第66話 栄光の始まり(2)
一方その頃、レイスらがワープストーンで逃げた街よりもはるか西の辺境の地。
その地の統治者である「リード家」の屋敷の敷地内では「惨劇」が繰り広げられていた。
「ウォリャァァァァァァァ!!!!」
デスターの豪快な突進によって、鎧を着た兵士たちが複数人まとめて吹き飛ばされる。ある者は直撃によって全身の骨が砕けて即死し、またある者は高く飛ばされて地面に激突した。
「お、おのれ!!」
仲間の死を見た力自慢の兵士が怒りのままに巨大なハンマーを彼に向けて振り下ろす。しかし、
「ば、バカな、、、!」
その決死の攻撃は悲しいほどに効いていなかった。それどころか兵士は巨大な金属をそのまま殴ったかのような錯覚に陥り、反動で自分の手に受けたダメージのほうが大きいという始末であった。
「フフン!こんなものか!」
お返しとばかりに、デスターは呆然としている兵士の頭に拳を振り下ろす。兜を身に着けていようがお構いなしに、デスターの拳は兵士の頭を粉砕した。
「ハーッハハハハハハ!!!脆い脆い!!もっと強い奴はいないのか!!お尋ね者はここにいるぞ!!」
デスターは胸を張って挑発するが、彼の圧倒的なパワーを目の当たりにした兵士たちは不用意に近づけなかった。
「デスター・オールウェイズ、、、NCCの幹部がここまで強いとは、、、!魔力が多い者は銃を出せ!!遠距離から仕留めろ!!」
「ハッ!!」
指揮官であるリード家の長男「エリック・リード」の命令を受けた三人の兵士は懐から銃を取りだしてデスターに狙いを定める。
「覚悟しろ!化け物め!」
兵士の一人が引き金を引こうとしたとき、
ズドンッ!
突如兵士が持つ銃とは違う銃声が鳴り、引き金を引こうとした兵士の鼻から上が吹き飛んだ。
「ハ!?え!?」
ズドンッ!
訳が分からず混乱していた隣の兵士も、直後頭を吹き飛ばされて倒れた。
「ヒ、ヒィ!!」
ズドンッ!
残った兵士が銃を捨てて逃げだしたとき、三度発射された弾丸が、彼の喉を貫通した。
「ウァ、、、ガ、、、」
声にもならないような声を口から漏らしてその場に倒れこむ。
「おや、カワイソウに、、、一人即死ではなかったか。最近はでかい魔物を撃つことが多かったから少し鈍っているかもな、、、ここでカンを取り戻すか。」
リード邸の庭からおよそ300メートル離れた場所にある大木のてっぺんで、かつてリード家の子息の一人だったマックス・リードは静かにライフルを構え、屋敷を守る兵たちを次々と撃ち殺していった。
「よーし、いい感じだな。」
デスターから少し離れた場所から様子をうかがっていたカインとルミナは、デスターの暴れっぷりを見てご満悦であった。
「カイン、どうやら兵はほとんど片づいたようです。伏兵らしいものも見えませんし、後は屋敷に入るだけかと。」
「そうか、よしルミナ。魔法の準備をしておけ。」
「はい!」
体中を血まみれにしたピエールから報告を受けたカインは、総仕上げとしてルミナに魔法の発動を命令する。すると、みるみるうちに彼女の杖の先端に尋常じゃない量の魔力が集まっていく。
「マズイ!クソ!屋敷前に結界を張れ!!」
指揮官の命令で残った兵たちが屋敷前で隊列を組み、一斉に魔法を発動して屋敷前に巨大な結界を発動させた。直後、
「プチファイヤーボール!」
ルミナの杖から明らかに「プチ」ではない大きさの火の玉が放たれ、結界に接触するとともに大爆発を引き起こし、結界を粉砕したどころかその余波で隊列を組んでいた兵士たちを吹き飛ばし、屋敷の壁に大穴を開けた。
「ウァ、、、ク、、、」
エリックは即死こそ免れたものの、全身を強く打ち付けて戦闘不能となっていた。
「さすが、、、」
相変わらずの破壊力を見たカインが感嘆の声をあげる。やがて遠くから走ってきたマックスとも合流し、五人は戦力を失ったリード家へ乗り込んだ。
「はい!カンパーイ!」
「「「「乾杯!」」」」
いかにも高級なワインをこれまた高級そうなグラスになみなみと注いで、カインはテーブルの上に立って音頭をとる。そして一気に飲み干すとグラスをそのまま床にたたきつけた。
「よーしお前ら。めぼしいものは全部頂いていくぞー。」
「「「「おー」」」」
五人は仲良く、リード邸の中にあるよくわからないが高そうに見えるものを物色し始めた。
「おい何だコレ?へったくそな絵だな。」
「馬鹿、それは名画家シャルフィーヌの傑作だぞ。」
「シャル?知らないな。」
「少しは本くらい読め。」
メンバーの中で唯一それらの価値を理解しているマックスは、仲間たちにあれこれ指示を出していた。
「な、なぁマックス、、、やめてくれこんなこと、、、」
「ん?」
情けない命乞いが聞こえてきたマックスは居間に縛られた状態で放置されている自分の元家族に目を向けた。
「昔お前を追い出したことを恨んでいるんだろう?あの時のことは謝る!償いはするから命だけは」
ズドン!
