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異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第3章 失敗作の逆襲 熱戦のナロパニアン
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第57話 逃亡と磁石の魔法(2)

アーノルドのパンチをまともに顔に受けたレイスは、口から血を流した。


「レイス!!」

「大丈夫!少し切っただけ!効いちゃあいない!」


グレッグは心配してさけび、レイスはそんな彼に対して強がってみせた。それを見たアーノルドはますます口角を吊り上げる。


「ハッハッハ!そんな虚勢がいつまで続くかな!?お前はもう俺のサンドバッグだ!!」


有言を実行するかのように、アーノルドは身動きをとれないレイスの顔や腹部に容赦なく打撃を与えていく。


「クッ、、、!」


殴られっぱなしではたまらないと、レイスは木から腕を引き剥がそうとするも、


(離れない、、、!)


木が想像以上に頑丈で、レイスの怪力をもってしても、腕が木から離れることはなかった。その様子をレイスの体内から見ていたフレイヤが慌てて叫んだ。


(レイス!前に言ったようにナロパニアンはアルフガンドよりもレベルが高いわ!だから木とかの植物さえも向こうよりかなり強いわよ!)

「なるほど、、、向こうで岩山を壊せても、ここじゃ木1本壊せないわけか。自信が無くなっちゃうなぁ。」


この世界ではレイスは木すら破壊するのに手こずる存在なのだと知って、彼はショックを受けた。

一方、レイスの落ち込んでいる様子を見たアーノルドは得意な顔をして胸を張った。


「ハッハッハ!どうだ恐ろしいだろう!?俺の固有魔法は!しかもこの辺りの木は丈夫なことで有名でな!冒険者や魔物が少し暴れたくらいじゃびくともしない!そんな体勢でその木から逃れることなど不可能だ!」

ドスッ!

「カハッ!」


アーノルドは言い終わるよりも先にレイスの腹部を殴りつけた。


「レイス!こ、このぉ!!」


グレッグがレイスを助けるために木の棒を持ってアーノルドに飛びかかった。しかし、


「邪魔だ雑魚が。」


グレッグの振り下ろしはあっさりとかわされ、そのまま蹴り飛ばされてしまう。


「グレッグ!ちくしょう!!」


グレッグが蹴られたのを見たレイスは即座にフレイヤの力の一部を解放した。その瞬間、


「フンッ!!」

べギィッ!!


レイスの腕が強引に木の皮ごと引き剥がされた。


「な、何!?」

「転移者の手下でもないお前にこんなインチキの力を使うのは気が引けるが、、、悪さが過ぎたな。さすがに仲間が傷つくのは黙ってられない。」


レイスの迫力に一瞬怯んだアーノルドであったが、すぐに気を取り直して拳を構えた。


「お前、いったいどうやって、、、!」

「安心しろ。この力はもう使わない。俺は魔法を使えないから、その分でチャラってことにしてくれ。」

「チッ、、、何を訳のわからんことを。火事場の馬鹿力で拘束は解けても、それだけでは俺には勝てないぞ!俺の手はすでにお前に触れてるんだからな。」


そう言うと、アーノルドの拳に「M」という字が浮かび上がる。そして、レイス本人は当然気づいてはいないが、彼の顔には「S」の字がついていた。


「いったい何を、ウオオッ!?」

グイイッ!


疑問を口にする間もなく、レイスは顔面を強く引っ張られる感覚と共に、アーノルドの元へ向かっていく。


吸着アドソープション・ストライク!!」


アーノルドはタイミングを合わせて、レイスの顔面に拳を叩き込んだ。


「うっ、、、!」


まともにパンチを受けたレイスは頭を抑えながらよろめき、アーノルドはその隙を見逃さない。


「休んでる暇なぞないぞ!次だっ!!」


再びレイスの顔に「S」が浮かび、同じように引き寄せられて同じように殴られる。


「よく言われたもんだ、「くだらない魔法」だってな。だが俺はそうは思わない。この魔法を誰よりも鍛えてみんなを見返してやるんだ!!」

ドゴッッ!


「う、、、っ」

(レイスの顔のSと奴の手のM、、、奴の魔法は磁石か、、、!)


