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第29話 伝説は儚くも

「う、、、」

「痛みが、、、引いていく?」

「な、何が起こったんだ?」


治癒の神パナケイアと融合したグレッグの魔力が辺り一面に広がったことで、光の剣で切り裂かれて倒れていた冒険者たちの傷が次々と治っていく。

それどころか、戦闘によってボロボロになった地面や建物が次々と直っていく。その光景も、レイスを驚かせた。


(回復どころじゃない、、、「再生」や「修復」と言った方が正しいかもな、、、)


「神の力」というものの凄まじさを、グレッグを見ることで改めて認識した。


「ま、まぁ!私は本調子だったらもっとすごいことができるけどね!?」


自分の立場が脅かされていることを本能で察したのか、フレイヤが露骨にアピールを始めた。


「え?あぁ、はい。」


レイスは適当にフレイヤのアピールを流す。

それがフレイヤを怒らせたことは言うまでもない。


「ちょっと!?何その顔!?泣くよ!?泣くわよ!?」

「今はそれどころじゃないでしょう!アイツを倒すことに専念しないと!」


レイスはジョナサンを指差した。彼は先ほどまでとは打って変わって、目に見えて動揺していたが、その顔からは余裕はまだ消えていない。彼はニヤリと笑うと懐から一本の杖を取り出した。


「また誰かを人質にするつもりか?無駄だ!お前が私達の誰かを攻撃したとしても、私がその瞬間に治してみせる!」

「ハハハハハッ!馬鹿め!誰がお前らを攻撃すると言った!?俺の次の人質は、後ろにいるそいつらだ!!」


ジョナサンは杖で、100人以上の拘束された民衆を指した。民衆は怯えた表情で、あちこちからヒッという小さな悲鳴があがる。


「この戦いの最中、そいつらがなぜ逃げ出さないのか気にならなかったのか?そいつらにつけてる手錠や首輪は特別な魔法道具だ!つけられた者の力を奪い去ってしまうのだ!さらに!」


ジョナサンは手に持った杖をレイスたちに見せびらかすようにプラプラと動かしてみせる。


「この杖は言わば爆破スイッチ。俺が念じればその瞬間に、首輪と手錠に込められた魔力が暴発し、そいつらをバラバラにしてしまうのだ!」


ジョナサンの驚愕の言葉に、レイスたちの間に戦慄が走る。


「ハ、ハッタリだ!!」

「フハハ。どうかな?」


ジョナサンは杖を振る動きをしてみせる。


「や、やめろ!!」


グレッグは慌ててジョナサンに向けて手を伸ばした。それを見たジョナサンは不敵に笑った。


「ハハハハハッ!何をそんなに慌てる!?たとえ爆発しても、お前が治せば良いではないか!!」

「クッ、、、」

「ククククッ。分かっているぞ。お前は確信が待てないのだ。そうだろう?お前の能力は確かに大したものだが、さっきお前がやったのは、死にかけとはいえ「生きている人間」を治しただけだ。「即死」した、しかも100人以上の人間を治すことができるのか!?その「自信」がお前にあるのか!?ないだろう!?フハハハハッッ!!」


ジョナサンは大声で笑い、グレッグは悔しそうに唇を噛み締める。ジョナサンが言ったように、グレッグは自信を持てなかった。彼の力はたった今目覚めたばかりで、どれほどの効果があるのか彼自身にもよくわかっていなかった。


どれほど高位の聖魔法でも、

「死人だけは生き返らせることはできない」


この「常識」が心の中にあるせいで、冒険者たちもグレッグも、ジョナサンに攻撃を仕掛けることができなかった。


(フレイヤさん、、、)


レイスは、小声でフレイヤに耳打ちする。フレイヤも、レイスの考えを察した。レイスの作戦は、高速でジョナサンに接近して、杖を使われる前に倒し切るというものであった。しかし、フレイヤは首を横に振ってレイスの作戦を否定する。


(いくらあなたでも間に合わないわよ。パンチを当たる前に爆破されてしまうわ。)

(やはりそうですか、、、クソッ。俺にも魔法が使えたら、、、)