父親に最後までしゃべらせることなく、マックスは父親の膝を撃ちぬいた。
「ギャァァァァァァァァッッ!!!!!」
「キャァァァァッ!!!」
膝を粉砕された父親は激痛で発狂し、床の上をのたうち回る。それを見た母親は叫んで、マックスに命乞いを始めた。
「お、覚えているかしらマックス?あなた小さいときに言ったわよね?「強くなってリード家を守る」って。あの時私があなたを褒めたのを覚えてる?」
ズドンッ!
「ア、、、ガ、、、」
昔話をすることでマックスの情を引き出そうとしたのであろうが、それがマックスに通じるはずもなくマックスが撃った弾丸によって胸に穴が開き、声も出せず絶命した。
「あぁそんな!アマンダ!アマンダ!!」
父親が膝の痛みも忘れ、妻の亡骸に縋り付く。
ズドンッ!
そこにさらなるマックスの追撃が行われ、父親の頭が吹き飛んだ。
「チッ、うっせーな。ガキかよ?少しは静かにできないのかい?」
「こ、この悪魔!!化け物め!!」
今度はエリックをはじめ、過去にさんざん自分のことを出来損ないだとしていじめてきた兄や姉たちが、憎しみの目を向けながら口々に非難し始めた。
「よ、よくも勝手な逆恨みで自分の親を、、、お前など人間では」
ズドン!
「な、なぁ、兄弟じゃないか、見逃して」
ズドン!
「ヒィィィ!!助けてぇ!!!」
ズドン!
罵ってきた兄も、命乞いをする弟も、発狂した姉も、マックスは一切表情を変えることなく撃ち殺していく。
「、、、、、、!」
ただ一人残ったエリックは何も言葉を発さなかった。マックスの慈悲など望めるはずもない。エリック自身もルミナの魔法によって体が思うように動かず、もはや命が助かる見込みが全くないことを心の底から思い知った。
エリックの絶望を察したのか、マックスはこの家に来て初めて家族のほうに近づいて行った。
ドシュッ ドシュッ ドシュッ
マックスは腰に差したハンドガンを取りだすとエリックの足に何発も弾丸を撃ち込んだ。
「アァァァァァァァァッッッ!!!!」
父親と同じようにエリックは絶叫し、激痛をこらえるように蹲る。その足からは夥しいほどの血が流れていき、床を赤く染めていく。
「エリック兄さん、俺はよく覚えているよ。「稽古だ」って言って骨が折れるまで木刀で俺のことをたたいたのをな。兄さんが俺を家から追い出すように父さんに言ったのもな。勘違いしないでほしいのは、別に俺はあんたらを恨んでないってことだ。家に戻ってきたのはただ、俺たちが活動するための軍資金が欲しかったってだけ。ただそれだけだよ。」
そう言いながらマックスはエリックの頭に銃口を向ける。顔を上げたエリックの目に映ったマックスの顔は、言葉とは裏腹に眉間に皴が寄り、怒っているのが明白な表情であった。
「こ、この、、、で、できそこない、、、が、、、」
ドシュッ
エリックの口に撃ち込まれた弾丸はそのまま彼の頭部を貫通し、エリックは虚ろな表情のまま倒れ絶命した。
「、、、ふー。」
因縁に決着をつけたマックスは一息ついた、ちょうどその時、ほかの部屋をあらかた物色し終えたメンバーたちが居間に戻ってくる。
「おーいマックス。こっちは大体終わったぞ。そっちは?」
「あぁ、うん。こっちも終わった。」
「よし、ここにはもう用はない。乗り物をかっぱらってまた別のところを襲いに行くぜ!」
「「「「おう!」」」」
この件以降もNCCの残党たちは欲望と暴力衝動が命ずるままに、ナロパニアンの各地を荒らしていくのであった。
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