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異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第3章 失敗作の逆襲 熱戦のナロパニアン
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第72話 ナロパニアン最終決戦(4)

どういうわけか一瞬で地獄の光景となったナロパニアン。その中でランドのバリアーによって無事だった城を含めたごく狭い範囲。周りすべてが真っ黒に焦げているのにその場だけが明らかに浮いている。

そんな異常な空間でレイスとランドは向かい合っていた。


「行くぞ。」


ピリピリとした緊張が漂う中、最初に動いたのはランドであった。彼はレイスに接近し、突きを放つ。


(見えた!)


ランドの攻撃を見切ったレイスは彼の拳を左腕で受け止める。


「ほう、、、」


レイスが攻撃を防いだのが予想外だったのか、ランドは一瞬動きが止まった。


「ウオオオオオオッ!!!」


レイスがその隙を見逃すはずもなく、彼はランドの顔を思い切り殴り、ランドの体は勢い良く吹き飛ばされてバリアーの外に飛び出した。


「まだまだ!!」


レイスも彼を追いかけてバリアーの外に飛び出す。ひとたびバリアーの外に出ると、黒焦げの大地と化したナロパニアンはそれを焼き尽くした「何か」の余熱で、常人であれば浴びた瞬間に蒸発してしまうほどの高熱の空気で満ちていた。融合者であるレイスでさえ息苦しさを感じるほどであるが、当然彼にそれを気にする余裕などない。彼は一心不乱にランドを追いかける。




「お、おい!どうする!?あいつら外に行っちまったぞ!?」

「決まってるでしょう!!私たちも追うんですよ!!」

「本当に出て大丈夫か!?」


その場に残されたグレッグとノルも、レイスの後を追いかけて走り出した。




「食らいやがれ!!」


レイスは飛んでいるランドに追いつくと追撃のパンチをくらわして彼を地面にたたきつけた。


「う、、、」


地面にたたき落されたランドがゆっくりと立ち上がる。レイスにはランドに態勢を立て直させるつもりなどはなく次々と攻撃を加えていく。


「オリャァァッ!!フェイタル・パンチ!!フェイタル・パンチ!キック!キック!」


1発1発がタマを仕留めた渾身の一撃に匹敵する威力。そんな攻撃を絶え間なく連続で浴びせていき、ランドの体には少しずつ、だが確実にダメージが積み重なっていく。


(こいつの言う「20%」が本当かどうかなんてどうでもいい!とにかく今は最大のチャンスだ!ここで一気に決めてやる!!)

「ウオリャァァァァッッ!!!「デッドリー・コンボ」!!」


たった今思いついた新技の名前を叫びながらレイスはひたすらにランドにパンチや蹴りを繰り出していく。


「ウオオオオオオッ!!」

ガッ!


レイスの連打はしかし、とうとうランドによって腕を掴まれることで止められてしまった。


「ク、、、ッ!」

「油断した、、、な!」


ランドはレイスの腕を掴んだまま肘で彼の胸を強打する。それによってレイスの胸骨が粉々に粉砕され口から大量の血を吐くのだが、


シュゥゥゥッ、、、


レイスの体が緑色の光に包まれて胸の傷があっという間に修復される。


「よ、よかった!間に合った!」

「熱ッ!熱ッ!」


よく見るとグレッグとノルが遠くから熱さに苦しみながら走ってきており、彼の魔法によってレイスの傷が治ったのだということがすぐに分かった。


「大したものだ。俺の「20%」にだいぶ対応できるようになったじゃないか。」


ランドの体にできていた傷も、彼自身の魔法によって治る。


(チクショウ、、、また振り出しか、、、)


傷ついた体を回復させることができるのはグレッグだけではない。今の連続攻撃でランドを仕留めきることができなかったのはレイスにとってかなり痛手だった。


「ハァ、、、ハァ、、、」

(落ち着け、、、大丈夫だ、、、まだチャンスはあるはずだ、、、グレッグがいる限り戦闘の継続は可能なんだから、、、)


常に余裕の態度を崩さず、一向に倒せる気がしないランドにうんざりしながらも、レイスは何とか呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。