レイスは格闘こそ得意だが、その反面魔法は極端に苦手だった。そのため、彼にはこのような状況に有効な遠距離攻撃を持っていなかった。

一応、拳を思い切り突き出すことで衝撃波を出すことは可能だが、それをやるには集中して拳に力を込めなければならず、その動作をジョナサンに勘付かれてはまずいため、この戦法は使えない。

次にレイスが考えたのは、ジョナサンに急接近して一撃で倒すというものであったが、これもフレイヤに無理だとはっきり言われた以上、レイスは打つ手がなくなり、身動きが取れなかった。


レイスは己の不甲斐なさに歯噛みするしかできない。


「ハハハハッ!さて、俺はここで失礼させていただくとするかな。着いてこようなんて考えるなよ?もし着いてきたらそいつらは全員死ぬことになるのだからな!」


ジョナサンは杖を見せつけながらゆっくりと後ずさる。このままいけばジョナサンの敗走だが、当然彼はこれで終わる気などなかった。


(俺がこの場から消えたら、こいつらは人質どもの拘束を解こうとするだろう。そうして意識が人質の方に向いたところで、最大出力で剣の雨を降らせてやる!!このレイスとかいう小僧も、完全な不意打ちには対象できないはずだ!!勝った!!今度こそ勝った!!)


ジョナサンが心の中で作戦を練りながら一歩ずつ後ろに下がっていた時だった。


「すまない、みんな。少し我慢してくれ。」


どこからか声が聞こえ、その瞬間、人質たちの間で悲鳴が上がる。


「ヒッ!!?」

「つ、冷たい!!」


気づいた時には、人質たちにつけられていた首輪や手錠が氷漬けになっていた。


「マ、マズイ!クソッ!」


ジョナサンは慌てて杖を振る。しかし、何度振っても本来起こるはずの爆発は起こらない。

やがて、氷漬けになった拘束具はバキバキと砕けた。


「逃げようとしていたところ悪いな。こういうのは氷魔法の得意分野だ。」


いつから目を覚ましていたのか、グレッグによって傷が完治したミアが起き上がった。ジョナサンを含めた全員が、この現象がミアによるものであることを悟った。


「もう邪魔するものはない!!レイス!!あいつをぶっ飛ばしてくれ!!」

「、、、だそうだ。いよいよお前のツケを支払う時間ってやつだな、、、お前の負けだ。」


ミアの言葉を聞いたレイスはゆっくりとジョナサンに近づいていく。


「そ、そんな、、、」


ジョナサンの手から杖が滑り落ちる。

彼は永久に減らない魔力を持っているのにもかかわらず呆然と立ち尽くし、レイスに反撃しようとしない。


(負ける、、、?この俺が負けるだと、、、?)


レイスの言葉を聞いて、ジョナサンは「あの時」のことを思い返していた。



十数年前、冒険者として数々の記録を打ち立てたジョナサンの人生は栄光で満ち溢れていた。暴れ者として知られていたアンドリューをあえて自身の率いるパーティーに加入させ、統制したことも、彼の人望の向上に拍車をかけた。


彼はまさにこの世の春を謳歌していた。


しかし、それはある日突然破壊される。


「?なんだか騒がしいな。」


その日、モンスターを倒し、依頼を達成したジョナサンと彼のパーティーは、報告のために冒険者ギルドに向かっていたのだが、ギルドの建物から、大勢の人間の興奮した声が聞こえてきた。

彼らが中に入ると、高さだけで2メートルはある黒いドラゴンの首が5つ、ギルドの床に並べられていた。ジョナサンには、そのドラゴンに見覚えがあった。


「これは、、、カイザードラゴン、、、!」


カイザードラゴン、それは、魔王によって生み出されたとされ、たった一匹で国一つを壊滅させたという逸話のある、並の冒険者は決して手を出してはならない、禁忌として扱われているほど凶悪なモンスターである。

ジョナサンは過去に、このドラゴンと戦った。その時の戦いはまさに熾烈を極めたという表現が適切で、最後までどちらが勝つか分からない激闘の末、ジョナサンは勝利をおさめた。この勝利はジョナサンの数多の伝説の中でも最大のものであり、彼の誇りであった。


