第59話 NCC幹部
NCCギルドへの襲撃から一夜明けて、総督府の会議室には、「NCC殲滅作戦」の指揮を任された、ナロパニアンの軍の重鎮が集まっていた。
「それでは、経過報告をはじめてくれ。」
「承知いたしました。」
資料を持って大きなモニターの前に立つ報告係の男は、モニターに地図を映してコホンと咳払いをして報告を開始した。
「昨夜午後10時より、討伐隊は各地に点在していたNCCギルドへの電撃的な襲撃を行いました。NCC所属の冒険者は、週末には夜ギルドに集まって酒盛をするため、この襲撃により多くの冒険者を始末することに成功しました。ギルドにいなかった者たちへの襲撃も順次行った結果、現時点でNCCの冒険者およびギルド職員547人の死亡が確認されております。」
「NCCは全部で確か、、、553人だったか、、、ということは、レイスらと共に消えたアーノルドを除けば生き残っているのはたった5人、素晴らしい!スター閣下もお喜びになるだろう!」
「それで、こちらの被害は?」
「はっ、それが、、、」
討伐隊側の被害人数を聞かれた報告係は、一瞬だけ言い淀んでから口を開く。
「、、、NCCの反撃により、討伐隊側は224人が死亡、100人近くが重傷を負いました。」
報告係の言葉に、会場がざわついた。
「神域武具を身につけた兵士が200、、、想定の3倍近い。奴らにそれほどの力があったとは。」
「腐ってもベテランの冒険者といったところか。」
「それについてですが、、、追加の情報があります。」
「なんだと?」
遡ること数時間前、
ギルドからワープしたカインとルミナは、森の中を彷徨い、しばらくすると一本の大木の前で止まった。
「ここだ、久しぶりだな。」
慣れた手つきで大木の前にある草のカモフラージュをほどこしたカーペットを取り払うと、マンホールのような扉が現れた。
開けるとそこには地下へと続くはしごが設置されており、カインはヘトヘトのルミナを背負いながら地下へ降り、道を進んでいく。
しばらくすると、簡素な扉の前に着く。
「さて、、、どうかな、、、。」
扉を前にしたカインは、わずかに緊張した面持ちで、ゆっくりとドアノブを引いた。
中にいたのは、体のいたるところに傷を使った3人の男。
「ハーハハハッッ!!見ろマックス!やはりカインも無事だった!!賭けは俺の勝ちだな!」
「うるっさいね、お前が勝手に騒いでただけだろ。」
「、、、やはり天は常に正しい我らの味方です。」
カインとルミナを見た瞬間3人の男たちがワッと騒ぎ始めた。その様子を見て、ずっと緊張した面持ちだったカインが笑顔になる。
「やっぱり生きてたかお前ら、、、まぁ、殺しても死ななそうだもんな。」
「なんだって!?死んだ兵士の半数以上が逃亡中の5人の手によるもの!?」
その報告が与えた衝撃は先ほどの比ではなく、重鎮の1人が叫んだのを皮切りに、会場が一斉にざわめきだした。
「500人の冒険者に200人の兵士が倒された」と、「5人の冒険者に100人の兵士が倒された」では、脅威度は全く異なってしまう。
「兵士たちは神域武具を装備していなかったのではないのか!?」
「間違いなく装備していました。万全の状態で挑んだのにも関わらず、これだけの犠牲が出たのです。」
「し、信じられん、、、!」
そもそもとして神域武具は、ほんの一部とはいえ転移者の力が込められており、鋼鉄を容易く貫通する銃とその弾丸を容易く弾き返し、さらに着用した者の身体能力を大幅に上げる鎧によって、素人を一騎当千の兵士に変える代物である。
全体的にレベルが高いナロパニアンの冒険者といえど、神域武具を装備した兵士と戦うには最低でもAランクは必須である。
最上位にあたるSランク冒険者でも、正面からの戦闘だと2、3人を相手取るのがせいぜいであろう。
(神域武具を装備した兵士たちを、、、1人あたり20人以上殺すことができるというのか、、、!)