朦朧としていた意識を取り戻したグレッグは、即座にパナケイアの力を解放し、自身の怪我を一瞬で治した。


「ん?治癒魔法か!」

「待っててくださいレイス!すぐ治して」

「いらない!!」


回復魔法をかけようとしたその時、レイスは大声でグレッグの魔法を断った。


「え?」

「こいつとは、、、インチキなしで戦う!」


レイスはあくまでアーノルドとの戦いに神の力を使うつもりはなかった。彼は血だらけの顔で真っ直ぐアーノルドを見る。


「フフフ、変な意地を張らない方がいいと思うがな。第一魔法を使うことがインチキなんてのも時代遅れだ。」

「色々事情があるんだよ。」

「フンッ、そうかい、、、まぁ、どっちにしたって俺の勝ちは揺るがないけどな!」

「それは無理だ。お前の動きはもう慣れた。」

「減らず口を!」


レイスの頭部が再び引き寄せられ、そこに狙いを定めてアーノルドがパンチを繰り出す。


「ヌゥンッ!!」


レイスは迫り来るアーノルドの拳に対して思い切り頭突きをした。

鐘のような音と、アーノルドの拳の骨が割れた音が森に響いた。


「ギャァァァァァーーーッッッ!!」


アーノルドは絶叫し拳を押さえてうずくまる。


「言っただろ、あれだけくらってたら流石にお前のパンチにも慣れてくるさ。タイミングとか色々な。勝負あったな。」

「こ、この、、、おまえ、、、あぐ、、、ク、クソボケ、、、イテェ、、、!」


アーノルドは涙目でレイスを睨みつけるが、あまりの激痛に立ち上がれず、ろくに言葉を発することさえできなかった。


「こ、殺し、、、殺して、、、やる、、、」

「もうやめよう。」

「、、、は?」

「君、なんか、、、あんまり悪いやつじゃないでしょ。スリとかも、あの上司っぽい人にやらされてる感あったし。ここにも命令されたから来たとかだろ?」

「な、なにを、、、」

「君せっかく強いんだしさ、あんな子悪党の真似事しなくてもやっていけるんじゃない?」


その言葉を聞いた時、一瞬だけアーノルドの目が光った。


「俺が、、、強い、、、?」

「ホラ、手も治してやるから、仲直りしよ?」


レイスが差し出してきた左手に、アーノルドはほとんど無意識のまま手を伸ばす。そこに、




「やはり出来損ないはダメか。」


男の冷たい声が聞こえてきた。レイスが意識を向けた時にはもう遅く、飛んできた衝撃波にレイスとグレッグ2人まとめて吹き飛ばされ、いつの間にか周辺に待機していた大勢の兵士に掴まれ、地面に押さえつけられる。


「ああっ!ちくしょう!また暴れすぎたか!」


「神域武具」を装備した兵士たちの力は想像以上に強く、レイスはほとんど動くことができない。


「相変わらず、我々に失望以外の感情を与えてくれないな、お前は。」


その言葉と共に、他の兵士と比べて明らかに豪華な鎧を着た男がレイスたちの前に現れた。

年齢は20代半ばといったところで、髪の色は茶髪であったが、それ以外はアーノルドによく似た顔立ちであった。


(あれってもしかして、、、)

「ク、クロード、、、兄様、、、」


倒れるアーノルドの口から出た言葉が、レイスの疑問に対する答え合わせであった。


「お前に兄と呼ばれる筋合いなどないわ。出来損ないの分際で。」


クロード兄様と呼ばれた男は冷たく言い放つと、アーノルドを蹴り飛ばした。


「お、おい!」


その行為に対してレイスが呼びかけるが、クロードはレイスを見ることもなく蹴飛ばされたアーノルドに近づくと、骨が砕けた彼の右手を踏みつけた。


「うぁぁぁっ!!」


苦痛にうめくアーノルドを見てクロードは口を歪める。


「強大な固有魔法を授かって転移者様のお力になることが我が家系至高の誉であるというのに、クソのような固有魔法を発現した挙句不埒なテロリストに惨敗しおって、、、ベスティリオーネの名を汚す痴れ者のクズが。家を追い出された時にとっとと野垂れ死にでもしておけばよかったものを、最後まで恥をかかせてくれる。」