そのカイザードラゴンの首が5つも、乱雑に床に放り出されている。ジョナサンはプライドが傷つけられた気分だった。


「おい!コイツらを殺ったのは誰なんだ!!」


ジョナサンはドラゴンの首を囲う野次馬冒険者の1人を掴んで怒鳴った。


「えっ?アイツらだよ。あの若い男1人と女4人のパーティー。なんでもこの街に来る途中、たまたま見かけたから「ついで」で倒してきたらしいぜ?」

「つ、ついでだと、、、?」


ジョナサンは、その冒険者の言葉を信じることなどとてもできなかった。カイザードラゴンが、片手間で倒せるようなモンスターではないことは、実際に戦った自分が一番よく知っていた。そんなホラを吹くやつは一体誰だと、ジョナサンは冒険者が指差した方向を睨みつける。すると、


「にゃー。コウガやっぱりスゴイにゃ!」

「コウガ様の魔法には惚れ惚れします!」

「コウガ様のお力は人智を超えておられますわね!」

「フッ。さすがは私が主と認めた男だ。」


視線の先にいたのは、冒険者が言った通り、若い男1人と女4人のパーティーであった。獣人、聖職者、魔法使い、エルフと、バラエティ豊かな4人の女は、ひっきりなしに、パーティーのリーダーだと思われる男を褒め称える。


「やれやれ。こんな小さいトカゲを倒すくらい大したことじゃないんだがな。やれやれ。」


男はそれに対して、やたらと嫌味っぽい謙遜で応える。女性陣はなぜか、その返答を聞いてさらに男に黄色い歓声を浴びせる。


(何だ?この腹立つパーティーは。)


ジョナサンは、やたらと軽い態度の彼らが気に入らなかった。毎日ボロボロになって戦っている自分たちがバカにされているように感じたからだ。

彼はパーティーメンバーに目で合図を送り、それに対してメンバーが頷くと、彼らはコウガたちに一言言ってやろうと向かっていった。


「おい。お前たち。あんまりふざけたことを言うなよ。」


ジョナサンの声を聞いたコウガたちが、ジョナサンの方を向いた。


「カイザードラゴンを倒しただと?悪いがお前たちにそれほどの力があるようには到底見えん。妙な嘘はつかないことだ。お前たちのためにもならん。」


周りから見れば、ジョナサンの言葉は嫉妬や僻みに聞こえるだろう。しかし、これはジョナサンなりの気遣いだった。

実際に、功績を捏造し、不相応に高いランクを得る冒険者は少なくない。そして、不相応なランクを得た結果、強力なモンスターと戦う羽目になり、命を落とした冒険者を、ジョナサンはこれまで何人も見てきた。

