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異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第3章 失敗作の逆襲 熱戦のナロパニアン
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第63話 光越者シャイン・ソニック(2)

依頼を受注してからを達成するまでの時間が日を追うごとに短くなっている。


最初にそのことに気づいたのは、シャイン・ソニックが冒険者として活動を開始して3か月が経ったときのことであった。

貴族として英才教育を受けていたとはいえ、当時10歳だった彼が受けられる依頼などたかが知れている。

冒険者になった彼が毎日受けていた仕事は「スライム20匹の討伐」であった。


冒険者となった当初、スライムを一匹倒すのにかかる時間は、見つける時間も含めて約10分。仕事を終えるのに3時間以上かかっていた。


それが、3か月経過するころにはほんの10分足らずでスライム20匹を狩ることが可能になっていた。

わずか数か月で仕事効率が20倍以上になる。それは明らかに異常な事態であったが、彼は当初、多少おかしいとは思っていたが、単に慣れただけだと思っていた。


わずかな違和感が確信に変わったのはそれからさらに1か月経った時のこと。この時点ですでにスライム討伐を10秒で老いられるようになっていた彼はある日、腕試しでワンランク上の、「ゴブリン退治」の仕事を受けた。ゴブリンは下級のモンスターではあるが、知能が高くスピードが速い、新人の冒険者にとって決して油断ならない相手。ソニックも当然それは認識していたので警戒して臨んでのだが、三体のゴブリンと対峙した彼は、別の意味で意表を突かれることになる。


(、、、ゴブリンってこんなにトロいの?)


彼の目には、ゴブリンがとてつもなくゆっくり動いているように見えた。彼は難なく三体のゴブリンを切り捨て、勢いそのままに巣を襲撃して、わずか3分足らずで100を超えるゴブリンを狩りつくした。ギルドに戻って戦果を披露したとき、30分前小ばかにしたような顔で自分を見送った受付嬢の驚愕に染まった顔は、今でもソニックの頭にこびりついている。


彼はこの時理解した。これは自分の固有魔法である「俊足」の影響であると。少し離れた場所への移動などで多用していた「俊足」が、彼の知らないうちに急成長していた。それにより彼は、周りの動きが遅く見えるほどの速度を手にしたのである。


そこからの彼の出世スピードは尋常ではなかった。


上級モンスターであるドラゴンをわずか3秒で細切れにして討伐。


数百に上る魔物の襲撃を10秒足らずで全滅させて鎮圧。


最年少のSランク冒険者に認定。


短期間で数々の偉業を成し遂げた彼を馬鹿にするものなどもはや存在しなかった。彼は伝説の冒険者となり、人々からは畏敬の念を込めて、彼の流れ星のように一瞬で敵を倒す能力になぞらえて「光越者スター」と呼ぶようになった。


彼が14歳になるころには王座すら手中におさめ、やがて彼は、突如現れて「統一国」の建国およびナロパニアンの併合を宣言した、次元を超えた「現人神」である転移者にもその力を認められ、若くしてナロパニアンの全権を掌握した。


自分の人生は絶頂そのものである。転移者以外で自分を倒せる者など存在しないし、触れることすらもできない。彼は長い間、そう信じて疑わなかった。





「う、、、く、、、」


腹部に強烈な蹴りを受けて倒れたソニックは、苦悶の声をあげながら立ち上がった。


(バ、バカな、、、なぜ、、、)


ソニックは荒い呼吸をしながら思考を巡らせる。


(やつはさっき「慣れた」とか言っていたが、さすがにそんな短時間で慣れるはずがない。きっと何かあるはずだ。考えろ、、、やつに何か付け入る隙を与えなかったか?)


自分が単純なスピード勝負で負けるなどありえない。きっと何か原因があるに違いないと彼は思考を巡らせる。直後、あることを思い出した。それは彼がレイスに攻撃する直前に放ったセリフ。


「死んだ瞬間のお前の顔がどうなっているかを見るのが今から楽しみだな!!」


(そうだ、、、たしか俺はあの時やつにそう言った、、、やつはきっと、あの言葉で、俺が真正面から攻撃してくると()()()を付けたんだ。

無論、そこらの凡骨ならたとえ来る方向が分かっていたとしても、俺の動きを感じ取ることさえできないが、やつは転移者様の直属の配下を倒した男。攻撃がくる方向さえ分かっていれば対処はできるかもしれない。)


「なるほど、、、どうやらそこらのゴミとは明らかに違うようだな。」


結論づけたソニックはレイスを称賛すると、身につけている重厚な鎧を脱ぎ始めた。


「お前のことを見誤っていたようだ、お前に敬意を表して、俺も今度こそ本気を出すことにしよう。」


ソニックが鎧の上半身部分を地面に落とすと、ゴトンという重い音が鳴り響いた。下半身の鎧も脱ぎ捨てて、ソニックは重厚な騎士から一気に上品な服を着た若者に変わる。


「俺が重たい槍や鎧を身に着けていたのは、単に身軽になる必要すらなかったからだ。ゆえに、全力で倒すべき敵が現れた時だけ、最も身軽になった最速の状態で戦うようにしているのだ。光栄に思うがいい。この状態で戦うのはお前が初めてだ。」


そう言ってソニックは先ほどよりもさらに速くレイスの周囲を飛び回る。近くに立っているノルの目には、そもそもレイスの周囲にソニックがいることすら感じ取れなかった。


「いいことを教えてやろう。「俊足」と「電光石火」の力を極限まで引き出した今の俺のスピードは、「光速」の「十兆倍」にもなるのだ!!」


(レ、レイス、、、!)


