第55話 発覚
「それにしても安心したら急にお腹が空いてきました。どこかでご飯でも食べますか?」
「、、、うん、そうだね。」
グレッグに誘われて、2人は観光も兼ねて、飲食店を探して通りを歩き始めた。意外にもグレッグは飲食店を探すのが好きなようで、キラキラとした目で周囲を見ていたが、レイスの方はいまだに考え込んでいた。
(レイス、まだあの人たちのことを考えているの?)
レイスの中からフレイヤが話しかけてきた。融合しているため、レイスのことは彼女には全てわかる、
「えぇ、、、はい。」
それに対してレイスも肯定する。レイスはあのカインという男の底知れない雰囲気や血のように赤い瞳が頭から離れなかった。
(気にしすぎよ。万一のことがあっても私の力を解放すれば敵じゃないわ。)
「、、、そうですね。」
「あっ!あのカフェはどうですか!?」
1時間ほど周囲を彷徨い、グレッグがなんともオシャレそうなカフェを指差した。
(、、、そういえば、グレッグが俺に紹介しようとした店もあんな感じだったな。)
多分グレッグはああいうタイプのお店が好きなんだろうなと思いつつ、カフェの中に入って行った。
「いらっしゃいませ。カウンター席にどうぞ。」
店を入ると、いかにもオシャレな喫茶店のマスターをしていそうな中年の紳士が挨拶をしてきた。
案内されるがままにカウンターに座ると、マスターが水を出しながら心配そうな口調で話しかけてきた。
「お客様、、、わたくし、実はつい先ほど買い出しの途中でお客様を見たのですが、本当に災難でございましたねぇ。まさかあのNCCに絡まれるだなんて。」
「NCCを知っているんですか?」
マスターの言葉にレイスが食いついた。
「この辺りで知らない者はいませんよ。」
「よければ教えていただけませんか?なにぶん観光客ですので情報に乏しくて、、、」
「左様でございますか、それでは、、、コホン。」
マスターは小さく咳込みをして話し始めた。
「NCCとは、現ギルドマスターのカインが設立した冒険者ギルドで、正式名称は「ノー・カントリー・クラブ」です。「国境なき冒険者ギルド」などと、立派なことを謳っていますが、その実態は犯罪組織。さっきのような新入りを使ったスリなんか優しい方で、薬物や臓器の売買、気に食わない相手だったら殺人さえ厭わない、そんな連中です。」
「そんな犯罪組織だと分かっているのに捕まらないのですか?」
聞いているうちにグレッグも興味が出てきたのか、彼もマスターに質問をした。
「そこが難しい問題でございます。と、いうのも、この世界の神である転移者様はその多くが元々冒険者であらせられました。
加えて、「ナロパニアン」を統べられておられる総督閣下も元冒険者です。そのため、「ナロパニアン」では実力ある冒険者に特権が与えられているのです。
NCCは冒険者としての実績が抜群のため、犯罪は見て見ぬふりをされます。町中を飛び回る昆虫型監視カメラのおかげで治安自体は良くなると思ったのですが、チンピラ冒険者の犯罪が増える有様ですよ。」
説明を終えると、マスターはふぅとため息をついた。その様子は、説明に疲れたというよりもナロパニアンの現状を憂いているように見えた。
「とまぁ、わたくしが知るところといたしましてはこのあたりでございます。他に何か聞きたいことはありますか?」
「いいや、大体分かりました。ありがとう。」
NCCがどういうものか大体わかってスッキリしたレイスたちは、店のオススメであるというハンバーグとパスタとコーヒーに舌鼓を打ったのだった。
「ナロパニアン」の中心地。
そこには、ナロパニアンの全権を統括する最高執行機関である「総督府」が置かれている。
巨大な城の形をした総督府の中で、玉座に座った男が部下から報告を受けていた。
「スター総督、お耳に入れたいことがあります。」
「なんだ?」
スターと呼ばれた豪華な服を着た明るすぎるほど明るい金髪の男は淡々と部下に対して返事をした。
「34762地区にて、NCCと旅行客の諍いがありました。」
「なんだ、NCCが問題を起こすなどいつものことではないか。そんなことをわざわざ私に言う必要があるのか?」
本来、総督に上がってくる報告は、国家の非常事態に関することなどに限られている。
そもそも統一国の総督は、その莫大な権力ゆえに「してもいい事」はそれこそいくらでもあるが、その一方で「しなければいけない事」はほとんどない。
そのためスターはナロパニアン内の職務は基本的に各部署に丸投げしている。
にも関わらず、部下から受けた報告が、「チンピラギルドに所属する冒険者が喧嘩をした」という、あまりにもありふれた内容であったため、スターには呆れの感情しか浮かばなかった。
しかし一方で、報告をする部下の声色は真剣そのものであった。
「閣下、その喧嘩の相手が問題なのでございます。こちらをご覧ください。」
部下が小さな機械を床に置くと、その機械が光を発してスターの前に立体映像を映し出す。
NCCの冒険者と向かい合っているのは、赤と白が入り混じった不思議な髪色の男と緑色の髪をした男。
「これは昆虫型監視カメラが録画した、その時の喧嘩の映像でございます。」
「これは、、、まさか。」
スターには、赤白の髪の男に見覚えがあった。そして同時に、この事案が総督たる自分が動くに足る重要な事案であることも悟った。
「レイス・ビネガーとグレゴリー・グラッドストン。中央政府より手配されている、総督の1人を殺害したテロリストであります。」
それを聞いた瞬間、周囲にいた衛兵や文官がにわかにざわめきだした。
総督を殺害できる戦力がナロパニアンに現れたというのは確かに一大事である。
「そうか、、、来たか、、、よろしい。」
レイスとグレッグを見て目の色を変えたスターは玉座から立ち上がった。
「この2人の位置は?」
「今は宿屋の中でございます。」
「よし、すぐに討伐隊を編成してその宿に突入させろ。兵士と総督府直属のSランク冒険者には「神域武具」の使用を許可する。なんとしてでもこいつらを始末するんだ。」
神域武具とは、転移者の1人ウォーレン・クラフトによって作り出された量産型兵器である。
上級魔法を弾き返す鎧、光の光線を放つ槍、分厚い鉄板を容易く貫通する拳銃など、通常とは明らかに強さが異なる武具が、統一国の関係者に支給され、これにより雑兵は一騎当千の兵に様変わりする。
そうして、統一国の治安維持に大きく貢献してきた。
「御意!」
スターの討伐への本気度合いを感じ取った部下は、討伐隊を編成するために駆け足でその場を去っていった。
「フフフ、、、反逆者どもよ待っているがいい、、、貴様らには瞬きをする時間も与えんからな。」
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