アーノルドに暴言を吐きながら、踏みつける足に力を込めていく。


メキメキメキ、、、

「ぐぁぁ、、、っ」


ほとんど声を出すこともできなくなり、アーノルドは苦痛に呻くことしかできないでいた。


「お前にこれ以上ベスティリオーネを汚されるのはウンザリだ。もういい、とりあえずもう死んでしまえ。」


クロードは懐から銃を取り出すとアーノルドの頭部に向けた。


「ク、クソ、、、クソッタレ、、、!」


アーノルドの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。

手が痛いから泣いているのではない。

彼はただただ悔しかった。


固有魔法のせいで、武勇で名を馳せた家を追い出され、なんとか武功を上げようとしてもとしても冒険者たちからも馬鹿にされ、挙句冒険者ギルドの名を借りた犯罪組織であるNCCに拾われ雑用や犯罪の手伝いをさせられる毎日。


彼の夢は誰よりも偉大になって、馬鹿にしてきた全員を見返すこと。


そのために彼が10歳の時に発現した固有魔法「磁石」を研鑽し続けた。


しかし今、こうして何も成すこともできず、自分を見下し続けて兄の手によって葬られようとしている。

悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。


(終わるのか、、、ここで、、、俺は、、、)


クロードが引き金を引こうとしたその時、


ボォンッ!


巨大な爆発音が鳴り、アーノルドもクロードも音が鳴った方に意識を向けた。


「な、なに、、、!?」


クロードが驚愕に目を見開く。衝撃の中心にいたのはレイスで、彼を取り押さえていた兵士たちは1人残らず吹き飛ばされていた。

何より目を引いたのが彼の見た目で、その両手には重厚な赤いガントレットが装着されている。


「どうやら、「遠慮をする必要がないタイプ」みたいだな、お前は。」


レイスはクロードを冷たい目で睨む。優しい兄を知っている彼は、「弟をいじめる兄」という存在を許すことができなかった。

レイスの威圧に一瞬怯んだクロードであったが、彼はすぐに気を取り直して剣を抜いた。


「フ、、、どうやら報告にあった通り、少しはできるようだ、、、しかし、相手が悪かったな。このベスティリオーネの第3子、「炎剣のクロード」が相手とは!「フレイムバスタード」!」


クロードの剣が炎を纏って一瞬で巨大化し、凄まじい熱を周囲に放つ。


(クロードの固有魔法「炎剣」、、、!その熱は本気を出せば恒星にも匹敵する、、、!アイツ終わったな、、、)


クロードに斬られた者はチリも残らない。それを知っているアーノルドは、レイスに憐れみの心を持たずにはいられなかった。


「私に逆らったことを後悔する暇も与えん!くらえ!」


意気揚々と叫ぶクロードは、レイスに飛びかかって剣を振り下ろした。しかし、


パキンッ


レイスが軽く手をはらうと、その瞬間炎が消え、剣も粉々になってしまった。


「、、、、、、え?」

「全然大したことないじゃないか。弟の方がずっと手強かった。」


呆気に取られるクロードの腹をすかさず殴り、彼は一瞬で白目を剥いて倒れた。


「、、、は?なにが起こった、、、?」


あまりの一瞬の出来事に、アーノルドは訳がわからなくなった。

レイスは倒れていたグレッグを起こすと、アーノルドに近づいてくる。


「この子の手も治してやってよ。」

「え?いいんですか?」

「うん。」

「わ、分かりました。」


グレッグが杖を振ると、たちまちアーノルドの右手から痛みが消え、自由に動くようになった。


「な、なんで、、、!?なんで手を治したんだ!?俺は敵だぞ!」

「さっきも言ったけど、君そんなに悪い奴じゃなさそうだし。骨折るほどでもないかなって。」

(コイツ、、、本気か、、、?)


アーノルドはレイスの行動を不思議に思うばかりだったが、直後そう言ってられる状態ではなくなった。


ズドンッ! ズドンズドンッ!


銃声とともに、彼らの周囲の木に穴が空いて次々と倒れていった。


「クソ!待機してた兵隊どもか!どうしたもんかな。数は分からないがこうなったら全滅を狙うしかないかな。」

「あわわ、、、!ヤバイですよレイス!」

「、、、、、、。」


慌てふためく2人を見て、アーノルドはなにか考え込んでいた。そうこうしているうちに、兵隊たちの足音が近づいてくる。


「お、俺と手を繋げ!」


アーノルドが突然、2人に手を差し出してきた。右手の方には何か石のようなものが掴まれている。


「「ハァッ!?」」

「早く!!」


疑問は絶えなかったが時間もないので2人は言われるがままアーノルドの手に触れる。


「よし行くぞ!「ワープストーン」!!」


アーノルドがそう叫んだ瞬間、3人は光に包まれ一瞬で消えてしまった。


読んでくださりありがとうございます。

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