第25話 本領
「、、、、、、」
「、、、、、、」
騎士達とレジスタンス。広場の至るところで戦闘が起こっている中、両陣営のトップであるジョナサンとミアは、剣を抜いた状態でしばしにらみ合う。
「若きSランク冒険者、ミケーアのホープ、「氷の姫騎士ミア」。あなたとお手合わせができるなど、実に光栄なことですなぁ。」
ジョナサンは余裕たっぷりの表情で仰々しくミアにお辞儀をする。
「白々しいことはやめろ。お前と私ではあまり立場は変わらないだろ。元Sランク冒険者、ジョナサン・ブレイド。」
「おや、俺のことをご存じだったとは。」
「、、、知らないほうがおかしいだろう。」
ジョナサン・ブレイド。彼は若いころから頭脳明晰であり、さらに剣、魔法と様々な分野で類まれなる才能を発揮し、学校では常に記録を塗り替える存在であった。冒険者になったあとも彼の躍進は止まらなかった。冒険者にとっての一つの到達点と言われているドラゴン討伐も、ジョナサンにとっては片手間にこなせる依頼に過ぎなかった。一国をたやすく滅ぼせるほどの力を持った彼はついに、数多の伝説的な活躍をした彼は若干25歳、当時史上最年少にして冒険者の頂点であるSランク冒険者となった。
「天才」、「最強」、「英雄」、プラスのイメージを持った異名はすべて彼のものであった。
「懐かしいなぁ。ククク。わりとガチで誇りだったんだぜ?「最年少のSランク冒険者」ってのはさぁ。だから去年、24歳のお前がSランク冒険者になったときは結構ショックだったなぁ。」
ジョナサンは剣を構えると、ミアに強烈な威圧感を放つ。
「俺以上の天才の力、お手並み拝見といこうじゃないか。情けない戦いをして、「Sランク冒険者」の肩書きに泥を塗る真似なんかするなよ?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる!」
ミアは地面を蹴ると、まっすぐジョナサンに突っ込んでいき、レイピアを彼の心臓めがけて突き出した。
(速い、、、だがっ!)
ジョナサンは弾丸のようなスピードの突きを容易くかわすと、ミアの橫に立ち、そのまま剣を振り下ろした。
「食らえ!」
「ッッ!!」
ガキンッ!
ミアはその攻撃に即座に反応し、レイピアをふってジョナサンの剣を弾き返した。
「おっと、、、っ」
急なミアの反撃に、さすがのジョナサンもわずかに体勢を崩す。その隙をミアは見逃さなかった。
ドゴッ!
「ムッ!?」
ミアの鋭い蹴りがジョナサンの胸に刺さった。彼は苦しそうな声を出しながら大きく後ろに下がった。
「やった!強いぞ!」
牢に閉じ込められている民衆から歓声があがる。グレッグもその様子を興奮した表情で見ていた。
「なるほど、、、なかなか活きがいいようだ、、、」
ジョナサンはズキズキと痛む胸を押さえながら呟いた。
「感心するのはまだ早いぞ!」
間髪入れずにミアがジョナサンに接近し、レイピアを突き出した。ジョナサンは剣の腹で器用に彼女の攻撃を受け止めるが、
「うおおおおおおっ!!」
ドドドドドドドッッ!!
ミアは猛烈な勢いで突きの連続攻撃を繰り出す。しばらくはその突きをかわし、防いでいたジョナサンであったが、
シュッ!
ミアの攻撃の1つが彼の顔をかすめた。
「チッ!」
ジョナサンは後ろに飛び退いて、彼女から距離をとる。
「驚いたぞ。俺の顔に傷をつけた人間はお前を入れてもたった2人だけだ。」
ジョナサンはニヤリとしながら、斬られた頬を手で触れた。
(、、、?)
その時、彼は違和感を感じた。かすっただけとはいえ、確かに斬られた感触はあった。多少なりとも出血はしているはずである。しかし、彼の頬からは一滴の血も流れてはいなかった。さらに、違和感はこれだけではなかった。
(冷たい、、、?)