「その5人はいまだに逃亡中と言っていたな。行方も分からないのか?」
「左様でございます。この5人の脅威度はレイスらと比べても遜色ないと判断いたしました。よってこれより、さらに大規模な捜索を行うための情報共有を行いたいと考えております。」
「うむ。始めてくれ。」
「かしこまりました。では、」
報告係がコホンと咳払いをすると、モニターが変わって、ボサボサの茶色の長髪をした、腹筋を見せびらかすような服を着た凶暴そうな男が映し出された。
「彼はNCC創設メンバーの1人で稼ぎ頭の「デスター・オールウェイズ」。かつては格闘家で、チャンプになった経験もありましたが、対戦相手を何度も死に至らしめたことで協会を追放されました。ちなみに座右の銘は「力こそ全て」とのことです。」
「なるほど、脳筋か。」
次に映し出されたのは、一見すると穏やかそうな顔をした神父服の男であった。
「彼も同じく創設メンバーの1人でNCCの事務総長、「ピエール・アントニオ」。転移者様が統一されるより以前、彼がまだ10代の頃はとある村の牧師見習いだったそうですが、そこで複数人の少年少女に手を出し、妊娠が発覚した家族の令嬢をお腹の中の赤子ごと殺害して逮捕されました。」
「、、、見かけによらないな。」
ピエールの大人しそうな風貌からは想像できない彼の前科に、重鎮たちは若干引いていた。
「しかし、護送中に兵士を殺害して脱走。それ以降3ヶ月間で金品目当ての殺人を12件起こしたことは分かっていますが、それ以降の消息は掴めず迷宮入り。転移者様により冒険者特権が与えられるまでずっとNCCに潜伏していたものと見られています。」
次に画面が変わって映し出されたのは、黒と白を基調とした、貴族を思わせる上品な服を着た、ヒョロリと細く背の高い、眼鏡をかけた男であった。
「NCC唯一のスナイパー「マックス・リード」。代々攻撃魔法に優れた名家リード家の出身でしたが、生まれた時から魔力が極端に弱く、さらに固有魔法も攻撃魔法ではなかったらしく、そのために追放されました。」
「ありがちな境遇の元貴族か。」
次に映し出されたのは、大きな魔法使い用の三角帽子をかぶったショートヘアで幼さすら感じる顔つきの少女であった。
「彼女はルミナ・クラム・チャウダー。魔導国家マドギルプス出身です。彼女も名家出身でしたが、生まれついての極度の虚弱体質が原因で魔法をろくに使えず、実家を追い出されたようです。しかしそれはあくまでマドギルプス基準の話で、ナロパニアンでは彼女が放つ魔法は十分脅威に値します。事実、彼女はNCCで「大砲」として活躍し、18歳にして幹部の地位を与えられました。そして最後に、」
次に画面が変わって出てきたのは、真っ白な髪の毛と、それとは正反対に、偽物かと思うほどに真っ赤な瞳をした不気味さを感じさせる男であった。
「NCCの創設者にしてギルドマスターのカイン。彼については、デスターやあピエールと交流があったらしいこと以外そのいきさつなどが一切不明です。しかしながらものの数年でNCCをそれなりの規模の組織に成長させている以上、実力は確かと言えましょう。」
「彼らの固有魔法は?」
「不明です。冒険者には珍しいことではありませんが、彼らは周囲に固有魔法を徹底して隠していたようです。しかしながら、いずれにしても彼らが強大な力を持っているのは確実であります。よって、NCC残党の脅威度をレイスらと同等であるとし、さらに捜索の規模を上げるべきであります。」
「、、、分かった。ナロパニアン中の上級冒険者にも神域武具を持たせ、捜索に当たらせろ。ナロパニアンを蝕む害虫どもを一匹残らず殲滅するのだ。」
「「「ハッ!!」」」
こうして、アーノルドがレイスたちを連れて逃げたことで、レイスたちへの追手がさらに激しさを増していくことになるのだが、当のレイスたちはまだそのことを知らないのであった。
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