コウガへの説教は、彼らに腹が立っていたというのもあるが、コウガたちが命を落とすことがないようにという、ジョナサンなりの気遣いであった。


「なんですの?この無礼で薄汚い男は。」

「にゃー。変なおじさんが来たにゃ。」

「どうやらこのお方の目はただの空洞のようですね。コウガ様の偉大さに気づけないとは。」

「おおかた、コウガ殿の活躍に嫉妬しているのだろう。愚かな男だ。」


取り巻きの女たちは、ジョナサンをゴミを見るような目で見下しながら、好き勝手言い始めた。

ジョナサンは血管がちぎれそうになったが、心の中で深呼吸をして続ける。


「いいか。これはお前たちのためでもあるんだ。偽りで名声を得たとしても、そのツケは必ず帰ってくる。」

「やれやれ。それで僕たちに何をしてほしいんだ?」


ようやくコウガが口を開いた。相変わらず人を舐め腐った態度が癇に障ったが、ジョナサンはいたって平静を装う。


「さっきも言ったが、お前たちにカイザードラゴンを仕留める力があるようには到底見えない。その証拠に、」


ジョナサンはコウガたちの服を指差した。彼らの衣装は新品同然の状態である。


「お前たちの服には焦げ目一つない。カイザードラゴンは熱波を放出しながら動くため、戦うと必ず服は焦げ、身体中に火傷を負うのだ。

火傷は回復魔法でなんとかなるとしても、その服は一体どう説明するつもりだ?まさかギルドにくる前に全員着替えたのか?」

「どうって、、、全身に防御魔法を張ってたから無傷だっただけだけど?」


コウガは衝撃的な回答を平然と言ってのけた。


「バカな!こいつの熱波を完全に防ぎながら戦うなんでできるわけがない!デタラメを言うな!!」


カイザードラゴンと死闘を演じたジョナサンだからこそ、コウガの言葉は妄言だと思った。思わずにはいられなかった。

ジョナサンの怒声に対して、コウガのパーティーの女性陣は、ハァッと分かりやすく大きなため息をついた。


「全く、、、このキィキィうるさいお猿さんは現実が見えてないのでしょうか?」

「一目でこのお方の偉大さを理解できないだなんて、愚かというか哀れというか、、、」

「にゃー。頭のかわいそうな人だにゃ。」

「きっとこの男とコウガ殿では生物としての次元が違いすぎて、認識ができていないのだろうな。」


女たちは心底見下した憐憫の目でジョナサンたちを見ながら、口々にまくしたてる。

アンドリューらジョナサンのパーティーメンバーは今にも飛びかかりそうになるが、ジョナサンは彼らを静止すると、コウガに提案した。


「、、、いいだろう。そこまで言うのならば、お前たちの力を見せてもらおうじゃないか。この建物の裏には冒険者が訓練する修練場がある。丁度、互いのパーティーの人数も同じだ。お前たちに、チーム戦での決闘を申し込む!!」


ジョナサンはコウガを指さして宣言した。暴走しそうになる仲間たちを止めたとはいえ、ジョナサン自身も怒り心頭であり、コウガに目にものを見せてやらねば気がすまなかった。


「やれやれ。しょうがないな。やれやれ。」


決闘の申し込みに対しても、コウガは呑気な口調で、面倒くさそうに答える。


(クソッ。どこまでもイラつくやつだ。その顔面を泣き顔に変えてやる。)


ジョナサンはかつてカイザードラゴンと対峙した時に匹敵するほどの闘志をみなぎらせ、修練場に向かった。




一時間後、

コウガのパーティーとジョナサンのパーティーは、修練場にある舞台の上で向かい合っていた。舞台の周りには、大勢の冒険者や、決闘の話を聞いた街の住人たちが集まっていた。


「降参するなら今のうちだぞ?こんな大勢の前で恥をかきたくないだろう。」


ジョナサンは剣を構えながら、コウガ達に最後の忠告をする。


「やれやれしつこいな。いいからかかってきなよ。」


それに対して、コウガは一切緊張する様子もなく答える。コウガだけでなく、取り巻きの女たちも、余裕の表情をしている。まるで、自分たちが勝つことが既に決定していると言わんばかりであった。


「そうか、後悔するなよ?」


ジョナサンがパーティーメンバーに合図を送ると、各々が戦闘態勢に入る。


「それでは、始め!!」


審判を務めるギルドマスターが、決闘の開始を宣言する。


「いくぞぉ!!お前ら!!」


宣言とともに、ジョナサンのパーティーは一斉に、コウガ達めがけて駆けていった。





「う、、、ここは、、、?」


気づいた時、ジョナサンの目の前には、真っ白な壁があった。よく見るとそれは壁ではなく天井で、自分はベッドに寝かされていた。身体中が包帯だらけで、顔には包帯越しでも感触でわかるほどの大きな切り傷ができていた。


「よぉ。起きたかジョナサン。」


隣から聞き慣れた声がする。見るとそこには、同じようにベッドで寝るアンドリューがいた。


「何が、、、起こったんだ、、、?」

「忘れたのか?負けたんだよ俺たちは。」

「負けた、、、だと、、、? ッッッ!!」


アンドリューの言葉で、ジョナサンは全てを思い出した。


あの決闘の時、真っ先にコウガたちに飛びかかったのはアンドリューであった。


「食いやがれ!ぶっ殺してやる!!」

「ま、待て!アンドリュー!」


事前に、コウガたちを殺さないように命令はしていたのだが、アンドリューはそれを無視して、コウガたちに殺意剥き出しで襲いかかる。

ジョナサンが止めるがもはや手遅れで、アンドリューの全力の拳がコウガに振り下ろされようとしていた。

しかし、その拳がコウガに届くことはなかった。


「にゃー。遅すぎるし軽すぎるにゃ。」


なんと、12、3歳程度に見える獣人の少女が、アンドリューのパンチを、親指と人差し指の2本だけで受け止めていた。


「バ、バカな、、、俺の拳が、、、」

「うにゃん!!」

ボッ!!

