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異世界逆襲物語 反逆者たちの物語  作者: リュウセイ
第3章 失敗作の逆襲 熱戦のナロパニアン
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第54話 レイスのスマホを取り返せ

「ヘッヘッヘ。今時間抜けな観光客もいたもんだ。」


慣れた足取りで人がごった返す市場を走り抜け、人気のない路地裏に入った金髪の青年は、つい先ほど旅行客から頂いた戦利品を眺めて呟いた。


「ん?これ画面ロックしてないな、、、って、なんだこれ!?連絡先一件しかないし、アプリも初期のやつ以外全く入れてない!!今時こんなやついんの!?あいつ俺と同い年くらいじゃなかった!?」


今まで何台も仲間が盗んだスマホを見てきた青年であったが、ここまで新品同然のスマホを手に入れたのは初めてであった。


「、、、まぁいいか。よく考えたらそっちの方が高く売れるだろうしな。うん。よし、じゃあ売りに行くか。」


「見つけたぞ!コラッ!!」


怒鳴り声を聞いた青年は驚いてすぐに声のした方向を見た。そこに立っていたのはゼーゼーと肩で息をする2人の男であった。

1人は神父のローブを着た長身で、緑色の髪の男。

そしてもう1人は、つい先ほど青年が会った男。


「あぁ、、、あの時の間抜けか。チッ、まさか仲間がいたなんてな。」


白髪と赤髪が入り混じったような特徴的な風貌だったため、スマホの元の持ち主であるレイスのことを青年はよく覚えていた。


「念の為レイスのスマホに「位置追跡アプリ」を入れておいてよかった!さぁ、スマホを返してもらいますよ!」


レイスのスマホの位置を示す画面を見せつけてくるグレッグに対して、青年は観念したように両手をあげてみせた。


「オッケーオッケー、悪かったよ、金に困っててつい魔がさしたんだ。争いごとは好きじゃない。このスマホはあんたに返すよ。」


そう言って手を上げたまま青年は2人に近づいていく。


「分かればいいんですよ分かれば、、、、、、アレ?」


しかしそこで奇妙なことが起こった。

つい先ほどまでちゃんと握りしめていたはずのスマホが、グレッグの手から消えてなくなっていた。

無意識のうちにポケットにでも入れたのかと思ったが、ポケットには何も入っていない。


「え?一体どこに、、、?」

「グレッグ、何探してるんだ?」

「いや、私のスマホが、、、」


「探し物はこれかな?」


グレッグがポケットを弄っていると、青年が小馬鹿にしたような声色で話しかけてきた。見ると、青年の先ほどまでは何も持っていなかった左手に一台のスマホが出現していた。


「あ!!私のスマホ!!」

「おお、さすがは神父様、なんとお優しい、、、。貧しい私に2つもスマホを恵んでくださるなんて、、、じゃあな!!間抜けども!!」


好き勝手なことを言って青年は猛ダッシュで逃げていった。


「あ!逃げた!!」

「一体どうやってスマホを、、、」

「そんなのは後でいいです!!追いますよレイス!!」


どのようにしてグレッグの手からスマホを奪い取ったのかが気になったレイスであったが、グレッグに急かされてとりあえず2人で青年を追いかけることになった。



「ククク!この俺が捕まるか!」


青年は慣れた足取りで人を避けながら道を走っていく。


「クソッ!速い!あいつやるな!」


思わぬ脚力を見せる青年に舌を巻いたレイスであったが、そうも言ってられない問題が起きた。


「ゼハーッ、、、ゼハーッ、、、ゼハーッ、、、」

「グレッグ!大丈夫か!?」


グレッグはすでに肩で息をしながらレイスの10メートルほど後方にいた。

ただでさえ動きにくい神父服を着ているのに加えて、神の力を出さなければ一般人と同等程度の身体能力しかないグレッグにとっては全力疾走はかなりキツかった。

そうこうしているうちに、青年が曲がり角を曲がってしまい、視界から消えた。


「チッ!仕方ない!!」


このままでは確実に取り逃してしまうと思ったレイスは、強引にグレッグをおんぶする。


「えっ!?ちょっと!?」

「こっちの方が速い!!いくぞ!!」


レイスはそう言って、人を抱えているとは思えない速度で走り始めた。その後、なんとか青年を視界内に留めておける程度には近づいたレイスであったが、ギリギリで追いつくことができない。

青年にとっては慣れた街だからというのももちろんあるが、彼のスピードはレイスの想像を超えていた。


(自分でも結構鍛えてると思ってたんだがな、、、あんなコソ泥に追いつけないとは、、、やはり「生物」としてのレベルが高いっていうフレイヤさんの言葉は正しかったか。)

「、、、仕方ない。」


レイスがナロパニアンのレベルの高さを痛感し、ある決意を固めていた頃、常に後ろを警戒していた青年は、レイスがグレッグを背負いながら走っているのを見て口角を釣り上げた。


「馬鹿め!人間1人背負いながら俺様に追いつこうなどと」

ドンッ!!!

