第71話 ナロパニアン最終決戦(3)
「よし。、、、、、、、、、、、、で、いくぞ。」
レイスは左右にいる仲間たちに小声で支持を出した。
「おっし。オリャァァァッッ!!」
直後、レイスはランドにまっすぐ向かっていく。
「単細胞め。突っ込むことしかできないのか?」
ランドはあきれた様子で、突っ込んでくるレイスを迎え撃とうと拳を突き出した。
「なんの!」
ガッ!!
「ムッ?」
レイスは左腕でランドの腕を弾いてみせた。
「そう何度もくらってたまるかよ!!」
そう叫ぶとレイスはランドを殴り飛ばす。さらに彼の攻撃はそれで終わらず、飛んでいった彼に追撃を行おうとする。
「調子に乗るなよ、、、ッ!」
ランドはすぐさま起き上がってレイスに手を伸ばす。すると、彼は自分の手に「N」の字が浮かび上がったのが見えた。
(なんだ?)
ランドが不審に思った次の瞬間、石が高速で飛んできて彼の腕に激突した。
「!?」
「隙あり!!」
当然レイスは一瞬硬直したランドに追撃を加える。彼は腕に石をくっつけたまま、さらに殴り飛ばされた。
(なんだこれは、、、?くっついているのか?)
ランドは腕にくっついた石を剝がそうとしたが、接着剤でくっつけられたように石は腕から離れなかった。
直後、またしても複数の石が飛んできて、ランドの体中に張り付いていく。
「ク、、、鬱陶しい!」
ダメージ自体はないものの、動きにくくなってイライラすることこの上なかった。さらに、
「オリャアアッ!!」
間髪入れずさらにレイスの追撃が入る。顔を思い切り殴られたランドはまたしても吹き飛んでいく。
「チ、、、舐めるなよ!」
ランドは今回は倒れることはなく、殴り飛ばされた後すぐに体勢を立て直す。そして、さらに向かってくるレイスに向けて腕を突き出そうとした。
ボンッ!
ランドが攻撃を繰り出そうとしたまさにその時、いつの間にかランドの側面に移動してきていたグレッグが放ったファイヤーボールが直撃する。
こちらもダメージはないが、煙で視界が覆われる。
(明らかに攻撃目的ではないな。目眩しか。)
ランドがグレッグの狙いに気づいた時には、すでに彼は伸ばした腕をレイスにがっちり掴まれていた。
「貰ったぞ!!」
レイスはランドの腕を掴んだまま、彼の腕に膝蹴りをお見舞いする。その瞬間、彼の腕からは「ボギッ」という音が鳴った。
「クッ、、、」
この戦いで初の明確なダメージを受けたランドは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「オラァッ!!」
レイスはそのままさらにランドを殴り飛ばした。その後起き上がったランドの右腕がプラプラと揺れているのを見てレイスは確かな手ごたえを感じた。
「よし、効いてる!」
戦況は明らかにレイスたちの優勢であった。戦闘の様子を見て、グレッグとノルの中にも希望が見える。
一方ランドは3人の戦闘スタイルを分析していた。
(レイスが攻撃、ノルが妨害、グレッグが回復しつつ隙を見て攻撃魔法でレイスの援護というサイクルか、、、おまけにレイスは常に俺から2人を守るための位置にいる、、、単純だが即興にしてはなかなか隙のない戦闘スタイルだ。)
「思ったよりもずっとやるじゃないか。」
ランドはそうレイスたちを褒めると、即座に自身の腕を修復して見せた。
「なっ!?骨折が一瞬で!?」
(グレッグはさすがに例外として、回復魔法ですぐに骨折が治るなんて普通ありえないぞ、、、!)
ノルはまたしても見せつけられたランドのあまりの常識から外れた能力に驚愕した。ノルの動揺を感じ取ったレイスは仲間の士気を保つために叫ぶ。
「うろたえるな!こっちにもグレッグがいるだろ!」
レイスが言った通り、グレッグさえいれば彼らは常に互角以上の戦況を維持できるのである。ランドもそれに同意するようにうんうんと頷いた。
「確かにそうだな。怪我が一瞬で治るというのはかなーりインチキだと思う。だから、そろそろ解放するとしようか、、、」
その言葉とともにその場の空気が一気に変わった。
「、、、今まで全力じゃなかったのか?」
「ああそうだ。お前たちの力を認めてこれからは、、、全力の「20%」でお相手しよう。」
ランドの言葉を聞いたとき、3人は一瞬思考が停止した。信じられないというよりも、信じたくないという思いのほうが強かった。
「20%、、、だって、、、?」
基本的に冷静なグレッグも動揺を隠せず、呆然とした様子でつぶやいた。
「大丈夫、ただのハッタリだ。そうに決まってる。」
「どうかな?さてレイス。これから俺はお前の胸を攻撃する。しっかりと防げるように準備をしておくように。いいね?」
ランドの言葉はまるで、教師が生徒を諭すかのようなものであった。
「ハッ。そんな見え透いた罠に引っかかるか。」
レイスも当然、ランドのそんな言葉は無視するつもりであった。しかし、
「本当にいいんだな?」
「ッッッ!!!」
ランドから放たれる強烈なプレッシャーに気圧されて、レイスは本能的に腕をクロスさせて自分の胸をかばった。
「よし、いい子だ。」
ボンッッッッ!!!
