していると、隣でノルも何かを考え込んでいた。
(ワープなんてナロパニアンには存在しない技術だ。おそらくは転移者ってやつから直接もらったもの。どうやらソニックは転移者からかなり信頼されていたみたいだな。)
「まぁいいや。なんでも。」
ノルは笑顔でその飛行機に近づくと飛行機のタイヤ部分をコンコンと叩いた。
「コイツなら多分移動もずっとマシになるだろう。これであのオンボロ飛行機は捨てちまって永遠におさらばできるだろう。」
「何を言ってるんですか?」
「え?」
ノルの言葉に対して、グレッグは言ってる意味がわからないとでも言いたげな反応を見せる。
「ミシェルは連れて行きますよ、当然。」
「ハァッ!?もう乗ることなんてないのに!?」
「当たり前でしょう。我々をここまで乗せてきてくれた貢献者なんですから。それに、またそのうち乗ることもあるかもしれませんし。」
「何考えてんの!?ただでさえ貴重なマジックバッグをあんなガラクタで圧迫するの!?アホなの!?」
「なにおうっ!?」
グレッグとノルの取っ組み合いの喧嘩がまた始まった。
(この2人は相性が悪いのだろうか、、、それとも逆に相性がいいのだろうか、、、)
2人の喧嘩の様子をどこか人ごとのように見ながら、レイスは考えていた。
「さて、それじゃあ今後の方針を話し合うわよ。」
「はーい議長。」
昼過ぎになり、ようやく起床したフレイヤを交えて、レイスたちはこれからどのように動いていくかを話し合うことになった。
「現状、私たちは新しい仲間と、レイスの新しい力、そして考えうる限り最高の移動手段を手に入れたわ。私たちの「強化」という面で言えばかなり順調ね。」
話のテーマそのものは明るかったものの、それを話すフレイヤの声色は決して明るいものではなかった。
「ですが、いいことばかりではないですね。」
グレッグが補足をするように言葉を発した。グレッグの言葉を聞いたフレイヤは頷く。
「ええ、昨日の戦いの中で起こった「謎の大爆発」。それを転移者たちが認識していないはずがないわ。きっとあれを私たちの仕業だと思うでしょうし、それに対抗できるよう、さらに強力な手下を送り込んでくるはずよ。」
「手下じゃない。」
グレッグとパナとノルがフレイヤの言葉に頷こうとした中で、レイスだけはハッキリと否定した。
「少なくともコウガは、絶対直接仕掛けて来る。コウガだけじゃない。他の転移者どもの性格がやつと似たり寄ったりなら、そいつらも来るはずだ。」
「ど、どうして分かるの?」
フレイヤに聞かれたレイスは、10年以上前のコウガの様子を思い出して、眉間に皺を寄せながら返答する。
「あいつに実際に会ったから分かる。あいつは「自分より強いかもしれない存在」を絶対に認めることができない。自分たちを神格化するようなやつらだからな。きっと今頃、不安でいっぱいのはずだ。そんなやつが部下に丸投げするとは思えない。絶対に直接、自分の手で始末しようとするだろう。」
「、、、、、、。」
レイスの断言に近い予想。その妙なリアリティに、一同は黙りこくってしまった。
「、、、仮にレイスの言う通りだとすれば、今後はあの転移者と直接戦うことになるかもしれないということですか、、、。」
「面白いじゃないか。」
恐怖を隠しきれていないグレッグとは対照的に、ノルは不敵な笑みを浮かべる。
「「アーノルド・ベスティリオーネの英雄伝説」はド派手でなくちゃいけない。三下どもをチマチマ倒していくのも面倒だ。転移者だろうがなんだろうが「来るなら来い」ってやつだ。」
ノルはそう言って立ち上がると、テーブルの上に広げられた巨大な地図の真ん中を指差した。
「場所が分かってるならもう行ってしまおうぜ。奴らの根城に。」
あまりにも自信満々なノルの様子に、グレッグは若干引き気味であった。
(い、一体この自信はどこから来るんだ、、、?)
グレッグの困惑をよそに、レイスも椅子から立ち上がると、ノルに呼応するように同じ箇所を指差した。
「行こう。今度こそ、コウガをぶっ潰してやる。」
それに続いて、フレイヤとパナも同じ箇所を指さす。
「まぁ、こうなったら行くしかないわね。」
「うん。行こう。」
「、、、、、、。」
グレッグはしばらく考えていたが、故郷への置き手紙に「英雄になってくる」と書いたことを思い出すと、両手でパンパンと頰を叩いた。
「分かりました!行きましょう!もう行ってやりましょう!」
5人全員が地図の一箇所を指差すことで、次の目的地は決まった。
次にして最後の目的地は、統一帝国ロディニアの中心地であり転移者の総本山、「神都カエラム」。
読んでくださりありがとうございます。