フレイヤが、レイスの体内から心配そうに声をかける。彼女も、周囲を飛ぶソニックを捉えることができなかった。しかし、当のレイスはそれに対し、


「問題なし。」


と一蹴した。その言葉を聞いてフレイヤは


(、、、!えぇ!分かったわ!頑張って!)


と、ただレイスを信じることを決めた。




(もう油断はしない、次の一撃で確実に決めてやる!)


ソニックはレイスの周囲を光を超える速度で飛びながら、彼の息の根を確実に止めるための最高のタイミングを探る。


(人間の最大の死角は真後ろだ。しかし、それはやつも想定しているはず。安易にやつの背後を狙うべきではない。見たところやつは右利き、ならば狙うは、奴から見て「左斜め後ろ」だ!)


攻撃する位置を決めたソニックは、レイスの左斜め後ろの約45度あたりの位置に来ると、一気に向きを変えて、彼が出せる最高の速度で一気に突撃した。

彼は子供のころから使っていた小型のナイフをレイスの首に向けて突き出した。


(勝った!!)


ソニックは勝利を確信した。切っ先が彼の首に届くまでわずか数十センチ。この状態でナイフをよけることなどできるはずがない。そう思った時だった。


ナイフが当たる直前、レイスの首がグリンと回ってソニックと目が合った。


(え、、、?)


今まで、ソニックが能力を使ったときは必ず、彼自身のスピードがあまりにも速くなるために、周りの人間が止まって見えた。しかし、今回のこれは明らかに見間違えではない、目のまえのレイスは明らかにソニックよりも速く動いて、彼のナイフを視認して左手で掴んで止めたのである。


(ま、まさか、、、こいつは俺よりも速いというのか、、、!)

「バ、バカなぁッッ!!!」


目のまえの現実を受け入れられないソニックは、半ば自棄になって余っている左手を握りしめレイスに殴りかかるが、


「フンッ!!」

ゴッ!!

「ウブッ!!?」


それよりも先にレイスのガントレットを纏った拳がソニックの顔に当たり、彼はそのまま殴り飛ばされて地面を転がる羽目になる。


「ク、、、ッ!」

「オリャァァァ!!!!」


休む間も与えず、レイスが飛び掛かってきて倒れるソニックに向けて拳を振り下ろした。


「ッッッ!!!」


ソニックは間一髪で後ろに飛ぶことでレイスの攻撃を避ける。それによりレイスの拳は地面にめり込んで、そこを中心に大きな亀裂が入る。

攻撃のチャンスだと思ったソニックはナイフを振り下ろそうとする。


(くらえ!!)


しかし、


「オオオッッッ!!!」


それをすでに見越していたレイスは即座に立ち上がって、地面から引っこ抜いた拳をソニックの腹に充てる。


「ウッ、、、!」

「ウオオオリャァァァァァッッッ!!!!」


レイスはそこからソニックに猛烈なラッシュを浴びせていく。ソニックは何とか攻撃を防ごうとするが、レイスの圧倒的なパワーに押され、ソニックの体にダメージが蓄積されていく。


(や、やられる、、、!このままでは、、、!こ、ここは、逃げるしかない、、、!)

「オオオッッッ!!!」


再びレイスの強烈な一撃がソニックの顔を捉え、ソニックは地面に垂直に殴り飛ばされた。


「や、やった!!!」


その光景を見たノルは歓喜の声を上げるが、殴り飛ばされる直前に、ソニックが不敵な笑みを浮かべたのを、レイスは見逃さなかった。


「ヤバい!!」


猛烈に嫌な予感がしたレイスは急いでソニックを捕まえるために飛び掛かるが、次の瞬間にはソニックは跡形もなく消えていた。


「、、、クソ!」

「え!?あ、あいつはどこに行ったんだ!?」


ノルはソニックが突然消えたことについて、混乱しながら聞いてきた。


「たぶん、攻撃を受けて「吹っ飛んだ体」を加速させたんだ。しくじったな、さっさと捕まえておくべきだった。」

「そ、そうか、、、ところで、お前いったい何者なんだ?その力とあと手のソレはいったい何なんだ!?そんでお前の体から出たり入ったりする女の人はいったい誰なんだ!?」


ノルから矢継ぎ早に質問が飛んでくる。戦闘直後で疲れたレイスが答えられずにいると、フレイヤが二人の間に入るように出てきた。


「それについては私からまた後で説明するわ。まずは、、、ホラ、、、あそこにいるグレッグを起こしてあげないと、、、。」

「「、、、、、、、、、あ。」」


フレイヤの言葉を聞いて、二人はようやく地面の上で伸びているグレッグの存在を思い出したのであった。

読んでくださりありがとうございます。

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