レイスの戦意が衰えていないことを感じたランドは嬉しそうに笑った。


「いいぞ、まだまだやる気のようだな。そうでなくては。さて、、、」


ランドは死の大地となったナロパニアンを見渡した。


「正直、故郷を破壊するのは気が引けたんだが、、、こうなってはもう関係ないな。」

「?」

「見せてやろう。「30%」だ。」


その言葉と同時に、彼の体からこれまで感じたことがないほどの強烈な魔力が放たれる。その魔力のすさまじさたるや、あれほどの強敵だったタマやソニックがヒヨコにさえ思えてしまうほどであった。


「な、何が30%だ!くらいやがれ!」


ノルは近くにあった真っ黒な熱い石に磁力を付与してランドに投げつける。石はどんどん加速していってランドの顔面を直撃するかに思われたが、


「フ、、、」

シュワッ

「え?」


石はランドの顔に当たることなくその直前でチリとなって消えてしまう。


「最初は鬱陶しかったが、、、魔力で消滅させてしまえばどうということはないな。」


体から漏れ出る魔力だけで周囲にあるものを消滅させる。そんな明らかに常識から逸脱した行為をごく自然のようにランドはやってのける。「これこそが常識だ」とい言わんばかりに。


「ク、、、ッ!」


もう何度目かも分からないランドの常識外れの行動に、レイスは驚愕を通り越して呆れの感情さえわいてくる。


「本当は俺は魔法のほうが得意なんだ。ただ威力が大きすぎてちょっと強く魔法を撃ったらすぐに星だろうが何だろうが滅びてしまうから、なるべく使わないようにしてたんだが、、、ナロパニアンが滅びた以上は関係ないし魔法解禁だ。ここからは「一味」違うぞ。」

「何がどう違うと、」

「獄炎」


レイスが言い終えるよりも先に、ランドは手を頭の上にあげ掌に炎の魔法を出現させる。その直径五メートルはあろうかという巨大な火の玉はタマの電気魔法とは比べるのもおこがましいほどの魔力を放っており、三人は血の気が引いた。


「コレ、受け止められるか?」


ランドは火の玉を無造作にレイスに投げつける。受け止めようとすれば大ダメージは必至。かといって避けたらとんでもないことになる。それを察したレイスは手を大きく前に突き出して火の玉を受け止めた。


「フググググ、、、ッ!」


「獄炎」という名前の火の玉はガントレットを容易く粉砕し、レイスの腕を焼いていく。しかしレイスにはそこから逃げることはできなかった。


「ウオアァァァァッッ!!!!」


渾身の力を込めてレイスが腕を振り上げると、「獄炎」は超高速で空に飛んでいく。数秒後、「獄炎」は空で大爆発を起こし、空は一瞬赤く染まった。


「やるなぁ、ビッグバンの1兆倍は威力があるのに。ここで爆発してたらナロパニアンの4分の1くらいの面積が跡形もなくなっていたところだ。」

「クソ、、、!」


ピンチを脱したレイスたちであったが犠牲は大きかった。レイスの両腕はその半分以上の肉が焼き尽くされて骨が見えており、その骨も残った肉も真っ黒でほとんど炭になっていた。


「ヤバい!ヒール!」


レイスの腕の状態を見たグレッグが慌てて回復魔法をかけたことで、レイスの腕は綺麗な状態に戻る。


「あ、ありがとう、、、ハァ、、、ハァ、、、た、助かった、、、」

(ん、、、?レイスの息が荒い?グレッグの魔法は全回復させるのではないのか?)


回復魔法をかけてもらったのにも関わらず疲労困憊といった様子のレイスに、ノルは違和感を感じた。


「やることは一緒だ、、、俺が攻撃するから、、、二人はとにかくアイツの妨害をしてくれ、、、」

「いや、でもさっきうまくいかなかったけど、、、」

「これしか方法はない!」


レイスは再びランドに突っ込んでいき、渾身の右ストレートを放った。しかし、


ガンッッ!!