「ぶっ!!?」


驚いて硬直しているアンドリューの腹に容赦なく獣人の少女、タマの蹴りが刺さる。アンドリューは肉眼で見えなくなるほど天高く吹き飛ばされ、しばらくして舞台の外側へ墜落した。


「、、、え?」


あまりの出来事に、ジョナサンたちは固まってしまう。


「おっと!よそ見は厳禁ですわよ!パラライズ!」


コウガの取り巻きの魔法使い、マリーが拘束魔法を放つ。ジョナサンは横に飛ぶことで間一髪で避けたが、他の3人は魔法が直撃して、石像のように固まってしまう。


「ファイヤボール!」


マリーの頭上に、ファイヤボールとはとても思えない、直径5メートルはあろうかという火の玉が現れて、固まっている3人に向かって飛んでいき、巨大な爆発とともに彼らを吹き飛ばしてしまう。


「ま、まさか、、、こんなことが、、、」


時間にしてわずか1分。たったそれだけの間に、共に何度も死線を潜り抜けてきたジョナサンの仲間たちは戦闘不能にさせられてしまった。


「やれやれ。拍子抜けもいいところだな。」


声が聞こえてきて、ジョナサンは我にかえる。声のしたほうを向くと、剣を持ったコウガがいた。彼はただ剣を持っているだけで、構えてはいなかった。


「くっ!お、俺はただではやられんぞ!来い!」

「やれやれ。じゃ、お言葉に甘えて、」


その言葉とともに、コウガがジョナサンの目の前から消えた。直後、


ザシュッ

「ガッ!」


顔に巨大な太刀傷が入り、それを皮切りにジョナサンの全身の至る所が切り裂かれた。


「は、、、え、、、?」

ドサッ

「やれやれ。ゆっくり動いたつもりだったんだがな。」


ジョナサンはわけもわからずその場に倒れる。こうして、決闘はわずか1分で決着がついた。





「負けた、、、俺たちは負けたのか、、、」


全てを思い出したジョナサンは、ベッドの上で拳を握りしめながらワナワナと震える。アンドリューはそんなジョナサンを横目に語り始めた。


「あの後のことを教えてやるよ。俺たちを瞬殺したコウガたちは瞬く間に街の人気者になった。んで、コウガはこの街の冒険者として活動し始めた。

そこからは怒涛だったぜ。魔王軍が放ったドラゴンの群れを殲滅したり、農村の害虫問題の依頼で、たまたま伝説の生物と言われてた、体長10Kmのクソデカサソリが現れてそいつを倒したり、魔王軍の幹部を打ち取ったり、最短記録でSランク冒険者に昇格したり、、、あっ。そういえばこの国の王女が魔族に誘拐されたのを救出して、王女に求婚されて、王様から公爵の位とでかい領地が与えられたって話もあったな。あとは、、、」

「待て待て待てっ!!俺が寝てたのは1週間って話じゃなかったか!? 

え?1週間でそんなに!?」

「ん?ああ。これ全部1週間以内で起こった出来事だ。ちなみにこれでもまだ三分の一くらいだぞ?」

「う、うそだろ、、、」


ジョナサンはコウガのあまりの無茶苦茶さに頭を抱えた。


「そ、そうだ!他の3人は無事なのか!?」

「ああ、無事っちゃあ無事だぜ、、、だが、もうここにはいねぇよ。3日前に冒険者を辞めるって言って故郷に帰ったからな。もう「あんな扱い」を受けるのは耐えられないんだとよ。」


アンドリューは苦々しい顔で吐き捨てる。


「あんな扱い、、、?」

「外に出てみれば分かるさ。」


それから、ジョナサンは回復に専念した。幸運なことに、コウガが作った、とてつもない効能を持つ新しいポーションが広く出回っており、それのおかげで退院までさほど時間はかからなかった。コウガの作った薬で傷を治すというのには抵抗があったが、一刻も早く外に出たかったため、贅沢は言ってられず、回復することを優先した。医者たちの態度がいやに冷たくよそよそしいのも、ジョナサンを焦らせた。