彼の傷口とその周辺は信じられないほど冷たくなり、さらにカチカチに固まっていた。
自身の剣に目を向けると、剣の至るところに氷がこびりついていた。そこは、先程ミアの攻撃を防いだ場所であった。
「なんだこれは、、、」
「私の剣は触れたもの全てを凍らせる。」
ジョナサンが呟いた疑問にミアが答える。それと同時に、再び鋭い突きを放つ。
「くっ!」
ジョナサンは間一髪でそれをかわすが、わずかに腕をかすめた。すると
パキパキパキッ
傷口を瞬時に氷が覆い、水滴を紙に垂らした時のように、氷が傷口の周りに広がっていく。
「ほんの一瞬触れただけで、ものを氷漬けにできるというのか、、、」
(距離をとらなければ、、、)
接近戦が危険であると悟ったジョナサンは、後ろに退いてミアから距離をとろうとする。
「させるか!」
ミアは地面にレイピアを突き立てると、そこから氷が発生し、ジョナサンに向かって道のように延びていく。そして、氷はジョナサンの足に絡み付くと、彼を地面にガッチリと固定した。
「ク、クソッ!」
ジョナサンは焦ってもがくが、氷漬けになった足は全く動かない。
「勝った!!これで最後だっ!!」
彼女は上空にレイピアを突き上げると、彼女の頭上に十個の巨大な氷の槍が出現した。
「地獄に落ちろ!アイス・ヘル!!」
ミアが叫んだのと同時に、氷の槍がジョナサンめがけて飛んでいく。そして、ジョナサンを囲うように彼の周囲の地面に突き刺さると、ジョナサンを中心に魔方陣が展開され、彼の足元から巨大な氷が生み出されていく。氷はだんだんと上にせり上がっていきあっという間に彼の腰まで覆う。
「このっ!」
ガンッ ガンッ
ジョナサンは剣の柄で自分の体に浸食する氷を叩き割ろうとするが、ミアの魔力が込められた氷はびくともしない。
「まさか、、、ここまで、、、」
ジョナサンの呆然とした声が虚しく響き渡る。そしてついに氷は彼の全身を覆いつくし、ジョナサンが立っていた場所には、巨大な氷の柱ができた。広場は一瞬シンと静まり返った。
「や、やった 、、、勝ったぞっ!!」
檻の中の1人が言ったのを皮切りに、広場は大歓声に包まれた。騎士達と戦っていたミアの同志たちも歓声をあげ、大将の敗北を見た騎士達は皆呆然としている。
しかし、グレッグだけは、今の状況に違和感を感じていた。
(バカな、、、呆気なさすぎる、、、!)
「ミア!気を抜くな!」
グレッグの叫び声を聞いたミアはハッとして、再び剣を構えた。
その時だった、
凄まじい魔力の嵐が、広場に吹き荒れた。常人なら気分が悪くなってしまうほどの魔力量。檻の中の人々の何割かが、既に倒れてしまっている。
「くっ!やはり、、、」
グレッグも気分が悪くなりながらも、なんとか耐えて、ジョナサンが閉じ込められた氷の柱を睨み付ける。
ビシッ ビシッ
バギィンッ!!
氷の柱にヒビが入っていき、大きな音を立てて砕け散った。そして、おびただしいほどの魔力を身にまとったジョナサンが姿を現す。
「まさかまさか、、、俺相手にここまでやるとはな、、、」
「バ、バカな、、、!ミアの最強の魔法なんだぞ、、、!」
ジョナサンの余裕そうな様子を見て、アバンが驚きのあまり言葉を失う。それとは対称的に、配下の騎士達が、大将の復活を歓声でもって迎え入れる。状況が先程とは完全に正反対となった。
ミアの方も、一見すると冷静に見えるが、その顔は動揺を隠しきれていない。
ジョナサンはそんなミアにパチパチと拍手を送る。
「素晴らしい、、、これほどの強さとは思わなかった、、、「氷の姫騎士ミア」。お前はどうやら俺の相手に相応しい人間だったようだ、、、」
ジョナサンはクックッと笑い続けている。その得体のしれない彼の様子を見て、ミアは不気味に感じていた。
同時にこうも感じていた。
戦いの本番はここからだと。
「さあ第2ラウンドだ。この俺の本当の力を見せてやる。」
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