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第38話 獣神タマ (1)

「ケホッ ケホッ このぉ、、、タマの可愛い顔になんてことするんだニャ!」


身体中を土埃まみれにしたタマが、レイスへの恨み言をこぼしながらクレーターから這い出てきた。その様子を見たレイスは、いたって冷静な表情を崩さないまま内心舌打ちする。


(チッ、、、ほぼダメージは無しか、、、)

「、、、まぁ、いいさ。この程度で死んじまったらこっちもスッキリしないところだった。」

「ニャー。さっきからニャにを言ってるニャ?お前、タマに会ったことあるのかニャ?」

「忘れてるのか。まぁ、そうだろうな。覚えてるわけないか。お前らにとっちゃあの時の俺なんて道端の石と変わらなかっただろうしな。別に構わない。」


レイスは全身から燃えるような殺気を放ちながら、タマをまっすぐ見据える。


「、、、どうせこれから、ボッコボコにされて嫌でも思い出すことになるんだからな。」

「へぇ、それは楽しみだニャ。」


レイスの言葉を聞いたタマも戦闘の構えを取る。2人の間にピリピリとした緊張が走る中、


「あっ、そうだ。」


何かを思い出したような表情をしたレイスが手を前に出してタマを静止する。


「戦いの前にお前にどうしても聞いておきたいことがある。」

「ニャ?一体何ニャ?」


戦いの直前に、レイスが突然神妙な顔をして静止してきたことに、タマはわずかに戸惑ってその意図を聞いた。

レイスの隣で浮いていたフレイヤも、一体タマに何を聞く気なのかと気になっていた。


「お前、なんで昔と見た目変わってないんだ?」

「、、、は?」


予想外の間の抜けた質問に、タマもフレイヤも目を丸くしてレイスを見る。


「レイス、、、それ今しなくちゃいけない質問なの?この緊張の場面で?」

「だって気になるじゃないですか。こいつ12年前と全く同じ姿なんですよ?」


レイスは自分が空気を読んでいないことには気づかず、平然とフレイヤの問いに答える。その様子を見てフレイヤは頭を抱えた。


「、、、なんだか力の抜けるやつだニャ。まぁいいニャ。疑問を持ったまま死ぬのはかわいそうだから教えてあげるニャ。タマたちはみんな、ユウヤのおかげで歳を取らなくなったんだニャ!」

「、、、コウガも?」

「当然だニャッ!」

「ふぅん。そうかそうか、、、」


それを聞いたレイスはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「安心したよ。それじゃあお前以外の女たちもコウガも、全員あの時と同じ「ムカつく顔面」のままってわけだ。」

「、、、ニャに?」


レイスがそう言った瞬間、神であるフレイヤでさえ身震いしたくなるほど、周りの空気がピリッと凍りついた。しかしレイスはそれを全く気にする様子もなく笑顔で続ける。


「いやーよかった。「施設」で散々見せられた映画やらなんやらのせいで瞬きする度にお前らの顔が浮かぶってのに、その記憶と人相が違ってたらなんかイヤだからな。おかげで、」


レイスは拳を強く握りしめて構える。その目にはギラギラとした闘志が炎のように燃え上がっていた。


「あの時の怒りをそのままお前らにぶつけられるってもんだ!」

「、、、お前が誰なのかなんて分からニャイし、興味もないニャ。でも、、、」


タマもそれに応じるように、目に怒りの炎を宿しながら戦闘の構えを取る。


「コウガの悪口を言うことだけは許さないニャッ!!フニャァァァァッッッ、、、!!!」


タマはもちろん、コウガのパーティーメンバーは全員、コウガを侮辱されることを何よりも嫌う。レイスの言葉はまさに、コウガに心酔するタマの逆鱗に触れるものであった。

タマが全身に力を込めると、その強烈なプレッシャーによって大気がビリビリと震える。


「な、何だこれは!?」

「キャアアアッ!!!」


レイスはタマが放つプレッシャーに吹き飛ばされないように踏ん張り、フレイヤもレイスの首にしがみつく。


「ニャアアアアンッッ!!!」

ドゴォォォン!


