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第41話 融合の副次効果

「ヘッヘッヘ。覚悟しやがれよ劣等種?」

「ヒィィッ、、、!」

(あ、ヤバイ。これ死ぬ。)


無数の獣人に囲まれたグレッグは、生きた心地が全くしなかった。

そもそもグレッグが冒険者ではなく神父になったのは、幼馴染たちと違って戦いの才能が全く無かったからである。そして、獣人は子供の時点でそこらの冒険者では歯が立たないほどの戦闘力を持っていることはグレッグはよく知っていた。

先ほどまで人間たちが獣人を倒せていたのは、もちろん怒りや執念が思わぬ力を発揮したこともあるが、何よりも圧倒的に数が多かったのが大きい。


しかし、レオンハルトの参戦によって数の面でも獣人に逆転されてしまい、人間側の不利は明白になった。そして現在、グレッグはたった1人で、大勢の殺気だった獣人に囲まれている。これ以上の「絶望的」というにふさわしい状況を思いつくのが難しいほどの自身の状況に、グレッグは今にも泣きそうになる。


(お、落ち着けグレッグ!!お前はミケーアで「鬼」と恐れられたほどの男じゃないか!!)


折れそうになる心を奮い立たせ、獣人たちに睨み返すようにまっすぐ前を見たが、その時、獰猛そうな獣人とはっきり目が合った。


(やっぱり怖いぃぃぃ!!すいません!!鬼って言っても街の人にムチ振るのが地獄の獄卒みたいだからそう言われてるだけでした!!)


奮い立たせようとしても、やはり獣人たちの迫力に気圧されて折れてしまう。


「フンッ、腰抜けの劣等種が。お前1人なんぞ殺してもつまんなそうだな。そうだ、こういうのはどうだ?」


1人の犬獣人が進み出てきて、グレッグに向けて毛むくじゃらの足を向けた。


「這いつくばって俺の足を舐めろ。んで俺たちの奴隷になることを大声で宣言しろ。そうすれば命は助けてやる。」


犬獣人の提案を聞いた周囲からクスクスという笑い声が聞こえてくる。彼らは完全に、グレッグで遊ぶ気であった。


「ほ、本当に、、、助けてくれるのですか、、、?」

「あぁ。俺たち獣人はとっても優しいんだ。」

「、、、、、、」


獣人の言葉を聞いてグレッグはすぐさま一つの結論を出した。


(よし、土下座だ。とにかく思い切り土下座してレイス君が来るまでなんとか生き延びるしかない。どうせ私では彼らに勝つなんてできっこないし。)


そう、これは何も悪いことではない。そもそもグレッグにとってはアイザックス達とは何も関係がないのだ。ここは獣人たちに跪いて、レイスが助けに来てくれるまでの時間を稼ぐべきだ。

そう結論づけたグレッグは、獣人たちに跪くために膝を曲げ始める。


「、、、、、、。」


その時、グレッグの脳裏にかつての自分の姿が浮かび上がる。

強大な力に慄き、屈服し、多くの人々を痛めつけてきた、かつての自身の姿。


(だめだ、、、これじゃあ、、、前と変わらないじゃないか、、、!)


土下座の姿勢になる直前、グレッグは動きをピタリと止めると、スッと立ち上がった。


「私は、、、」

「あん?」

「私はお前らなどに屈しない!!」


戦う意を決したグレッグは、雄叫びを上げながら杖を振りかざして獣人たちに襲いかかった。


「はん!馬鹿なやつ!」

バキッ

「あがっ!?」


グレッグの大振りの杖が獣人に当たるわけもなく、容易くかわされて、カウンターの裏拳を受け、情けなく地面に倒れた。


「カハハッ!!やっちまえ!!」


その掛け声と共に、10人ほどの獣人が倒れたグレッグに殺到して、次々と踏みつけはじめる。


「オラオラオラッ!くらいやがれ劣等種が!!」

「虫ケラの分際で俺たちに逆らいやがって!!」

「テメェら雑魚どもは俺たち強者の奴隷になってればいいんだ!!」


侮蔑の言葉を浴びせながら獣人たちはグレッグを何度も何度も蹴りつける。怪力の獣人の蹴りはそれだけでも凄まじい威力を放ち、グレッグを中心として地面がひび割れていく。


(あぁ、、、やはり無謀だったか、、、)


自分はまもなく死ぬのであろうと感じたが、後悔はなかった。自分は以前とは違うのだということを実感できたからである。


(少しは、、、マシな男になれたかな、、、?)