直後、手首を除くレイスの両腕の大部分が消滅し、胸に大穴が空いた。
「、、、、、、ッ!!」
レイスは声を出すこともできず、糸が切れたマリオネットのように倒れる。そのあまりの光景にグレッグとノルは絶句する。
「おい。」
それを見たランドはグレッグに呼びかけた。
「さっさとこいつを治せ。本当に死んでしまうぞ。」
「え、、、あ、、、」
「ヒュ、、、ヒュ、、、」
ランドに言われてレイスのほうを見ると、彼は今にも消えてしまいそうなか細い呼吸をしていた。
「ッ!ヒール!!」
我に返ったグレッグがレイスに回復魔法をかけると、レイスの腕が一瞬で修復され、胸に空いた穴も閉じて呼吸も安定した。
「ほう、、、本当に便利だな。」
その間ランドは突っ立ったままで興味深そうにグレッグの魔法の様子を眺めていた。
「カハッ!! ハッ! ハッ!」
傷が治ったレイスは激しい呼吸をしながら勢いよく立ち上がった。
「ハッ、、、ハッ、、、た、助かったよ、、、グレッグ、、、」
「あ、、、はい、、、」
レイスはグレッグに礼を言うが、先ほどのショックが大きすぎたのか心ここにあらずといった様子であった。レイスのほうも、ランドから受けた攻撃のことで頭がいっぱいであった。
(全く反応できなかった、、、感じ取ることさえできなかった、、、!)
かろうじてカウンターを入れる余地があった先ほどとは打って変わり、レイスにはランドがどのように動いたのかを全く感じ取ることさえできなかった。
「よーし。次は頭だ、いくぞ。」
(く、来る!!)
レイスはとっさに手で頭をかばうが、
グチャッ!!
直後レイスの両手が吹き飛んで頭部の前半分がなくなった。
「ヒール!」
グレッグは即座に魔法をかけて欠損したレイスの体を修復する。
「そうだ。それでいい。常に回復魔法をかけ続けるんだ。」
「ハァーッ、、、ハァーッ、、、」
なんとか復活して荒い呼吸をしているレイスをランドはおもちゃを見るような目で見下ろした。
「さぁ、倒れてる場合じゃないぞ。お楽しみはまだまだこれからだ。」
「こ、この化け物が!!!」
突如、ノルが背後からランドに飛び掛かる。そして、神の力を宿した拳で彼を殴ろうとするが。
「邪魔。」
ランドは振り返りもせず手の甲で彼の胸を叩いた。おそらくランドにとっては蚊を払った程度の攻撃でノルの胸はぐしゃぐしゃになり吹き飛ばされた。
「雑魚は死ぬか寝るかしてろ。」
「ノル!!!」
グレッグが慌ててノルに回復魔法をかける。幸い命は助かったものの、精神的なダメージからノルはしばらく起き上がれなかった。
それから始まったのは一方的な惨劇であった。
ランドの攻撃によってレイスが致命傷を負い、それをグレッグが治療する。そんなループがかれこれ数十回は繰り返されている。
「クソ!この!」
「ほう、やはりパワーとスピードが上がっていっているな。いいぞ。」
レイスの必死の反撃もランド相手には全く意味をなさず、彼は涼しげな顔でレイスの攻撃を防いでいく。
「つ、強すぎる、、、!いったいどういうチートスキルなんだ?」
ランドのあまりの強さに驚愕するグレッグの言葉に反応して、パナが話しかける。
(グレッグ、、、あの人、、、チートスキルとか持ってないかも、、、)
「、、、え?」
「ホレ。」
ビュン!!