レイスの拳はランドに当たることなく彼が張ったバリアーによって防がれる。


「な、、、!」

「言ったはずだ。魔法解禁だとな。」


今度はランドのほうがレイスの胸を指さし、指から光線が放たれて彼の胸を貫いた。


「カ、、、!!」


数歩後ずさりして倒れそうになったがグレッグの魔法が間に合ったことにより傷は塞がり。何とか持ちこたえる。


「ま、まだまだぁッ!!!」


気合を入れなおしてランドへの攻撃を再開しようとするが、彼の体に異変が起こった。


ガクン!

「、、、、、、え?」

(レ、レイス、、、)


一歩前に出ようとしたとき、そのまま足が折れて地面に倒れてしまった。


「な、なんで、、、?」

ガクガク ガクガク


立ち上がろうとしても足が震えるだけで、一向に立つことができない。


「お、おい!お前の魔法が効いてないんじゃないのか!?」

「そ、そんなはずは!」


今までにない事態に、グレッグとノルも困惑する。

そんな中で、その様子をじっと見ていたランドだけが何かに気づいたような表情をして、それからフゥとため息を吐いた。


「残念だがもう終わりだな。勝負はついた。」

「なにを、、、まだ、、、」


レイスはなおも立ち上がろうとするが、ただ足が震えるばかりであった。


「ク、、、ソ、、、なんで、、、」

「簡単だ。お前自身が戦うことを拒否しているからだ。」

「なに、、、?そんなことは」

「「そんなことはない」と言いたいのだろう。だが事実だ。お前自身がもう戦える状態にない。」

「馬鹿な、、、傷は治っているはず、、、」


レイスの体には傷一つないし、後遺症もない。それはレイスも自覚していた。だから余計に、立ち上がることができない理由が皆目見当もつかない。


「戦えない状態なのはお前の「肉体」ではない。お前の「精神」だ。」

「え、、、?」


直後ランドから示された答えをレイスは理解することができなかった。


「人間の体を動かすのは「肉体」だけではない。「精神」も同じかそれ以上に重要だ。精神が消耗していればたとえ肉体自体に余力が残っていたとしても動けなくなる。仕事終わりのようにな。」

「、、、、、、、」

「致命傷を負うことによる精神的なダメージは並ではない。そこから立ち上がるのはそれだけで驚嘆すべきことだ。ましてやお前はこの短時間で百回以上は死んでは生き返ってを繰り返している。口では強がっていても、すでに体を動かすために必要な精神が擦り切れてしまっているのだ。」

(そうか!あの息切れは、、、)


ランドの言葉を聞いたノルは合点がいった。グレッグの魔法で全回復したはずのレイスが疲労困憊だったのは、精神が消耗しているためであった。


「ざっけんな、、、まだやれるさ、、、!」


レイスは足を押さえながらなんとか立ち上がる。しかし、その足は生まれたばかりの小鹿のような有様であり、まさに「立つのがやっと」といった様子であった。


「お前も気づいているはずだ。俺が力を抑えているのがハッタリではないことに。たしかにお前は戦うほどに強くなるようだが、その有様でこれから何百、何千と死にながら戦い、俺を倒すことなどできるのか?」

「俺は、、、まだ、、、」

「無理だ。」


ランドは冷たく言い放つと、手に真っ黒な電気の塊を出現させる。


「誇りをもって逝くがいい。お前のことは俺の脳内に記憶される。」


三人はランドがレイスにトドメを刺そうとしているのを察した。グレッグとノルがレイスを庇うように前に出ようとする。


「やめっ、、、」

(レイス!逃げて!)

「「50%」、、、「黒雷槍(こくらいそう)」!」


グレッグとノルの制止も、フレイヤの呼びかけもむなしく、音も光も、何もかもを置き去りにした雷がレイスの胴体を貫いた。腹部に大穴が開き、体のいたるところが炭になったレイスは十数メートルも後ろに吹き飛び、ピクリとも動かなくなる。


「レイス!そんな!」


グレッグが慌てて駆け寄り回復魔法をかけるが、レイスの体は治らず、その目は虚空を見ている。

治癒の神パナケイアの能力の限度、それは、「完全に死んだ生物は治すことができない」ということ。


「レ、レイ、、、ス、、、」


絶望的な光景を見たグレッグとノルは膝から崩れ落ちる。

沈黙の場に、ランドの無情な声が響き渡る。


「レイス・ビネガーは死んだ。」

読んでくださりありがとうございます。

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