そう思いながらも、グレッグはひたすら獣人たちに攻撃され続ける。



それから約5分後、最初に異変に気づいたのは、獣人たちの方であった。


「ハァ、、、ハァ、、、こいついつ死ぬんだよ、、、?」

「なんか、、、やたらと硬くねぇか、、、?」


獣人たちは、グレッグの体の意外な頑丈さに戸惑いを見せ始めた。

その直後には、グレッグも自身の体の異変に気づき始めていた。


「アレ、、、?なんかあんまり痛くないな、、、?」

(そんなところで寝っ転がって何やってるの〜?お昼寝〜?)


グレッグの中から気怠げな女性の声が聞こえてくる。ほとんど存在すら忘れていたが、彼の中にはレイスと同様に、融合した神の魂が入り込んでいるのだ。


「あっ。パナケイア様。いや、今まさに攻撃されて死にそうになっているんですけど。」

(そうなの〜?でもあなた一応私と融合して神様の体になってるから、その程度の攻撃で死ぬのは難しいと思うわよ〜?)

「え?本当ですか?」


グレッグは試しに手を動かしてみた。すると、指はなんの抵抗もなく動いた。今度は地面に手をついて体を持ち上げると、容易く起き上がることができた。

攻撃の受け過ぎで痛覚が麻痺しているのかと思ったが、実際はそんなことはなかった。彼の体には、なんのダメージも入っていなかったのである。


「な、何!?立ち上がっただと!?」


獣人たちは、グレッグが平然とした様子で立ち上がったのを見て驚愕していた。グレッグ自身も不思議そうに自分の手を見ていた。


「くっ!この野郎!!」


獣人の1人が爪を伸ばしてグレッグに襲いかかってくる。しかし、グレッグは先ほどとは違い冷静だった。


スカッ


音速を超えるほどの速度の攻撃を、グレッグはわずかに体を動かすことでなんなくかわしてみせた。


「、、、、、、は?」


あっけにとられる獣人。そこに生まれた隙を、グレッグは見逃さず、その獣人の顎目掛けてアッパーを繰り出した。


ドゴッッッ

「グベッ!!?」


グレッグの攻撃によって吹き飛ばされた獣人は、ほとんど見えなくなるほどの高さまで飛ばされて、10秒以上の時間をかけて地面に墜落した。


「な、なんだと、、、?」


直接攻撃に加わっていない者も含め、周囲にいた獣人は全員驚愕に目を見開いた。


「ば、馬鹿な!人間如きにそんな力があるはず、、、!」

「な、何かの間違いだ!八つ裂きにしちまえ!!」


号令とともに何人かの獣人が一斉に襲いかかってきたが、先ほどまでと違い、グレッグには恐怖や焦りはなかった。彼は冷静に獣人たちの攻撃を避けていき、最後の1人の攻撃は、彼の腕を掴むことで止めてみせた。

そして、


ドゴッ

「アガッ!」

パシッ

「キハッ!」

ドスッ

「ウッ!」


獣人たちの腹部や顔や顎に拳を当てることで、グレッグは迅速に彼らの意識を奪い去った。


「な、なんで、、、人間がこんなに強いんだよ、、、!」


獣人たちは、もはや不用意に向かってくるような真似はしなかった。彼らは大きく後退り、怯えすら混じった目でグレッグを見ていた。


「、、、もしかして、今の私って強いですか?」

(うん。少なくともここにいる人たちよりはね〜)

「そう、、、ですか、、、」


グレッグは、一瞬前に倒れるような姿勢になると、獣人たち目掛けて高速で突っ込んでいった。


「イィッ!!?」


その動きに獣人たちは反応できなかった。グレッグの突進はそれだけで威力抜群であり、一度に10人以上の獣人が轢かれ、吹き飛んでいった。


「ヒィィッ!!」

「ハァ、、、ハァ、、、あははは。()()()()()()()。」


グレッグはこれまでと明らかに違う自信に満ち溢れた声色で、獣人たちに宣言した。


「何人でもいい。一斉でもいい。とにかくどんどんかかってきやがれ。今までとは違う、神様と融合したNewグレッグを存分にお披露目してやる!」


グレッグは意外と調子に乗りやすいのであった。

読んでくださりありがとうございます。

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