直後、凄まじい爆発が起こり、大量の砂煙がレイスたちの視界を完全に覆った。


「何が起こったんだ?」


レイスが手で砂煙を払い除ける。そして、彼の目の前に、1人の獣人の女性が姿を現した。


「え?誰?」


常識的に考えれば、そこに立っているのはタマ以外にいない。それはレイス自身も分かっているが、目の前の現実はレイスのその常識的な考えを否定せずにはいられなかった。

なにせタマの身長は先ほどまでと比べて20センチ以上高くなり、体型もスラリとした大人のものになり、野性味のある少年のようだった短髪は腰まで伸びる。

最も大きな変化は尻尾であった。彼女の尻尾はなんと2本に分かれ、その先端はマッチのように炎がユラユラと燃えていた。


「ニャフフッ!タマのこの姿を見て恐ろしくなったかニャ?」

「なんだってんだ一体、、、」


目の前の現象を理解できずレイスが困惑していると、


「あ、あれは、、、「覚醒モード」!?」


驚愕の表情をしたフレイヤがレイスの隣で叫んだ。


「え?分かるんですか?」


レイスが質問すると、フレイヤは真剣な顔で懐から眼鏡を取り出して装着し、説明を始めた。


「「覚醒モード」は「アルフガンド獣人」に与えられた神の恩恵。才能ある一部の獣人はこの「覚醒モード」によって姿形が変化し、戦闘能力も大幅に増加するのよ。まさか彼女が「覚醒モード」の使い手だったなんてね。」


フレイヤの説明が終わったとき、タマはドンと胸を張った。


「ニャハハッ!!12年前のあの時!タマが魔王軍幹部と戦って追い詰められた時にコウガのことを想っていたら、突然この力を発現したんだニャッ!愛の奇跡だニャッ!!」

(愛の奇跡、、、ね、、、)


レイスはタマの熱弁を聞いてもしらけるだけだった。タマの言葉を鵜呑みにせず、独自でタマが「覚醒モード」に至れた理由を予想した。


(十中八九、コウガの近くにいた影響だろうな。転移者の側近は全員とんでもなく強いという話だし。)

「聞いて驚くニャッ!「覚醒モード」になった獣人は、戦闘能力が数十倍になるニャッ!!ジョナサンを倒したお前の力を認めてこの姿になったんだから感謝するニャッ!!」

「チッ、、、言いたいことばっかり言いやがる、、、」


レイスはタマの傲岸不遜な態度にうんざりして舌打ちをした。


「もういいよ前置きは。かかって来い。」


手をクイクイとさせて挑発すると、それに怒ったのかタマの顔から余裕の笑みが消え、冷たい表情でレイスを睨みつけた。


「あまり調子にのるニャよ?ジョナサンを倒した程度で。」


そう言うとタマは体をわずかに前に倒す。


「タマはあいつとは全く違う世界にいるんだニャ。」


ゴッッ!


フレイヤが気づいた時には、タマはすでにレイスに接近しており、彼の腹部に拳を当てていた。


「はっ!?、、、えっ!?」

(い、いつの間に、、、?神である私が全く認識もできなかった、、、?)


フレイヤはタマの桁外れのスピードに呆然とするしかなかった。


「殺されたことに気づくこともできなかったニャ?この状態のタマは「光」すら置き去りにできるニャ。一発で終わりだ、、、ニャ?」


勝ちを確信したタマであったが、自分の手の違和感に気づいた。


「タマの拳が、、、貫いてニャイ、、、?」

「こんな、、、もんか、、、大したこと、、、ないな、、、」


光を超えたタマの攻撃は、これまでどんなものでも破壊してきた。大抵のものであれば衝撃で跡形も残らない。にも関わらず、タマの腕はレイスの腕を貫通しなかったどころか、彼の腹をめり込ませることもできなかった。


「こんニャ、、、バカニャ、、、!」


自身のパンチが効かなかった事実に、タマはここにきて初めて動揺を見せた。


「今度は、、、吹っ飛ばなかった、、、吹っ飛ぶのは、、、」


レイスは拳を握りしめて振りかぶる。


「お前のほうだ!!!」

「ッッッ!!?」


ガントレットを纏ったレイスのストレートパンチをタマは咄嗟に両手で塞ぐが、


「フニャァァァッッ!!!」


その威力を殺し切ることができず、何度も地面にバウンドしながら飛んでいく。


「くっ、、、この、、、!」

「立て。クソ猫。」


地面に倒れるタマを見下ろすように、レイスは走ってきてタマの目の前に立つと、再びクイクイと手招きした。


「あの頃とは違うってことを教えてやる!」

読んでくださりありがとうございます。

大きな設定変更があります。何度も設定変えて申し訳ありません。


変更前→13人の転移者は全員アルフガンドに送られた。

変更後→13人の転移者はそれぞれ13個の別々の世界に送られた。(そのうち、コウガが送られたのがアルフガンド。)


理由としてはいくつかありますが、一番大きな理由は、全員の転移した世界が同じだと、転移者の側近(主にハーレムメンバー)の個性がワンパターンになると思ったからです。

新しい設定に合わせて、過去に投稿した話も編集していきます。

申し訳ありませんでした。



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