「うわ!」
ランドが何気なく繰り出した稲妻のような突きを、レイスは紙一重で体をよじって躱した。
「ハハハ!いいぞ。反応が良くなっている。回復魔法の効果か?それともアドレナリンか?」
満身創痍のレイスとは対称的に、ランドは非常に楽しげであった。その様子を見たレイスは忌々しそうに舌打ちをする。
「この、、、怪物が、、、」
(レイス!たぶんだけどこの人、、、)
何かに気づいたフレイヤがレイスに話しかけてくる。レイスのほうも、フレイヤが言おうとしていることを察した。
「分かってます。おいアンタ!」
「ん?」
「アンタ、チートスキルとか持ってないだろ?その戦闘能力は全て自力。違うか?」
「ああ、そうだ。」
ランドはそのことをすんなりと認めた。戦闘中にレイスが感じていた違和感。それは、ランドの戦い方に「外付け」感が全くないということであった。
「昔から、魔法も剣も武術も、「覚えよう」とすればその瞬間に覚えることができた。みんなが「難しい」と頭を抱えるものも「失われた技術」とやらもなんでもな。みんなが聞いてきたよ。「どうしてそんな力を持つことができるのか」、「何か秘密があるんじゃないか」ってな。けどそんなものはないし理由も分からない。「できた」からとしか言いようがない。」
断片的に自分の過去を語るランドの目はどこか寂しそうであった。
「逆に俺も不思議で仕方なかったよ。「なんでみんなこんな簡単なことができないのか」、「なんでみんなそんなに弱いのか」ってな。ちょっと触っただけですぐ粉みじんになって死んでしまう。どいつもこいつも弱くて脆くてうんざりだ。宇宙に飛び出しても俺の相手になる奴なんていなかった。俺はこの人生に刺激が欲しい。俺と同じかそれ以上に強い奴と戦わない限りこの渇きは決して無くならない。」
そう言ってランドはレイスのほうを指さした。
「お前は本当に久しぶりの「少し丈夫なおもちゃ」だ。だから少しでも引き延ばそうとしている。頼むから、まだ壊れてくれるな。俺をもっと楽しませてくれ。」
「、、、、、、。」
何の悪気もなく言うランドにレイスは言葉を失った。「言葉」は通じるのに「話」は通じないという感覚。ここまで「別の生き物」に感じられる人間に出会ったのは初めてだった。
(神界にいたころ噂話で聞いたことがあるわ。創造神様が作った生物の中で時々、「手違い」でその世界とは明らかに隔絶した能力を持った生物ができることがあるって、、、)
ランドの様子を見たフレイヤが思い出したように語った。
(こう呼ばれてたわ、「失敗作」と、、、この人は多分その類よ。最上位神様と同等以上の力を持つこともあるとか、、、まさか本当にいたなんて思わなかったけど、、、)
「「失敗作」?チクショウ、コウガのところに行く前になんでこんな変なのと戦わなくちゃならないんだ。」
フレイヤから情報を聞いたレイスは苛立たし気に舌打ちをした。
「さぁ、やろうか。「遊びの続き」を、、、ん?」
ランドがまたしても攻撃を繰り出そうとしたとき、彼は何かに気づいたように遠くを見るような動作をとった。
「、、、?」
レイスもグレッグも、ランドの行動の意図が理解できなかった。
「チ、、、」
次の瞬間、レイスらの周囲一帯を覆うような、巨大な半透明のドームが出現した。
「ッッ!!?何を!!」
レイスとグレッグ、そして目を覚ましたノルの三人は、ランドがなにかしらの攻撃を仕掛けてきたのだと思って警戒した。しかしその直後、
カッ!!!
目がつぶれてしまいそうなほどの光に視界が覆われ、ランド以外の全員が光から逃れるようにとっさに顔を覆いその場にうずくまった。
ゴゴゴゴゴッ、、、
その間、不穏な轟音が絶えず耳に入ってくる。
「う、、、な、なにがあった?」
数十秒後、ようやく光が収まったのを感じたレイスたちは顔を上げて周囲を確認する。その時、彼らは自分の目を疑った。
「な、なんだ、、、コレ、、、」
ランドが発生させた謎のドーム。そのドームは球体のような形となっており、ソニックの城の周囲を地面ごとくりぬくようにして宙に浮いていた。
しかし、彼らが驚いたのはそのことではなかった。
そのドームの周辺、そこにあるはずのものが全て消滅していた。森も、街も何もかも。代わりに残っていたのは真っ黒に焦げた地面。それが地平線のかなたまで広がっていた。
さらに、異変は地上だけでなく空にも表れていた。時間的には昼間のはず。そのはずなのに空が暗くなっていた。いや、「暗く」ではなく「黒く」なっていた。
「天が焦げる」という表現がこれほど合う光景などほかに存在するだろうか。
そう思ってしまうほどの地獄のような景色であった。
「え、、、な、何が起こったの!?おいお前!!なんかしたのか!?」
故郷が一瞬で地獄に変わり半ばパニックになったノルがランドに怒鳴る。ランドのほうはというと、やれやれといった様子でため息を吐いていた。
「何でもかんでも俺のせいにしないでもらえるか?せっかくお前らの命を助けてやったというのに。誰かが遠くで魔法を撃った気配があったからバリアーを張ってやっただけだ。」
「だ、誰かって、、、?」
「知らん。さすがに俺も戦闘中に精密な探知魔法など使わん。だが、この魔力量、、、どうやらこいつもかなり「美味しそう」だな、、、」
故郷が吹き飛んだのにも関わらず、ランドは強大な魔力の持ち主がいるということを知ってうれしそうであった。一方でレイスは思考を巡らせる。
(誰かの魔法、、、?こんな強力な魔法を放てる奴なんて、それこそ転移者や融合者しか、、、)
「まぁ、そんなことは今はどうでもいい。」
ランドは話を切り上げて、浮いていた場所を焼け焦げた地面に着地させるとレイスと向かい合った。
「俺がお前たちを助けたのはお前たちでまだ遊びつくしていないからだ。お前たちが壊れたら次はこの魔法を撃ったやつ。そして最後が転移者だ。今日は刺激的なことが多くて本当に気分がいい。もっともっと俺を楽しませてくれ。」
「ク、、、調子に乗っていると痛い目を見るぞ、、、!」
読んでくださりありがとうございます。