数日後、歩けるほどに回復したジョナサンは、病院を出て、街を歩き回った。

そこでジョナサンは、信じられない光景を目の当たりにした。


「な、なんだこれは、、、」


街には至る所にコウガのポスターが貼られ、広場には巨大なコウガと、その取り巻きの女たちの像が建てられていた。店に入ると、どの店にもコウガの写真が貼られており、街では人々がひっきりなしにコウガの凄さについて話していた。


「わ、わずか数日で、こんなことに、、、」


呆気にとられていると、どこからか石が飛んできて、ジョナサンの頭に当たる。


「えっ!?」


石が飛んできた方向を見ると、そこにいたのは子供たちだった。


「みんな!ジョナサンだ!コウガさまに逆らった悪いやつだ!やっつけろ!」


その言葉とともに、子供達が一斉にジョナサンに石を投げ始めた。

ジョナサンはたまらずその場から走り去る。すると、騒ぎを聞き、ジョナサンの存在に気づいた街の人々は、ヒソヒソと話し始める。


「おい。ジョナサンがいるぞ。」

「ああ。偉大なコウガ様に逆らったマヌケか。」

「決闘で瞬殺されたんだろ?」

「ほんと、とんだ街の恥晒しだよな。」


人々の侮蔑や嘲り、憐憫の視線がジョナサンに刺さる。ついこの間まで、ジョナサンは人々から羨望の眼差しを受けていたのに、今はこの扱い。ジョナサンは人目を避けるために、ひたすら走った。


「はぁ、、、はぁ、、、なぜこんな目に、、、落ち着け、ひとまず家で休もう、、、」


ジョナサンは自然と、家の近くまで来ており、自身のこれまでの功績の象徴である我が家で心を落ち着かせようと思い、家に向かう。

そこでまたしても、ジョナサンは信じられない光景を目にした。


「こ、これは、、、」


そこに家はなかった。厳密には家はあるが、それはジョナサンの家ではなく、それよりも何倍も巨大で豪華な、屋敷というよりも城に近い建物がそびえ立っていた。城を囲う壁には、「コウガ宅」と書かれた看板が貼られていた。


「ハ、ハハ、、、」


乾いた笑い声とともに、ジョナサンはその場に座り込む。その目からは、一筋の涙が流れていた。


(名誉も、、、家も、、、全て失った、、、たった一回負けただけで、、、全て、、、)


ジョナサンはこの時心の底から思い知った。

負ければ全てを失うということを。

そして、2度と負けないことを心に誓ったのだった。

この日以降、ジョナサンは勝利の為に全てを捧げた。

ジョナサンとアンドリューは血を吐くほど屈辱的な思いでコウガに屈服した。コウガへの忠誠が認められ、「チートスキル」を手にしたジョナサンとアンドリューは、まさに鬼神のように戦い、神や反逆者を次々と始末していった。その功績が認められて、ジョナサンはミケーアの統治を任されるまでになった。


彼は何よりも、「力」と「勝利」を追い求めた。木っ端微塵になってしまった自身の「伝説」を蘇らせ、さらなる高みに達するために、コウガへの復讐を果たして、全ての頂点に君臨するために、



「負ける、、、俺が負ける、、、?」


レイスの言葉はジョナサンに、最悪な過去をはっきりと思い出させた。彼は放心したような状態で、レイスがすぐ近くに迫っているのにも関わらず、反撃するでもなくブツブツと独り言を繰り返す。レイスは、ジョナサンはもう諦めたのかと一瞬思った。しかし、突然、ジョナサンの雰囲気が変わった。


「な、なんだ!?」


ただならぬ気配を感じ、レイスはジョナサンから距離をとって拳を構える。


「ふざけんなよ、、、俺が、、、俺が、、、っ

俺がっ!負けてたまるかぁぁぁっっっ!!!!」


ジョナサンが広場全体に響くほどの大声で叫んだ。

その瞬間、




「空」に、別次元の魔力の塊が出現した。

遅くなってしまい申し訳ありません。

読んでくださりありがとうございます。

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