「ウワァッ!!?」


突如現れた何かにぶつかった青年は、自身の勢いに吹っ飛ばされて地面に倒れた。


「く、、、いったい、、、な、何!?」


前を見た時、青年は自分の目を疑った。

なにせ、直前まで後ろを走っていたレイスが自分の目の前に立っていたのである。


「よう、会いたかったぜ。」

「お、お前、、、どうやって、、、」

「好きに想像しろ。(一瞬だけフレイヤさんの力を表に出して加速したんだ。)」


レイスはグレッグを下ろして青年に詰め寄った。


「さぁ、いい加減スマホを返してもらうぜ?それともまだ逃げるか?」

「、、、フ、フフフ、、、もう勝った気でいるのか?大人しく諦めておけば怪我しなかったのにな。」


レイスの余裕ある表情がよほど癇に障ったのか、青年は青筋を浮かべながら起き上がる。


「いいだろう、NCCの一員、このアーノルド・ベスティリオーネに喧嘩を売ったことを後悔させてやる!」

「、、、NCC?」


レイスは、スリの名前がアーノルド・ベスティリオーネということよりも、彼から発せられた「NCC」という聞き慣れない単語が気になった。


「さぁ、覚悟しやがれ!!」


「ストップ。」


アーノルドが今にも襲いかかってきそうな雰囲気の中で、彼の肩にポンと手を置く人物が突然現れた。


「カ、カイン、、、ッ!」


男の存在に気づいたアーノルドには、明らかな怯えの表情があった。周りで盛り上がっていた野次馬たちも、その男が現れた途端に静まり目を逸らしながら離れていく。カインという男が只者ではないことは明らかであった。


「ノルよぉ、、、この騒ぎは一体なんだぁ?」

「いや、、、その、、、」

「、、、、、、フン。」


モルテはアーノルドからスマホを取り上げると、レイスたちの方に近づいていく。

180センチほどで銀色の髪をした30代くらいのその男の目は、血のように赤い色をしていた。


「ウチの新入りが悪かったな、これはせめてもの詫びだ。何かメシでも食ってくれ。」


そう言って、カインはスマホと一緒にお金を手渡してきた。


(、、、ッ!)

「、、、、、、いや、いいんだ。」


何かに気づいた様子のレイスは、スマホとお金を受け取った。


「ものわかりが良くて助かった。ついでにこれも渡しとくよ。ウチの名刺。一応冒険者ギルドやってるから、困ったら来てくれよな。」


カインが手渡してきた名刺には、「冒険者ギルド NCC」と書かれていた。


(NCC、、、冒険者ギルドなのか?)

「、、、、、、うん、分かった。」

「それじゃあ今後ともご贔屓にってことで、ホラッ、行くぞ!」


モルテの命令に従って、アーノルドは彼と共にその場から去っていった。


「とりあえずスマホが戻ってよかったですね!」

「、、、、、、」


スマホを取り戻してグレッグは喜んだが、レイスの方は考え込んでいた。


「どうしました?」

「いや、あの銀髪、かなり強いと思って。それに、、、」


レイスはカインに話しかけられる直前、鋭い視線を受けていることに気づいていた。


「俺も気づいたのはついさっきだが3人ほど、、、多分あの2人の仲間が常に俺たちを見ていた。」

「本当に!?全く気づかなかった!」

「NCCか、、、なんか厄介そうだな、、、。」


渡されたばかりの名刺を眺めながら、レイスは言いようもない不安を感じるのだった。





レイスたちから少し離れた場所、無言で歩くモルテとアーノルドに3人の男が近づいていた。


「オイオイオイッ!ノル!しくじってんじゃねーか!ただのスリであんな騒ぎになりやがってよー!」

「せっかくカインが雑用ばかりの君のために初めての単独の仕事を用意してくれたのですから、もう少し結果を出して欲しかったですねぇ。」

「まだまだ修行が足りんな。」


アーノルドに対して散々な評価を下す彼ら3人も、モルテが率いる冒険者ギルドNCCの中心メンバーである。


「う、、、ごめん、カイン。」


返す言葉もなく、アーノルドはカインに謝るしかできなかった。


「ん?いや、いい。最初はこんなもんだろ。それよりも見ろ。」


カインは自分のスマホをアーノルドに見せる。スマホに写る地図は、つい先ほどまでレイスたちと向かい合っていた通りを示していた。


「俺もあいつのスマホに小型の発信機をつけた。あれ高かったんだぞ?なぁ、ノル。お前、このまま舐められたままでもいいのか?」

「、、、、、、ッ!」


カインのその質問は間違いなく「命令」であった。モルテはすでに自分に新たな指令を出しているのだと言うことをアーノルドは即座に察した。


「、、、わかった、任せろ。アイツに目にものを見せてやる。」

読んでくださりありがとうございます。

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